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いよいよ本題 おねぇ救済について

「まぁそういう経緯で、われらが潜入した道場の一つが伊東道場だったわけだ。ちなみに、坂本のいた「小千葉」にも参ったが、そのときには坂本は帰郷し、また戻ってくるまでの間であったので、そこでの面識はなかった」

 たしかに、坂本は江戸に剣術留学を二回している。


「その伊東も、暗殺されるというわけだな?」

「さすがは隠密。なんでもご存知だ。それを阻止したいともちかけたら?お二方は驚かれますか?」

 双子は、同時に笑った。


 やはり、こちらの考えがわかっている。


「なにかでも?副長が暗殺を取り止めたり、あるいは伊東をこのまま看過したりするようには思えぬが・・・」

「それを相談したかったのですよ、俊冬殿」

 おれは、俊冬のほうへさらに体を近づけようとした。

「苦しい・・・。兄上、もっとずれてくだされ」

 間にはさまれている俊春が抗議した。おれにではなく兄貴のほうに。


「ふむ・・・」それを無視し、俊冬は火鉢の縁に肘をおき、左の四本の指で顎をさすりながら考え込んだ。


「たとえば副長には会津から、伊東には薩摩から、それぞれなにもするなという命が下されたとしたら?二人はそれに素直に従い、このままの状態を保てるのであろうか?」

 俊冬の問いは、おれをはっとさせた。おれが考えていたことだからだ。


 会津なり薩摩、あるいは朝廷からそういう命が下れば、二人とも受けざるを得ないというものだ。


 あらためて問われてみれば、命を受けても従うとはかぎらない。その為に暗殺というがあるのだ。とくに、新撰組こちらはそれを常套手段としている。目的を果たし、詮議されてもしらぬ存ぜぬを通すことにも長けている。

 だとすれば、残る手段は・・・。


「おぬしのいま考えている最終のも、おぬしの性質たちならばよしとせぬであろう?副長を欺くことなど、おぬしにできるとは思えぬ」

 俊冬は、またしてもおれの心中をよんだのだろう。そういってから、灰かき棒で火鉢の灰をかいた。

 俊春は、おれたちの間で身をよじると側に置いてあった手拭を引き寄せ、それで鉄瓶の取っ手を掴んだ。湯呑みに白湯を注いでゆく。


「副長を説得するしかないのではないか?伊東のほうは容易いであろう。わたしがやってもいい」

「兄上、それは伊東とまた寝る・・・・ということですか?」

「はあ?また寝る?」

 おれは、俊春の言葉に過剰に反応してしまった。

「また寝るって?江戸でも寝たってことなんですか、俊冬殿?」

「わたしは弟と違って柔軟だ。それに、目的を達する為には、いかなるをもちいることに抵抗はない」

 俊冬は、端正な口許に笑みを浮かべてさらりといってのけた。

「そ、そういう問題ではないでしょう?」

「兎に角、副長を攻略する。おぬしはそれについて腐心すべきだ。わたしの道徳云々ではなく、な」

 さらにひろがる笑み。

「いえ、それが難しいのですよ。それが困難だから相談しているのではないですか?ああ、いっそ、副長も色仕掛けで、もちろん、副長は女性限定ですが、それで落とせたらいいのに」

「なるほど、古来よりのだな」

「兄上、また化けるのですか?」

 またしても俊春の合いの手だ。

「ええ?化けるって女性に?」

 

 俊冬の笑みは、淡い灯火のなか明るすぎるほどに輝いていた。


 どさっ、たたたっ・・・。

 またしても屋敷内のどこかでポルターガイスト現象が・・・。 

 非業の死を遂げ、いまだ彷徨っている魂の仕業なのだろうか。


 そして、おれはさらなるBL疑惑を抱えることになった。いや、プラス女装マニア疑惑も・・・。

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