青い小悪魔(三)
シルヴィーとはまた後で合流するということで、俺は早速エイアブさんの店に向かった。
途中、白丸に赤姫の様子を聞いたが、依然として熟睡しているとのことだった。
単に疲れが溜まっているのか、それとも時差ぼけか、まさかあれがあいつの習慣なのか、と色々考えているうちに俺は目的地に到着した。
店はすでに開店していたようで、中では何人かが陳列された商品を眺めている。
「おはようございます、剣夜さん。奥にどうぞ。リーニア様がいらしてますよ」
リーニアが?
エイアブさんに促されるまま奥の部屋に入ると、そこではリーニアが椅子に座りながら優雅にお茶を飲んでいた。
「剣夜様!おはようございます」
「どうしてリーニアがここに?」
「ここで待っていれば、必ず剣夜様にお会いできると思いまして」
なるほど。確かにその通りだな。
リーニアは嬉しそうにしながらお茶の入ったカップを渡してくれた。体が温まる・・・
「では、早速仕事の話に入ってもよろしいでしょうか?」
「ああ」
エイアブさんは机の上に大きな地図を広げた。
これがこの世界の全体像か。
「剣夜さんが『聖遺物』を掘り出したのはここ。私は今からここに向かって鉱石の種類や品質を確かめたいと思います。その後聖教会に使いを送り、返事を待ちつつ、販路を拡大するための遠征に出かけたいと思います。ですので、しばらくは剣夜さんも自由に行動してください。鉱脈を見つけた時や、急用があれば、この店に駐在させる仲間に伝えていただければ私の耳に伝わるようになっております。剣夜さんの方から聞いておきたいことはありますか?」
「聖教会に使いを出すというのはどういうことだ?」
「ご存知ありませんか?鉱脈で『聖遺物』を採掘し、それを販売しようとする場合、聖教会にその旨を報告しなければならないのです。さらに、それが白い『聖遺物』であった場合、聖教会の管理下に置かれることになります」
「管理下に置くとは具体的にどうすることなんだ?」
「採掘された白い『聖遺物』の約半分は聖教会が買い取り、残りは聖教会が公認した団体にしか売らないといったところですね」
聖教会とやらはそんなにも力を持っているのか。
しかし、そこまでして白い『聖遺物』を管理下に置く必要があるのだろうか。
流通を制限しているがために白い『聖遺物』だけ研究が遅れている気がするんだが。
まさか、わざと遅らせているのか?
「なら、これから白い『聖遺物』を見つけた場合はすぐに報告したほうがいいということだな」
「できればそうしてください」
俺はエイアブさんに今後も採掘作業を続けていくということを伝え、リーニアとともに店を後にした。
そのまま宿に戻り、自分の部屋に入ると、そこではいまだ赤姫が眠っていた。
白丸(小)は呆れた様子でベッドの隣におとなしく座っていたが、俺の姿を確認すると、素早く姿を消した。
無駄な骨折りになってしまったな。
「まだ寝てるのか・・・」
「きっと疲れてるんですわ」
そうも言ってられないんだがな。
そもそも、俺がここにいるのはこいつの話し相手を見つけるためだ。
赤姫自ら動き出そうとしてくれなければ、俺にはどうすることもできない。
そろそろ起きてもらうため俺は優しく赤姫の肩をさすった。
「赤姫、起きろ。出発するぞ」
「・・・う〜ん・・・剣夜か・・・儂は『ゲート』で合流するから先に行ってよいぞ・・・むにゃむにゃ」
俺の耳元でつぶやくように用件だけを伝えた赤姫は再び動かなくなった。
これは重症だな。まさに引きこもり体質だ。なんとかこの習慣を矯正してやらねば。
「赤姫ちゃんはなんと」
「後からくるとさ」
「そんなことが・・・」
俺は呆れた様子のリーニアを連れて宿を後にすることにしたが、念のため白丸(小)を置いていった。
全く困ったやつだ。
出発する前にシルヴィーと合流しなければならいのだが、待ち合わせ場所を決めていなかったことに気付いた。
王城であったことをリーニアに伝えると、おそらく研究棟にいるのではないかということだった。
「剣夜さん!お待たせして申し訳ございませんでした。準備は済みましたのでいつでも行けます」
研究棟でシルヴィーと合流した俺は二人を連れて近くの森まで移動し、黒馬を呼び出した。
目的地はひとまず帝都イリンゼンだ。
俺は再びシルヴィーとリーニアが乗る順番で揉めると思っていたが、二人はあっさりと俺の後ろに乗った。
今回はシルヴィーが真ん中か。
そして五時間近い飛行の後、さすがに疲れた様子を見せるシルヴィーとリーニアは黒馬から降りた後はしばらく動くことができずにいた。
「少し休憩していこう」
「すみません、剣夜さん」
赤姫はこれを避けるためにわざと俺たちを先に行かせたのではないかという疑念まで湧いてきてしまった。
この移動の仕方には改善の余地があるな。
『ゲート』を使って一瞬で好きな場所に移動することはできないものか・・・




