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地獄門使いの異邦人〈エトランジェ〉  作者: 織田昌内
第四章 神の目覚め・・・消滅
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乙女たちの想い(一)

「祝賀会?」


「はい。この度の引越しをお祝いするためにぜひ開かせてください」


 剣術の稽古を終え、一息ついたリーニアはそんな提案をした。


 家具も十分に揃い、引越し気分が大分落ち着きを見せ始めた時分。


 共同生活にはまだ慣れない部分もあるが、お互いに協力し合いながらなんとか順調な毎日を送ることができている。


 そんな中、リーニアは毎朝欠かすことなく剣を振るっている。


 リーニアは一度決めたことは頑として貫くような芯の強い子だ。


 あまりにも頭に血が上りすぎて空回りしてしまうときもあるが、それでも彼女の行動力によって何度も新たな道が切り開かれてきたのは確かだ。


 そんな彼女の姿は勇ましくもあり、美しくもある。


 剣を振るたびに縦に巻かれた金色の髪へと激しく飛び散る努力の雫は日の光に照らされ、キラキラと輝く。


 そのためリーニアに剣の指導をする傍ら、彼女の雄姿を眺めることが俺の毎朝の楽しみになりつつあったりする。


「それは構わないが、どんな風にするんだ?」


「それは・・・まだ秘密ですわ」


 リーニアは少しだけ恥ずかしそうにしながら目線をそらしてしまった。


 何かサプライズでもあるのだろうか?


 だとしたら詮索はしないでおこう。


「わかった。俺に手伝えることがあればなんでも言ってくれ」


「ありがとうございます」


 そう言って、リーニアは笑顔を浮かべながら家の中に急いで戻った。


 俺も楽しみにしておくとしよう。



 最近明らかに傭兵の仕事をサボっていたことに気が付いた。


 働き始めた初日に鉱脈を掘り当てて舞い上がってしまったが、さすがにそろそろ再開するべきだろう。


 幸運にも家はタダでもらったが、それでも家具や食材を調達するためにはそれなりの金が必要だ。


 それに、メイドにも給料を渡さなければならない。


 ナターリャさんもメレオラさんも遠慮しているようだが、彼女たちの働きに見合った対価は払わなければ俺の気がすまないのだ。


 シルヴィーとリーニアも生活費を払いたいと言ってくれるが、それにも納得できなかった。


 俺にだって譲れないものくらいはあるさ。




「今日はどこへ行くのじゃ?」


「前回探索できなかったジャングルにでも行ってみるか」


 今日は珍しく全員に予定があるらしく、俺は久しぶりに楽な身分となった。赤姫はもちろんいるが。


 オーヴェルネ皇国の南東部に位置する鬱蒼とした森林。かなり危険な場所ではあるのだが、赤姫とだけならそこまで心配はいらないだろう。


 ただ、サフィーレもついてこないためラパティアをどうしようか悩んでいたが、彼女は俺たちについてきてくれるようで、聖剣をおいていかずに済んだ。


 一体どんな風の吹き回しだろう。


 てっきり姉との別行動、というより俺との行動を何よりも毛嫌いしていると思っていたのだが・・・



「しかしここは暑苦しいのう」


「まあ、我慢してくれ」


 鬱蒼とした森林の中はかなりジメジメしているらしく、紅白の巫女装束は汗で赤姫の肌にぴったりと張り付いていた。


 俺はコートのおかげでさっぱりだが、さすがにかわいそうなので『ピュリフィケーション』やら冷気の魔法やらで赤姫の機嫌を損ねないようにした。


「気持ちいいか」


「快適じゃ」


「しかし、赤姫ももっと涼しい格好をしたらどうだ。その格好はそもそも目立つし、歩きづらいだろ。それとも、それを着ていないといけない理由でもあるのか?」


「そうじゃな・・・これは借り物なんじゃが、誰に借りたかも忘れてしもうたし、まあ良いか」


 軽いな。そんなに軽いから友達が減るんじゃないか?


 借りたものくらい返すなり、誠意を込めて使うなり、それなりの礼儀作法があると思うんだが。


 というか、『地獄領』には巫女装束の職人でもいるのか?


「しかし、涼しい格好とはどんな感じかのう」


「それはシルヴィーかリーニアにでも聞いてくれ」


 この世界をファッションを俺が知っているわけがない。


「そういえば、以前街を散策しておる時にものすごく布が少ない夏専用の服があったのう。あれで良いのではないか?」


「あれと言われても、なんのことだ?布が少なくて夏専用・・・もしかして、水着のことか?」


「それじゃ、それじゃ!」


 確かに水着は服かもしれないが、それは色々とまずいだろ。


 まあ、赤姫くらいならぎりぎりセーフといったところだろうか。


 凹凸があるわけでもないし。


「今、絶対いやらしいこと考えた。変態だ。私にはわかる」


「儂もそう思う」


「いや全く、微塵もしていない。それより、出てきて大丈夫なのか、ラパティア?」


「あなたが変な妄想するから嫌になった」


 どういうことだ?


 確かに最近はラパティアの思考は聞こえなくなったが、だからといってまさか俺の思考が彼女に筒抜けになっているはずが・・・


 白丸に確認したところ、強い信頼関係があれば可能かもしれないとのことだったため俺は安心した。


 俺はともかく、ラパティアが俺のことを信頼してくれる日が来るとは到底思えない。


「あまり無理はするなよ」


「ふん」


 ラパティアはそっぽを向いたまま俺の肩に乗った。


 そんなに俺が嫌なら聖剣に帰ればよくないか?


「なあ剣夜。その水着とやらはダメなのか?」


「幼女好きの変態」


「・・・その話はまた今度な」


「仕方ないのう」


 俺は『ピュリフィケーション』で癒したり、頭を撫でたりなどして赤姫をなだめた。


 だがまず第一にラパティアの意見には断固として反論する。



 熱帯雨林の中は大変歩きづらく、下手に動くとそこらへんの猛獣に見つかりそうになるため俺たちは相当ゆっくり進んだ。


 赤姫はいまにも突撃していきそうな勢いだったが、今回の目的はあくまで鉱石取りであって狩ではないため、なるべく目立たないようにしなくてはならない。


 しばらくすると俺たちは大きな岩山にぶつかった。


 ここなら鉱石が掘れそうだ。


 前回のように他の生物が侵入しないよう小さめに洞窟を掘り、俺たちは早速中に入っていった。


「何か光るものがあったら教えてくれ」


「よく見えんのう。ここはやはり儂の魔獣が活躍する場面ではないか?」


「それもそうだな」


 赤姫に気付かされた俺は『ゲート』から黒鳥を呼び出した。


 こいつは以前『聖遺物』を一発で掘り当てた凄腕だ。


「よし。頼む」


 ・・・


 しかし、俺たちの期待に反して黒鳥は一向に地面を掘ろうとはしなかった。


 もしかしたら洞窟が狭すぎて勢いがつけられないのだろうか?


「できないんじゃなくて、嫌がってる感じ」


「黒鳥の気持ちがわかるのか、ラパティア?」


「別にわからないけど、そんな気がする」


「こいつは気難しいやつじゃからのう。領主の儂ですら理解不能じゃ」


 なんだかよくわからないまま黒鳥は勝手に帰ってしまった。


 本当に理解不能だ。


 結局俺たちは呆然としたまま手探りで『聖遺物』を探すことになってしまった。

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