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地獄門使いの異邦人〈エトランジェ〉  作者: 織田昌内
第三章 チェンジリング
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探索と危難(五)

 洞窟の外では呼んでもいない歓迎が待ち構えていた。


 俺たちを取り囲むように十匹近くのイグアナが並んでいたのだ。


「いつの間に」


「ど、どうしましょう」


 シルヴィーは声を震わせながら俺のそばに身を寄せる。


 確かにこの数となると『雪隠れ』で動きを止めるよりも前に突進されておしまいだ。


 こうなったら・・・


「三人は洞窟の中から出ないでくれ。今からその穴を塞ぐ」


「それだけは納得できませんわ。剣夜様のお姿が見えなくなってしまうのは耐えられませんから!」


「そうね。私たちは仲間で、戦うときはいつも一緒なんでしょ」


 そう言って、洞窟から出てきたリーニアとサフィーレは珍しく息を合わせて俺に迫ってきた。


「だが・・・」


 俺が迷っている内にしびれを切らしたイグアナたちが足踏みを始め、そして激しい地響きを立てながらこちらに突っ込んできた。


 ここはもう『テクトニズム』で地形を変形するしか・・・


 そう思った瞬間、唐突に白丸から念話が送られてきた。


「赤姫殿が起きました」


 ただ俺が白丸の言葉の意味を理解するよりも先に漆黒の『ゲート』は出現していた。


 しかも俺とイグアナたちのちょうど真ん中あたりにである。


「待たせたな、剣夜」


「いや、後ろ」


「何じゃ?何があるんじゃ?」


 扉の中から元気よく現れた赤姫は不思議そうにしながら後ろへ振り向き、ぴょんぴょんと飛び跳ねるが、小さい赤姫の視界には黒いものしか入っていないのだろう。


 それでもイグアナたちはブレーキをかけようともせずに『ゲート』に突っ込んでくる。


 俺が慌てて『テクトニズム』を使うと、後一歩で赤姫を踏みつけていたであろう一匹を含め、六匹のイグアナたちが大きな壁に激突した。


「『赤色の輝き、我を導け、エクスプロージョン』」


「『輝け緑色、ヴィーテ』」


 俺の魔法に続けてリーニアとサフィーレが魔法を放ち、俺が仕留め損ねた残りのイグアナたちの動きを止めてくれた。


 サフィーレが使った魔法は初めて見るもので、地面から生え出たつる植物がイグアナたちの足に絡みついていた。


 それでも彼女たちの魔法を受けて一瞬足を止めたイグアナたちは再び突進を始めた。


 だがその一瞬だけで十分だった。


 俺は再び『テクトニズム』を使い、イグアナたちの前に大きな壁を出現させた。


 これでこちら側には来れないだろう。


「そんな必死になって、剣夜は何をしておるのじゃ?」


「・・・」


「ぎゃっ!何するんじゃ!」


 何を言うよりも先に俺は赤姫の頭を鷲掴みにしていた。


 こんな遅くまで寝坊したこともあるが、こんな危機的な状況でありながらも純粋に不思議そうな表情を向ける赤姫に無性に腹が立ったのだ。


 数秒間の罰を与えてから解放してやると、赤姫は頭をさすりながらこちらを睨みつけてきた。


「剣夜の儂に対する扱いはひどくないか。儂の方が偉いんじゃからな!」


「わかったわかった」


「この子もあなたの仲間なのかしら」


「一応そうだ」


「私が随分と仲間の平均年齢をあげてしまったようね。ごめんなさいね」


 サフィーレは赤姫のことを一瞥した後、あからさまな皮肉で俺をおちょくった。


 赤姫は確かに見た目はこんなだが、実年齢はとんでもないことになっているはずだからサフィーレはむしろ平均年齢を下げていると思うんだが・・・


 まあ、女性に年齢のことはタブーか。


「赤姫・・・さん、でしたか?」


「さん付けは必要ないと思うが・・・」


「おお、お主。わかっておるではないか!剣夜は儂のことをちっとも敬ってくれんからのう。お主はいいやつじゃ」


 赤姫が初めて俺以外とまともに話しているようだ。


 リーニアとは全く馬が合わない感じだったが、こいつもやればできるじゃないか。


 なんだか少しだけ人見知りな娘が成長した親のような気分がしてそこはかとなく嬉しい。


「私は赤姫ちゃんと呼びますわよ」


「お主は気に食わん」


「どうしてですか!?」


 リーニアに対しては嫌悪感のような、敵意のようなものを向ける赤姫。


 こいつにも好き嫌いがあるのかもしれないが、人付き合いではあまり露骨に嫌がったりするなよな。


「お話のところ悪いけれど、そろそろ限界みたいよ」


「そのようだな。しょうがない、黒馬で一旦飛翔するか」


 俺の出現させた巨大な壁にはいくつかのひびが入り始めている。


 おそらくイグアナたちがあの大きな爪で破壊しようとしているのだろう。


 あまり悠長なことをしている時間もなさそうなため俺は『ゲート』から二匹の黒馬を呼び出した。


 俺がひとまず黒馬に飛び乗ると、そこが定位置であるかのように赤姫が俺の前に陣取った。


「やはり儂はここが一番じゃ」


 他の場所に座ったこともないくせに・・・


 こうなると、さすがに後一人しか乗れないため自動的に俺の後ろにはサフィーレが乗ることになった。


 シルヴィーとリーニアはどうもサフィーレと馬があっていないようだからだ。


 全員が乗馬したことを確認したところでついに土の壁が突破された。


 それなりに分厚くしたつもりだったんだが、かなりの破壊力だ。


 俺は黒馬をすぐに飛翔させることでイグアナたちの突進をギリギリ回避した。


「これからどうしたものか。帰ってもいいんだが、なんの収穫もないのはな・・・」


「だったらもう一度挑戦してみましょ。今度はもう少し小さめの洞窟を掘ればいいんじゃないかしら」


「じゃから剣夜は今何をしておるんじゃ?」


 こいつは・・・

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