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地獄門使いの異邦人〈エトランジェ〉  作者: 織田昌内
第三章 チェンジリング
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探索と危難(二)

 北西に二時間ほど飛行したところ、カヴァルーナ帝国、サマルティス王国両国に隣接するオーヴェルネ皇国の南東部に位置するその場所には鬱蒼とした森林が広がっていた。


 背の高い木が何本も生え、つる植物が幾重にも巻きついている。いかにも熱帯のジャングルといった場所だ。


 ただ、ここに来てからシルヴィーたちはどうも暑そうにしているが、俺はそこまでの違いが感じられない。


 もしかしたらと思い、漆黒に染まったコートを脱いでみると、むしむしとした熱気が感じられた。


 このコートは断熱の機能も持っているのか。便利すぎる。一生手放さないでおこう。


「それにしても暑いですね。こうも急に気候は変わるものなのでしょうか?」


「汗で服がベトベトになってしまいそうですわ」


「聞いてはいたけれど確かに急な変化ね。何か自然以外の要因があるように感じられるわ」


 暑そうにしながらも身だしなみが気になっているのか、シルヴィーとリーニアは長い袖を捲り上げることに躊躇しているようだった。


 一方のサフィーレは人目をはばかることなくワンピースのボタンに手をかけ始めた。


「いきなり何をしてるんですか!?」


「ここで脱ぐき!?」


 いきなりすぎる奇行に、シルヴィーとリーニアが全力でそれを阻止する。


「大丈夫よ。下着を着てるから裸になるわけじゃないわ」


「そういう問題じゃないです!」


 なんの臆面もなく答えたサフィーレに対してシルヴィーたちは驚きあきれている。


 彼女には羞恥心がないというより、それをものともしない度胸があるようだ。


「とりあえずここで脱ぐのはやめないか。汗が気になるのなら『ピュリフィケーション』を使うから」


「しょうがないわね」


 ようやく観念したサフィーレはボタンから手を離してくれた。


 その後、俺は三人に『ピュリフィケーション』をかけた。


 ほんの気休めにしかならないだろうが、ないよりは幾分かマシだろう。


 しかしサフィーレはそれで満足せず、結局俺は冷気を発生させる魔法を道中常に彼女たちの後ろから使い続けることになってしまった。


 俺をクーラー扱いか・・・


「気持ちいいわね・・・」


「こんなに魔法を使い続けて大丈夫ですか、剣夜さん?」


「剣夜なら大丈夫よ。ね」


 シルヴィーは心配してくれるが、サフィーレはニコニコした顔をこちらに向けてくるだけだ。


 人使いが「荒い」というよりはむしろ「うまい」のかもしれないが、仲間になって一日でもう彼女に手綱を握られてしまったということなのか。


 俺も年上に反抗するのはみっともないような気がして少しだけ遠慮してしまう。


「魔法を使い続けると何か問題があるのか?」


「次第にめまいがして、ついには意識を失う人もいます。今思えば、これは魔法が体内の魔力を消費していたからなのでしょうか」


「どういうこと、シルヴィー?」


 やはり魔法の話になるとリーニアが真っ先に食いついてきた。


「魔力は人の体力と密接なつながりを持っているかもしれないということです」


「倒れるまで魔法を使った奴を見たことがあるのか?」


「学校に入学すると、真っ先に魔法の適性検査があるのです。その一つに、どれだけ魔法を使い続けることができるのかというものがあるのですが、その時に何人もの生徒が倒れていました」


 ひどいことをさせるなこの世界の学校ってのは。


 戦争で使うわけでもあるまいし、魔法を倒れるまで使い続けることなんてないだろ。そんな試練になんの意味があるのやら。


 そういえば、学校は聖教会が管理してるんだったか。子供たちに一体何を期待しているのだろうか・・・


「その試練でいい結果を出すと何か特典があるのか?」


「魔法が得意な生徒は卒業後、聖職者になることが許されるのです」


「聖職者か・・・それは人気のある職業なのか?」


「もちろんですわ!聖職者になればより多くの魔法を知ることができるのですから」


 リーニアの説明には熱がこもっていた。


 やはり学校でもっと魔法を勉強したかったんじゃないのだろうか。


「リーニアは魔術士を目指していたんですよ」


「魔術士とは?」


「魔術士とは聖教会公認の称号で、この世界で指折りの魔法使いにのみ与えられるものです。様々な特権が与えられるため多くの魔法使いの憧れなんです」


 しかしそれは貴族の称号よりも価値があるものなのか?


 聖教会は一体どれほどの権力を持ってるんだ。これではただの俗物じゃないか。


「歓談中悪いのだけれど、私にも冷気をお願いできるかしら」


「・・・悪い。ところで、サフは魔術士を目指さないのか?」


「特に興味はないわね。そんな称号を与えられるということは聖教会の管理下に入ったようなものじゃない。それだと自由に研究ができなくなってしまうわ」


「・・・」


 サフィーレはつまらなさそうに語ったが、それに対してリーニアは何か言いたげな様子である。


 しかしリーニアは口を開かなかった。


 いつもは素直に自分の気持ちをぶつけてくるはずの彼女に一体何があったのか。


 元凶はわかっているんだが・・・

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