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地獄門使いの異邦人〈エトランジェ〉  作者: 織田昌内
第三章 チェンジリング
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青い小悪魔(八)

「剣夜は何歳なのかしら」


「俺か。俺は17だが」


「やっぱり年下だったのね。ちなみに私は18よ」


サフィーレは十八歳か。どうりで年上にからかわれているような気分がしたわけだ。


黒馬が飛翔してからしばらくの間、サフィーレは興味津々に周りの風景を眺望していたが、次第に俺への質問攻めに切り替えてきた。


特にすることもない俺は淡々と答えられる範囲で答えてやった。


「あの門みたいなものは何なのかしら。魔法なの?」


「俺も仕組みはよくわからない。知っていそうなやつは知ってるが、いつ会えるかわからん」


全く赤姫はいつになったら来るんだ。


白丸に念話を送るが、依然として寝ているとのことだった。


現れたら二、三発お見舞いしなければ俺の気が済みそうにない。


「それで剣夜は『聖遺物』なしで魔法を使っていたけれど、あれはどう説明してくれるのかしら」


「確かに手には持っていなかったが、使っていないわけじゃない」


「このコートの中にでも入っているのかしら」


「いや、このコート自体が『聖遺物』なんじゃないかと俺は思ってる」


「これが『聖遺物』?例えそうだとしても白くないじゃない」


俺のコートをまじまじと見つめた後、サフィーレは疑いの目を向けてくるため、俺は事の次第を細かく教えた。


ついでにシルヴィーと昨晩話し合ったことについても伝えると、さすがのサフィーレも驚いたような表情を見せた。


「・・・黒色と白色の『聖遺物』との間にそんな関係があったとは私も知らなかったわ。私も黒色魔法については調べようとしたけれど、あまりに文献が少なすぎて断念したことがあるのよ。でも、剣夜の話を聞いて少しだけすっきりしたわ。つまり黒い『聖遺物』はあなたのように強力な魔法の力を持った人でなければ見ることができないということね」


少し説明しただけでサフィーレは全てを理解したような爽快な笑みを浮かべていた。


俺はいまだ釈然としていないんだが・・・


「もしかしたらこのコートは緑色魔法も使えるんじゃない?」


「どうしてそうなるんだ?」


「コートが黒くなったのは緑色魔法を使った時なんでしょ。あなたが言うように魔法の源が魔力というもので、それが『聖遺物』の中ではなく、人の体内にあるのなら、少なくとも緑色魔法を使うことができる魔力がそのコートの中に吸収されているということにならない?」


そうなるのか?


確かに緑色魔法を使う時、俺の魔力が緑の『聖遺物』へと移動する過程でこのコートに吸収されたとしたら、サフィーレの言うことが正しいことになるのか。


「なら一応試してみるか。何か初級の緑色魔法を教えてくれないか」


「そうね・・・だったら『サービア』はどうかしら。砂で相手の目くらましができる魔法よ」


「わかった。緑色の輝き、我を・・・」


「ちょっと待って。その唱え方よりもっと早い方法があるわ」


俺が聖文を唱えようとしたところをサフィーレはすかさず止めにかかった。


そして俺にいつもとは違う聖文の唱え方を教えてくれた。


今まで唱えていたものより格段に言いやすく、何より短い。


「『輝け緑色、サービア』」


聖文を短くしても魔法はちゃんと発動した。


しかし予想通りに予想外なことに、周りが説明する以上の効果を発揮してしまう。


一言で言うなら、砂塵の大竜巻きが現れたのだ。


これでは目くらましなんてレベルではない。完全に戦闘不能だ。


慌てて竜巻きの根元に目を向けたが、幸い人はいなさそうだ。


「・・・どちらから驚けばいいのかしら」


「とりあえず威力については不問で頼む」


「そう。ならこのコートが白色だけでなく緑色の『聖遺物』の性質を持っていたことに驚いたわ。ここまできたら他の魔法も試してみましょう」


そう言って、サフィーレは目を輝かせながら俺のコートを引っ張った。


言われなくても試すがな・・・


こうして、目的地に着くまでの間に俺は何発も魔法を発動した。


もちろん安全確認に怠りはない。


そして結論を端的に言えば、このコートは全色の『聖遺物』の性質を持っていたのだ。


黒色魔法は一つも知らないため全色とは言えないかもしれないが、そもそも存在するのかも疑わしいため一応全色ということにしておこう。


「このコートはものすごく便利だわ。私に頂戴」


「そういうわけにはいかない。これは大切なものなんだ」


「お金ならいくらでも用意するわよ。それともやっぱり・・・」


「どっちもいらん」


サフィーレの言いたいことを先に悟った俺は早めに断っておいた。


後でシルヴィーたちに何を言われるか分かったものじゃない。


しかし、サフィーレは諦めんとばかりに俺との密着度合いを高めてきた。


「遠慮しなくていいのよ。あなたの欲するがままにご奉仕させてもらうから」


よくそんなセリフを平然と言ってのけられるな・・・


「分かったから離してくれ」


「それってつまり取引成立?」


「いや、このコートの仕入れ先を調べておく」


「もう。意外と純情なのね」


俺はいたって常識的な対応をしたつもりなんだが・・・


サフィーレのおふざけに付き合うだけで疲れてきた俺だったが、この一時間ほどの談義でかなりの収穫を得た。


『聖遺物』を握らなくても魔法が使え、しかも聖文を唱えるスピードが大幅に削減された。


これからの戦闘がかなり有利に進められそうだ。


怪我の功名というか、棚から牡丹餅といった気分だ。


だが今度は俺とサフィーレが二人して満足げに黒馬を降りたところを見咎めたシルヴィーとリーニアに質問の嵐をぶつけられることになったのは正直参ってしまったが・・・

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