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地獄門使いの異邦人〈エトランジェ〉  作者: 織田昌内
第三章 チェンジリング
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探索と危難(三)

「ここがいいんじゃないかしら。掘りやすそうでしょ」


 前を行くサフィーレは地面が数段高くなっている場所の前で立ち止まった。


 適当に歩いていたようでちゃんと探していてくれたのか。


 俺は一旦シルヴィーたちに魔法をかけるのを中断し、早速『テクトニズム』を使った。


 魔法は使えば使うほどうまくなっていくようで、今回はかなり綺麗に掘れたんじゃないかと思える。


「こんなもんでいいか」


「あら、綺麗な道になってるじゃない。入ってみましょ」


 サフィーレは単純に感心しているようだが、俺はどこか小馬鹿にされたような気分だ。


 まあ気にしてもしょうがないか・・・


 俺は一人洞窟の中に入っていこうとするサフィーレを制して、再び白丸を呼び出した。


 いくら綺麗にできても危険はあるかもしれない。


「よろしく頼む、白丸」


「今回はいいじゃない。中の方が涼しそうだし、少し涼んで行きましょ」


「わたくしも賛成です。剣夜さんにも休んでもらいたいです」


 俺は別に疲れていないんだが、崩落しそうもないし、構わないか。


 俺が許可を出すと、シルヴィーとサフィーレはほぼ同時に『ルーチェ』を発動させた。


 二つの光源を比べるとシルヴィーの方が若干大きいように見える。


 サフィーレは魔法が得意そうだったから少し意外だ。


「今、意外だって思ったでしょ」


「・・・」


「確かに私は魔法が得意だと言ったけれど、それは何も魔法の威力についてではないわよ。私が得意だと言ったのは使える魔法の種類のことよ」


 いつもより早い口調で言い訳のようなものを並べるサフィーレの姿を見ているとなんだかホッとする。


「何かしら。私にだって不得意なことくらいあるわよ」


 サフィーレは少しだけ拗ねたように言いながら洞窟の中に一人入って行ってしまったため俺はその後を追った。


 俺には気温の違いがわからなかったが、三人の様子を見る限り洞窟の中の方が快適だというのは確かなようだ。


「結構奥が深いですね」


「剣夜が勢い余って掘りすぎたのかもしれないわね」


 先ほどのお返しとばかりにサフィーレは皮肉交じりに言う。


 うまくいって少しだけ調子に乗ったことは認めるが、深いことに問題はないだろ?


 俺たちはしばらく洞窟内を見渡したが、いまだに光るものは見つからない。


 まさかここもハズレか?


「剣夜殿。少々よろしいでしょうか?」


 諦めかけてたところ、俺たちより数十メートル先にいる白丸から念話が送られてきた。


「見つかったのか?」


「いえ。ただ確認したいことがありまして」


「何をだ?」


「今回は横穴も掘ったのですか?」


「横穴?いや、縦にまっすぐだが・・・」


「だとしたらこれは奇妙です」


 白丸が何を言いたかったのかすぐにはわからなかったが、洞窟の奥に進むことでようやく理解した。


 俺がまっすぐに掘り進めた洞窟はなんと別の洞窟につながっていたのだ。


 人工的に作られたものなのか、それとも自然的に出来上がったものなのか判断に迷うほど適度にボコボコとしたその洞窟は左右に深く伸びていた。


「これは剣夜が掘ったもの、ではないわよね」


「ああ・・・」


 サフィーレは土に触れるなどしてこの横穴がなんのために掘られたものなのか調べ始めた。


 一方、シルヴィーとリーニアは不安げな表情を浮かべつつ俺の近くに寄ってくる。


 確かにこれは不気味だ。


「何かわかるか?」


「そうね・・・所々に引っ掻いたような跡が見られるわ。これはおそらく動物の爪によるものね。とすると、ここはさしずめ巨大生物の巣穴といったところかしら」


「心当たりでもあるのか?」


「ないわ。地面を掘る生物はいくつか確認されているけれど、こんなに大きな穴を掘るなんて聞いたことがない。いるならぜひ見てみたいわ」


「こんな場所でなくてもいいだろ・・・」


 見た瞬間おそらく俺たちは八つ裂きにされるだろうな。


 俺はサフィーレの言葉が冗談だと信じていたが、えてして噂をすれば影がさすものだ。


 白丸が急に身をかがめたと思えば、洞窟の奥をじっと見つめ始めた。


「どうした?」


「何か来ます」


「何かって・・・」


「わかりませぬが、かなり大きいです」


「とりあえずこの洞窟からは出た方がいいようだな」


 俺はシルヴィーたちを元来た洞窟に避難させようとしたが、サフィーレは何が向かってくるのかを確認しようとその場をなかなか離れようとしなかった。


「先に行っていいわよ。ここからは私の独断行動ということでいいから」


「悪いがサフを一人にすることは決してない。俺の仲間になったんだろ」


「・・・そ、そうね」


 サフィーレは特に反論することなく俺に背中を向けたままだった。


 納得してくれたということなのだろうか。


 しかし俺はいいが、シルヴィーとリーニアは・・・


「わたくしも残りますからね!」


「私もです、剣夜様」


 聞くまでもないか。


 シルヴィーとリーニアは決死の覚悟で俺を直視してきた。


 この二人の度胸にはいつも驚かされる。


「わかった。だが、危なくなったらすぐに逃げてくれ」


 ここまで連れて来た俺には二人を守る義務がある。


 決して傷つけたりはしない。

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