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ご子孫様

 蝦夷を平定し、ひと段落ついたところで史実でも有名な箱館政権を樹立した。

 そのことについてイギリスとフランスの公使を通じて敵に嘆願したが、敵の首魁たる岩倉具視いわくらともみがそれを許すわけがない。ソッコーで却下されてしまった。


 それについては異国の公使をとおしてでなく、俊冬と俊春が直接出向いて岩倉に丁寧にお願いをしてもよかった。あるいは、いっそ岩倉にあの世に逝ってもらうのもありだったかもしれない。


 そうなれば、政権の樹立や敵との共存をなし得た可能性はゼロではない。


 ということは、これ以上の戦そのものを回避できたかもしれない。

 おおくの生命いのちが助かり、経済的にも損失がなかったかも、である。


 なーんていう「かもしれない」は、しょせん絵に描いた餅にすぎない。英語的にいえば、「Pie in the sky」ってやつだ。


 そして、個人的には岩倉に死んでもらっては困る気持ちがある。なぜなら、現代におおいに影響がでるからである。


 ぶっちゃけ、岩倉の子孫たちへ影響をあたえてしまうというわけである。


 かれの子孫は、有名人がおおい。


 現代では、海の若大将「加○雄三(かや○ゆうぞう)」やなにかとお騒がせな「喜○嶋舞(き○じままい)」もそうである。たしか女優の「井○遥(いの○えよう)」の旦那さんは、岩倉と西郷の子孫だったと記憶している。ある意味、強烈である。

 

 ちなみに、その旦那さんはファッションデザイナーだったかと思う。


 現代にいたるまでにも、岩倉の子孫には政治家やら弁護士やら活躍している人はおおい。


 すごい家系である。


 そんな子孫たちに影響をあたえかねない。


 かといって、いまこのときに喪われるであろうおおくの生命いのちにかえることもできないことはたしかである。


 が、不思議と暗殺しようっていう意見がでない。それどころか、そんな概念がないようにもうかがえる。

 個々人では、そういうことをかんがえる人もいるかもしれない。だが、雰囲気的にもちだせるものでもない。


 武士道ってやつなのだろうか。


 白黒決着をつけるのなら、正々堂々戦ってというわけなのか。


 とはいえ、戦になればあきらかにこちらが不利である。


 それこそ、すべてにおいてである。


 それでもなお、正面からぶつかろうという勇気は誠に称讃すべきかもしれない。



 そんな人道や武士道や倫理はひとまずおいておくとして、政権が樹立すれば当然それをおこなう人が必要になる。それから、きたるべき戦に備え、軍を立て直す必要がある。


 というわけで、トップである総裁やその他もろもろの要職を、入れ札制で決めることになった。


 入れ札とは、選挙のことである。


 それにより、箱館政権の総裁は榎本、副総裁が幕臣の松平太郎まつだいらたろう、海軍奉行に幕臣の荒井郁之助あらいいくのすけ、陸軍奉行に大鳥圭介が就任した。


 ちなみに、副長は陸軍奉行並である。はやい話が、大鳥の補佐役というわけだ。


 余談であるが、海軍奉行の荒井は、後年初代の中央気象台長になる。気象とはなんの関係もないが、かれは大の甘党である。史実にも汁粉をよくつくらせていたというから、スイーツ大魔王の島田とよく気が合うかもしれない。


 新撰組は五稜郭に詰めることになった。戦のない冬の間は、市中みまわりを中心に活動をおこなっている。


 現在、新撰組は陸軍奉行並に就任した副長にかわり、島田と蟻通、それから森常吉もりつねよしというアラフォーの桑名藩士が指揮をとっている。


 森は、桑名少将の片腕である。たいそうできる人物で、京時代から辣腕をふるっている。新撰組おれたちにたいしても、桑名少将同様好意的である。今回もみずからすすんで協力を申しでてくれた。


 残念なことであるが、かれはこの戦の後、桑名少将を助けるために切腹することになる。

 そして、森家は断絶の憂き目にあってしまう。が、子孫は残っている。しかも、現代にもその血は受け継がれていて、女優の「鶴○真由(つる○まゆ)」の母方の祖先にあたる人物である。


 おれ自身は歴史をしるがゆえに、副長の側にいさせてもらっていることがほとんどである。たまに五稜郭にいる仲間たちのもとですごすこともあるが、九割以上は副長の側にいる。


 俊冬と俊春も同様ではあるが、かれらは停戦状態であっても本土に渡り、敵の状況はもとより味方の近況まで探りにいっている。


 さすがは世界をまたにかけるスパイである。


 春から再開するであろう戦に備え、蝦夷地の開拓というのもじょじょにではあるがおこなっている。榎本が乗船していた開陽丸が座礁の上沈没したため、その乗組員たちが開拓使として蝦夷の大地を開拓している。


 開陽丸の副艦長の澤太郎左衛門さわたろうざえもんが、開拓奉行に就任した。ぶっちゃけ、かれにとってはまったく畑違いの分野である。


 現在、澤は開陽丸のクルーたちと日々悪戦苦闘しているらしい。


 そんな冬のある日のことである。

 その日は、ラッキーなことが重なった。


 まずは、俊冬と俊春が情報をもってかえってきた。それから、五稜郭から島田と蟻通が子どもらを連れてやってきた。


 そして、ずっといれちがいで一度も会えていなかった人物と会うことができたのである。


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