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地獄門使いの異邦人〈エトランジェ〉  作者: 織田昌内
第三章 チェンジリング
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探索と危難(一)

 見渡す限りの険しい山々。


 足元はゴツゴツとしていて非常に歩きづらい。


 買った本に書いてある通りならばこの近辺で赤い『聖遺物』が取れるはずだ。


 俺が先頭になって後ろに三人の少女がついてくる。


 何もピクニック気分を期待していたわけではないが、二人ほど不機嫌そうな表情をしているためかなり気まずい。


 残りの一人は常にウキウキとした足取りであるが。


「おそらくこの先の岩場で採れると思うわ。そこで『テクトニズム』を使えばすぐに終わるはずよ。終わったらまたお話をしましょ。今度はあなたの正体について、でどうかしら」


「それはできれば避けたい話題だな・・・」


 サフィーレの疑問や質問は後をたたない。


 魔法のことだけでなく、俺のことについても根掘り葉掘り聞いてくる。


 そのうち俺でも知らないような俺の秘密すら解明してしまいそうな勢いだ・・・


 十数分山を登ったところで俺たちはようやく大きな壁にぶつかった。


 サフィーレ曰く、ここを掘っていけば『聖遺物』が見つかるらしい。


「『輝け緑色、テクトニズム』」


 早速岩肌に手を向けて聖文を唱えると、ゆっくりと岩の壁が変形し始めた。


「どうしてそんな短い聖文で魔法が発動するのですか?」


「俺に聞くよりサフに聞いた方が早いんじゃないか」


「呼んだかしら」


 そう言って、サフィーレは俺とシルヴィーの間に割って入ってきた。


 それがまた彼女たちの間に軋轢を生んでいるとも知らずに。


「この聖文の唱え方はサフが自分で作ったのか?」


「そんなことないわ。魔法を研究していれば誰にでもわかることよ」


 また一言余計なことを。


 シルヴィーなんて腹を立てるどころか完全に意気消沈しているじゃないか。


 彼女だって魔道具を作るなどいろんな功績を残しているんだからこんなことで自信を失わなければいいが・・・


 そんなことを思っているうちに一応それなりに深い洞穴が完成した。


 とりあえず中に入ってみなければ鉱石があるかわからないため俺は早速中に入ってみようと思ったのだが、危険かもしれないということで再び白丸の手を借りることにした。


「白丸頼む」


「わかりました」


「何よこれ!」


 俺の剣から飛び出した白丸を見て、サフィーレはこれまた興味津々といった様子で白丸に近寄った。


 一方、シルヴィーは一歩下がるようにして警戒心を高めた。


 そういえば、シルヴィーには見せてないんだったか。


「剣夜さん、これは確か・・・」


「説明するのが遅れて悪かった」


 困惑するシルヴィーに納得してもらうため、俺はリーニアにもしたように、白丸のことを説明した。


 白丸にはもう悪意がないということを伝えると、シルヴィーはどうにか白丸のことを受けいれてくれた。


 ただ、サフィーレからすればそんなことはどうでもよく、白丸が一体どこから現れたのかについてのみ気にしていた。


 剣の中に宿っているなどと説明するとなると、聖獣や聖剣についても触れなければならなくなるため、とりあえず黒馬と同じような原理だということでごまかした。


 ごまかしたというよりは、サフィーレとの根比べに俺が勝ったというだけのことだが。


「仕方がないわね。これは貸しということになるのかしら」


 転んでもただでは起き上がらないのがサフィーレだ。


 彼女はニヤニヤと笑みを浮かべながら俺の顔をまじまじと見つめる。


 この貸しは高くつきそうだ・・・


「では早速参ります」


「何かあったらすぐに教えてくれ」


 何はともあれ、白丸は洞窟の中に進んでいった。


 そこまで深く掘ったわけではないため白丸からの連絡はすぐに届いた。


「見える範囲に光るものはありませぬ」


「そうか・・・」


