表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄門使いの異邦人〈エトランジェ〉  作者: 織田昌内
第三章 チェンジリング
39/94

無形の襲撃者(三)

すっかりふてくされてしまった二人を後ろに控えながら、俺は帝都イリンゼンを離れた。


人目がなくなった場所で黒馬を呼び出し、俺たちは一時間ほどかけて近くの高山地帯まで飛んで行った。


その間、リーニアは終始黙ったまま俺の腰を強く抱きしめているだけだった・・・


「この辺りだと青い『聖遺物』が取れるらしいんだが・・・」


「この中からどうやって探すんじゃ?」


「そうだな・・・」


なんの興味も示していなかった赤姫に最もなことを言われてしまった。


到着早々、手っ取り早く『テクトニズム』で掘りおこしたいのだが、リーニアにまた注意されてしまいそうだ・・・


当惑しながらもあたりを見渡していると、前もこんなことで悩んでいたことを思い出した。


そう言えばあの時、モグラでもいればいいとか思っていたな。


「・・・なあ、赤姫。穴を掘ることができる魔獣を知らないか?」


「なんじゃ?穴を掘る、のう・・・正直わからん」


俺が耳打ちをすると、赤姫は一瞬不思議そうな顔を見せるも、すぐにお手上げの様子で即答する。


自分の魔獣ぐらい把握しておけよ・・・


「おう、そう言えば!妙に先が尖った鳥がおったような気がするぞ!」


「鳥?」


鳥に地面を掘ることなんてできるのか?


全く期待できそうになかったが、とりあえず俺は頭の中で嘴の長い鳥を想像した。


うまくいくかはわからないが、黒馬を初めて呼び出したときもこんな感じだっただろう。


というか、俺がやるより、実物を見たことがある赤姫がやったほうがいいのではと気付いた頃には、俺たちの上空に小さめの『ゲート』が出現していた。


「また女の子が降ってくるのですか、剣夜様?」


「それはないと思うが・・・」


リーニアの皮肉まじりな言葉を聞き流している内に、開いた扉の中からカラスほどの大きさしかない黒っぽい鳥が勢いよく飛び出してきた。


えらく小さいな。嘴は確かに尖っているが、あれではとても地面を深く掘るなんて芸当は不可能じゃないか?


「そうじゃ、あいつじゃ!」


「鳥まで出てくるなんて、あの扉は一体なんなのでしょうか?」


興奮気味の赤姫が飛び回っている黒鳥を眺めている一方で、リーニアは不思議そうに首を傾げていた。


俺も呼び出してはみたものの、この黒鳥をどう扱ったものかと悩んでいた。


とりあえず、駄目元のつもりで地面を掘るよう念話を送ると、はるか上空を飛び回っていた黒鳥の周りにだんだんと黒い妖気が漂ってくる。確か黒馬も同じ妖気を出していたな・。


一瞬で姿がほとんど見えなくなった黒鳥は少しずつ速度を上げていき、ある一点に狙いを定めて一気に突っ込んだ。


鈍い音をたてと思えば、黒鳥の姿は消えていた。あるのは直径30cmほどの綺麗な円だけである。


「本当に掘るとはな・・・」


「さすが儂の魔獣じゃ!」


「すごいですわ・・・でも、ちゃんと帰って来れるのでしょうか?」


驚きつつも、リーニアは心配そうにしながらいまだに帰ってこない黒鳥が開けた穴を見つめていた。


一分待っても、全く帰ってくる様子がない。まさか、神風特攻隊というわけではあるまい・・・


「大丈夫かこれ?」


「心配するでない。もうすぐ・・・ほら、帰ってきたぞ!」


俺たちが一斉に赤姫の指差した方に目を向けと、そこから急に黒い何かが飛び出した。


それがすぐに先ほどの黒鳥であることを確認するよりも前に、俺は頭上に降ってきたものをつかんだ。


「なんだ・・・これは『聖遺物』じゃないか」


「ええ!どうして!?」


「すごいじゃろ!」


俺とリーニアが驚きの表情を浮かべている傍、赤姫はまるで自分の手柄であるかのように平らな胸を張っている。


しかし、身長が縮んでよかったな。バランスが良くなったじゃないか。


「剣夜・・・」


「いや、俺は何も言ってないぞ」


赤姫はわざとらしく胸周りを隠すように腕を組みながら俺の方を睨んでくる。


相変わらずの第六感だが、これくらいは許してもらいたいものだ。なんでもかんでも心のうちを咎められては何も考えられなくなってしまう。


まあ、それはおいておくとして、俺は拳大の鉱石を注意深く観察した。


所々に青く輝く部分が見られる。間違いなく『聖遺物』である。


確かに穴を掘るよう命じたが、まさか鉱石まで掘りおこしてくるとは。あいつも俺の心のうちが読めるのだろうか・・・


「リーニア、これはどれほどの価値があるんだ?」


「そうですわね・・・綺麗な色をしているので、それなりの値段になると思いますわ。けれど、一粒一粒が小さいのが玉に瑕ですわね」


俺が手渡した鉱石をリーニアは細かく分析していく。


やはり魔法関連の話になると、彼女はとても楽しそうに話してくれる。先ほどまでの不機嫌そうな態度が嘘のようだ。


鉱石を掘り出してくれたことに感謝しようと上空を見上げると、そこにはすでに黒鳥の姿はなかった。


「あやつは人見知りなやつじゃからな。それより、これで目的は達成したのか?」


「まあ、ここで『聖遺物』が掘れることを確認できたという点では達成したと言えなくもないが、これだけの量ではあまりにも寂しいだろう。かといって、あの黒鳥を何度も出現させて掘りおこすってのも非効率的だからな、後は『テクトニズム』の魔法で一気にやるか。場所が確定しているのなら無駄な自然破壊をしなくて済むしな」


そう言いつつ、ちらりとリーニアの方をみると、彼女は少しばかり呆れた表情を見せるだけで、何も言ってこなかった。


お墨付きをもらったところで、俺は早速二人を下がらせ、緑色の『聖遺物』を握った。


そして、俺が聖文を唱え終えようとしたその時、地面がぐらついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