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地獄門使いの異邦人〈エトランジェ〉  作者: 織田昌内
第三章 チェンジリング
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チェンジリング(十)

「・・・驚きすぎてもう何に驚いたらいいかわからなくなったわ」


「ゆっくり理解していけばいいさ。俺も全てを理解しているわけじゃないからな」


「とりあえず一つ確認したいことがあるわ」


「何だ?」


「剣夜は人間なの?」


「何をもって人間とするか定かではないが、俺は人間のつもりだ。それに、自分が人間だと思えればそれでいいと俺は思ってる。もちろんサフやラパティアだって同じことだ」


「私は半分人間、半分聖霊と微妙なところだけれど、でもそうね。剣夜の言う通り、私は人間でありたいと思うわ」


「私は・・・」


「あなたもよ、ティア。どんな姿になっても私の妹なのだから。それだけで十分じゃない」


「お姉ちゃん・・・」


 やはりラパティアはこんな姿になってしまったことをかなり気にしているようだ。


 無理もないか。人間と聖霊では明らかにこれからの生き方が変わってしまうのだから。


「夜も遅くなってきたところだし、今日はこのあたりにしておくか。二人も疲れただろ」


「なんだか興奮しちゃってすっかり眠気が飛んでしまったわ。私はいいから、剣夜が先に休んでちょうだい」


「だが俺が寝るとラパティアに魔力を与えられなくなるんだが・・・」


「確かに」


「私は大丈夫」


 ラパティアはガッツポーズを取るが、明らかなやせ我慢だ。


 そんなにも俺から魔力をもらいたくないのだろうか。


 まさか俺の睡眠を気遣っているとも思えないし。


「大丈夫ではないだろ。今にも消えかかってるじゃないか。やはり俺が起きてるしかないだろ」


「でしたら、剣夜殿の聖剣に宿るというのはどうでしょう」


 ラパティアの死活問題に頭を悩ませていたところ、白丸が姿を現した。


「この子も聖霊なの?」


「聖霊と似たようなものだが、白丸は聖獣と呼ばれるものらしい。俺にもその違いはあまりわからないが・・・」


「聖霊と聖獣の最も明白な違いは定まった形があるかないかです。聖霊は形を自由に変えることができるのですが、それゆえに魔力を長い間体内に貯めて置くことができません。そのためほぼ全ての聖霊は聖剣のような聖なる神器に宿るものです。そうすれば魔力を失わずに済みます」


「ならそれでいいじゃない。ティアはどう?」


「それしかないなら・・・」


 そう言って、ラパティアは壁に立てかけられた聖剣に近付いた。


 しばらく様子を伺った後ラパティアの姿が一瞬光ったと思えば、その姿を消した。


「・・・意外と快適」


「それはよかった」


「どうして私の考えてることを・・・」


「聖剣に宿ることで聖剣の持ち主である剣夜殿と精神的なつながりを得たのです」


「なんか嫌な気分」


 ラパティアは自分の思考が俺に筒抜けになってしまっていることに困惑しているようだ。


「女の子の中を覗くなんて最低」


 なんだか言い方に語弊がないか?


 白丸曰く、慣れれば聖剣の持ち主に自分の考えてることが聞こえなくなるようだが、それまで俺はこんな言われのない罵倒を受け続けなければならないのか・・・


「ティアは大丈夫なの?」


「快適だって言ってるよ。これでラパティアが消滅する恐れはないだろ」


「よかったわ。なら剣夜も休んでちょうだい。好きなベッドを使っていいから。それとも添い寝してあげましょうか」


「遠慮しておく」


 俺はサフィーレの誘いをあっさり断ってからリビングに移った。


 今夜はリビングに置かれたソファーで寝ることにした。


 ベッドを自由に使って良いと言われたが、なんだか今日だけは空いてしまった二つのベッドを使ってはいけないような気がしたのだ。


 俺はソファーに座ってからしばらくの間、机の上に無造作に置かれた双剣を眺めた。


「あれはどう処分したらいいんだ?」


「聖剣を破壊するにはかなりの魔力が必要でしょうからどこかにしまっておくか、もしくは地面に埋めてしまうのが良いでしょう」


「それしかないか・・・再利用しようにも俺以外に握ることができる奴がいないからな」


 俺がわざわざ使うこともないだろうし、どこかにしまっておくか。


 一旦『叫喚の赤界』に送ろうともしたが、相談もなしに赤姫の領地を荒らすような行為はやめることにした。


 いくら広大な宇宙のような空間だからといってゴミを巻き散らかしていい理由にはなるまい。


 とりあえず俺は双剣を布で包んでから肩にかけられるようにした。


「俺もそろそろ寝るか。ラパティアに何かあったら教えてくれ、白丸」


「わかりました」


「・・・あいつはお姉ちゃんの敵。絶対倒す」


 ソファーで横になった俺はラパティアの本音を聞き流しながら心地よい眠りについた。

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