 そうトントン拍子にはいかないか。


「仕方がない。もう一回掘るか・・・」


 こうして俺は結局一時間以上もかけてやっと鉱石が多く集まるポイントを掘り当てた。


 今までがうまく行きすぎていたのだ。これが本来の大変さなのだろう。


 俺は掘り当てた赤い『聖遺物』をサフィーレに鑑定してもらった。


 鑑定技術なんてどこで習ったのか不思議に思ったが、サフィーレ曰く、本を読めば誰でもわかるのだという。


 なら俺も挑戦してみるかな。


「これは思っていたより品質が良くないわね」


 サフィーレはいくつかの鉱石を調べてくれたが、どれも結果は芳しくなかった。


 とういうことはつまりここはハズレだったということか?


 ここまでしてなんの成果もないというのは疲労以上のものがくる。


 まあ、切り替えて次のポイントに向かうしかないか。


 こんなことで一喜一憂しているようじゃこの先持つ気がしないしな。


「なら、ここは諦めて次の場所に向かうか」


「そうしたほうがいいわね。これ以上掘ると、あまりにみっともないことになってしまうわ」


 サフィーレはそう言いながら俺が掘り進めた散々たる岩山の惨状を眺めていた。


 そんな皮肉を言われても・・・まだ慣れてないんだからしょうがないじゃないか。


 それでも鑑定してくれたことについてはサフィーレに感謝しつつ、俺はアヴィンル山脈から撤退しようとした。


 時刻は午後三時過ぎくらいといったところで、日も傾き始めている。


 次の場所に行って今日の仕事は終わりだな・・・


 俺は『テクトニズム』を使って荒らしてしまった岩肌を整備した後、黒馬を呼べそうな場所に移動した。


「次はここがいいんじゃないかしら。良質な鉱石が採れると聞くわ」


「ならどうして先に言ってくれなかったんだ?」


「ここには危険な生物が巣食っているとも言われているの。それに、あまりに早く終わってしまったら剣夜とお話ができないじゃない」


 そっちが本音だな・・・


 サフィーレは悪びれる様子もなく、むしろあっけらかんと言いのけた。


 すると、怒りをあらわにしたリーニアがサフィーレに詰め寄る。


「そんな理由で剣夜様の仕事を遅らせたの!?」


「そんなに怒らないで。胸のことは黙っておいてあげるから」


「!?」


「少量のようだけれど、あなたの年ならまだはや・・・」


「だめですわ!」


 サフィーレが何かを言いかけたと思えば、リーニアがそれを全力で阻止した。


 そして二人は俺から少しだけ離れた場所でヒソヒソと内緒話を始めた。


 その後戻ってきたサフィーレとリーニアの顔色は見事に対照的だった。


「二人ともどうしたんだ?」


「な、なんでもありませんわ!」


「ふふ。背伸びしたくなる年頃というだけのことよ」


「ちょっと!」


 満面の笑みを浮かべるサフィーレと平静さを失うリーニア。


 これは仲良くなったということなのだろうか。それとも上下関係が決まってしまったということなのだろうか。


 これ以上この話を続けて欲しく無さそうなリーニアの潤んだ瞳を見て、俺は何も言わず出発する準備を始めた。


「今回は私が一人で馬に乗るわね。あなたを独占するのもこの子たちに悪いし」


「大丈夫か。普通の馬じゃないぞ」


「私ってやればなんでもできちゃうのよ」


 自慢げにそう言いながらサフィーレは乗馬した。


 結構様になっている。


 俺も二頭目の黒馬に乗馬すると、その後ろにシルヴィーが乗った。


「いいのですか、わたくしが真ん中で」


「ど、どうぞ」


 シルヴィーは少しだけ困ったような表情を浮かべているが、リーニアの気持ちを察したかのようにそれ以上何も言わなかった。


 何もわかっていないのは俺だけなのか?


 二人が乗ったことを確認した俺は早速黒馬を飛翔させた。


 サフィーレの乗る黒馬はいつもより荒っぽい飛び方だったが、彼女は何とは無しに乗りこなしていた。


 本当になんでもできるのだろうか・・・

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