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未来の人間は超絶スッゲー

「勝太さん、かれらはすごいでしょう?これで、かれらがずっとさきからやってきたということを、すこしは信じてもらえましたか?」


 俊冬と俊春からすこし離れたところで立っている伊庭が、人見にささやいているのがきこえてきた。


「そうだな。たしかに、さきほどのはすごすぎた。わたしには、とうてい理解できぬ戦いぶりであった。さすがに、さきほどのをみせられれば、はらはらどきどきしてしまって眠る間もない。いまでは、かれらがこの時代の人間ひとでないことがわかるような気がする」


 そして、人見が応じている内容もきこえてくる。


 ちょっ……。


 いまの二人の言葉通りなら、おれもあの超絶すっげーことができて然るべき、だよな?


 そのとき、視線を感じた。


 相棒だけでなく、島田と安富と蟻通、それから俊冬、さらには回復したのか俊春もこちらをみている。


 しかも、相棒もふくめて全員がにやにや笑っている。


 ええ、ええ。わかっています。わかっていますよ。


 その笑いの意味、よーっく、よーっくわかっています。


 どうせおれだけ、俊冬と俊春と相棒とはまたちがう「さき」からやってきたんですよ。


 たぶん、かれらは現代よりもっと未来の「ター〇ネーター」の世界からで、おれだけ現代からなんだろう。


「いや、八郎さん。そこ、ちがいます。さきの人間ひとも、この時代の人間ひとと身体能力はそんなにかわりはありません。かれらがちがうんです。かれらの身体能力がちがいすぎるんです。そこのところ、誤解しないでください」


 だから、正しておいた。


 このままだと、あまりにもおれがかわいそうだからである。


「まぁ、主計はフツー以下だもんな。それよりも、こいつら、誠に副長の血を継いでるのか?」


 蟻通である。


 おれをフツー以下認定した後、またしても副長の遺伝子ってところの謎を提示してきた。


 おれだって、そこはずっと不可思議に思っている。


「ええ?血を継いでいる?かれらは、土方さんの息子なんですか?ああ、そうだった。野村君がかようなことをとくとくと話をしていたな。土方さんの下種な話をきいてもなぁ、と途中からきかぬようにしていたが」

「きかぬように、ではなく眠っていたんでしょう?」


 人見が驚いている。しかも、いまの人見の後半部分の発言について、冷静にツッコむ伊庭はさすがである。


 人見は双眸をぱちくりさせ、俊冬と俊春を交互にみている。


 俊冬と俊春は両膝を地につけていたが、たがいに相貌かおを見合わせてから立ち上がった。


 俊冬が俊春の腕に自分のそれをからませ、引っ張り上げてやる。それでも一瞬、俊春の上半身がぐらついてしまった。


 それほどまでに、さきほどのあの奇蹟はかれの体力と精神力を消耗させたのだ。


 ってか野村のやつ、ガチに偽情報ガセネタを拡散しまくりまくっている。


「信じられぬであろう?あの(・・)副長の息子だぞ。どこからどうやったらかようにできた息子ができるのか……。愛しの馬たちもびっくりだ」

「ちょっ……。安富先生、それから蟻通先生。ぽちたまは、副長の息子ではありません。その、物質的というか人体構造的というか、兎に角、副長が、えー、その……」


 誠にいいにくい。


 遺伝子なんて説明もうまくできないが、遺伝子をださずに説明するってこともうまくできそうにない。


「なんだ、主計?副長が女子おなごにアレをぶち込んでできたのであろう?」


 せっかく言葉をにごしまくって品位を落とさぬよう努力しているというのに、安富がものの見事にその努力を打ち砕いてくれた。


「安富先生、いくらなんでもそんな身も蓋もないいい方はちょっと……」

「だったら、いったいなんだと申すのだ?」

「たま、きみらのことだろう?安富先生の、いや、ありとあらゆる人々の誤解を解くべきだろう」

「別に、おれたちは副長の子どもだっていわれてもかまわないけど」


 俊冬、マジか?正気でそんなことをいっているのか?


「きみは、マジでそんなことをいっているのか?あの副長だぞ。あの副長の息子だっていわれて、恥ずかしくないのか?」

「あの副長で悪かったな」


 俊冬には呆れ返ってしまう。そうツッコんだ瞬間、右耳にささやかれた。


 体がピンと硬直してしまった。


 副長の真似っ子をしていつもおれを驚かす俊冬と俊春は、眼前にいる。


 ということは、いまささやいてきたのは本物に間違いないわけで……。


「いたっ、いたたたたっ!やめてください。謝ります。失言でした。謝りますから許してください」


 副長は拳固を喰らわせ上に、さらにポカスカ叩いてくる。


 思わず、体ごと副長のほうに向いてへーこら頭を下げてしまった。


 結局、俊冬が遺伝子について簡単に説明してくれた。しかし、人見にとっては遺伝子などまったく馴染みのない言葉である。

 そんな言葉の説明をされても、かれにはいい子守唄にしかならなかったようだ。


 とりあえずは、副長が俊冬たちのご先祖様ということに落ち着いた。


 それもかなり違うのだが、遺伝子の説明で時間を費やすのも馬鹿馬鹿しい。




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