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奇蹟のアクション

 俊冬は落ちるでもなく、すごい勢いで崖を駆けのぼりつづけている。


 たぶん、この驚異的なアクションは「NAR〇TO」にちがいない。

 俊冬のチャクラのコントロール力は、『カ〇シ先生』もびっくりだ。


『ウウウウウッ!』


 リアル「NAR〇TO」に見惚れている場合ではない。

 またしても相棒にうなられてしまった。


 二丁目を放る。相棒は、一丁目同様それを空にぶん投げた。


 一丁目の銃は、空に向かってぐんぐん上昇をつづけている。


 そのとき、俊冬が崖を土台にジャンプした。ちょうど俊春が落下してきている真下に達したときである。


 それに合わせ、崖上から落ちてきている俊春が両膝を抱えた姿勢でくるくると回転しはじめた。


「ゆけっ、わんこ!」


 そして、俊冬と接触する瞬間俊春は頭をまっすぐにして直立の姿勢をとった。


 上昇している俊冬は、左右の掌を組み合わせている。その組み合わされた掌に、俊春の片脚がのった、と思う。


 残念ながら、よく見えない。よく見えないが、体勢からそう推測することにしておく。


 俊冬が掌を力いっぱい上げた。すると、俊春が思いっきり押し上げられた。


 つまり、落下してきた俊春は、俊冬の掌をジャンプ台にし、今度は上昇しはじめたのである。


 一方、ジャンプ台の役割を果たした俊冬の役目は、まだ終わってはいない。相棒が放り投げた銃を落下しつつうまくキャッチすると、それをさらに上空に放り投げた。銃は、上昇する俊春よりも勢いがついている。それは俊春を追い抜き、さらに上昇をつづける。


 おれも負けてはいられない。さらに二丁の銃を、相棒に放った。


 この間、わずか数秒間のことである。


 四丁の銃を放り投げおえると、崖の上をみてみた。


 すると、敵の部隊がこちらをのぞきこんでいる。でっ、上昇してくる俊春を見、慌てて相貌かおをひっこめた。


 そして味方は、この映画や漫画顔負けのアクションを、声もなく見上げている。


 だれもが口をあんぐり開け、呆けたようになっている。


 たったの数秒である。歴史的にみれば、時間という観念すら存在しない時間だ。


 その間に、俊春は崖の高さを超えてしまった。そして、唐突に上昇がおわった。当然、つぎは地球の引力に引っ張られることになる。


 つまり、落下を開始した。


 その直後、かれは腕をのばして銃をつかんだ。


 相棒から俊冬を経由して空へと投げられた銃は、速さや角度を緻密に計算されたかのように、驚異的ともいえるタイミングで俊春の手許にくるよう落下していたのである。


 俊春は、上空で胡坐をかく姿勢になりながら銃をかまえた。かまえたときには、すでに発射している。


「パーンッ!」


 発射音が、空と地上の双方に遅れて響き渡った。


 そして、かれは撃った銃を放り捨てた。さらに手許に落下してきた銃をかまえ、二発目を発射した。


 俊冬のほうは、相棒から投げられた三丁目と四丁目の銃もうまくキャッチしてさらに上空へ、厳密には俊春めがけて投げた。


 俊冬は、受け身をとれないまま落下してくる。


 もしかして、俊冬かれを受け止めた方がいいのか?


 っておれが判断するよりもはやく、島田が動いている。


 いいや、なんと相棒がそれよりもさらにはやく、その島田の頭をジャンプ台がわりにして飛んだ。まさしく、飛んだといっていいだろう。そんな大ジャンプである。


 相棒は、見事俊冬のシャツの襟首を銜えた。それから、狼面を軽く振った。


 その間に、俊冬は体勢を整えた。相棒の背にうまく乗ることができた。


 相棒は俊冬を背にのせたまま、音もなく地面に着地した。


 ホッとした。とりあえずは、俊冬にも相棒にも怪我はない。


 上を見上げると、俊春が最後の銃を撃ったところだった。


 そうと気がついた瞬間、崖上で爆発が起こった。とはいえ、ハリウッド映画のごとく大爆発ではない。


 小規模である。それでも、敵の兵卒たちは慌てふためいているようだ。


 兵卒たちの悲鳴や狼狽の叫び、それから士官の必死の命令。これらが頭上に落ちてくる。


「撃ち方用意!敵が崖上から相貌かおをのぞかせたら、射撃する」


 そのとき、俊冬から指示されたのだろう。大鳥の指示が飛んだ。


 伝習隊の歩兵たちが木々の間から飛びだしてきて、ある程度の間隔をあけて片膝立ちになり、射撃体勢に入った。


 そのとき、俊春が音もなく地面に着地した。


 まるでにゃんこだ。いや、にゃんこなんかよりずっとずっとすごい。


 崖上から、さらに小規模な爆発音がきこえてくる。


 さらに、さらに、敵兵たちの狼狽えまくっている叫び声や悲鳴が落ちてくる。


 結局、崖の上からのぞいてくる敵兵はいなかった。


 おそらく、それどころの騒ぎじゃないのであろう。


 俊春は、着地してからうずくまったまま動かない。


 動けないのか?なにかあったのだろうか?


 おれだけでなく、副長や島田らも心配気な表情かおになっている。


 同時に駆け寄ろうとした。


 が、俊冬と相棒がすばやく駆け寄り、俊春の側に跪いた。


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