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地獄門使いの異邦人〈エトランジェ〉  作者: 織田昌内
第三章 チェンジリング
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無形の襲撃者(二)

俺があたりの本を物色している一方で、俺の手伝いなど全くする気がない様子で本棚にもたれている赤姫は、明らかに面倒くさそうな顔をしながらも俺の要求通りに話を始めてくれた。


「・・・剣夜と別れた後のことは正直よくわからん。あの女、名前をなんと言ったかのう・・・まあ、よいか。あの管理者風情が、情報統制中とかなんとか抜かしおって、儂の視覚を奪いおったのじゃ!その後は・・・急に服をひん剥かれたと思えば、身体の隅々までまさぐりおって、挙げ句の果てには『三途の川』は魔力不足とか言って、『人間領』用の肉体を作るために儂の魔力を大半使いおったのじゃ!そのせいで、こんななりになって・・・」


そう言いながら自分の姿を確認する赤姫はどこか浮かない表情をしていた。


やはりその見た目、気にしていたのか・・・


とりあえず赤姫の事情はわかったが、所々わからない部分があるな。


「まず、「魔力」ってのはなんだ?」


「なんじゃ、剣夜はそんなことも知らんのか?まあ、儂も詳しいことは知らんのじゃが・・・確か、魔法を使うために必要な体内に宿る力とかなんとか、じゃったような・・・」


はっきりしないな・・・


しかしこれで、魔法が『聖遺物』から直接生じているわけではないということがはっきりした。リーニアやシルヴィーが聞いたら度肝を抜かれるだろうな。


「そ、れ、よ、り、じゃ!剣夜が今おかれている状況を説明せんか!」


「どう言ったものか・・・」


長話をしている時間もないため、俺はこれまでのことをかいつまんで話してやった。


白丸と戦ったことや、傭兵になったということを重点的に話したのだが、赤姫はどうも納得している感じではない。


「肝心なことが抜けておらんか?」


「聖獣である白丸と戦ったこと以上に大事なことなんてあるのか?」


「とぼけるな!あの女との関係を早く言わんか!」


そう言いながら赤姫は俺めがけて急に蹴りかかってくる。


しかし、あまりにも短すぎるその足は俺に届くはずもなく、赤姫は足を蹴り上げた勢いのままバランスを崩し、後ろの本棚に後頭部を激突させた。


「ぎゃっ!」


「・・・危な・・・」


「ぎゃっ!」


ぶつかった衝撃によって落ちてきた数冊の本は見事脳天に直撃し、赤姫は完全にグロッキー状態だ。


何をやってるんだか・・・


赤姫は小さくなってしまった自分の体をいまだ制御できていないようだ。確かに30cmは縮んでいそうだからな、相当動きづらいのだろう。


しかし、こんなになるまで魔力を消費する必要があったのだろうか?これでは人間界に来た時に支障が出ることぐらい予想できてもいいと思うんだが・・・


「大丈夫か・・・」


「全部剣夜のせいじゃからな!」


「わかったわかった」


一人で勝手にバランスを崩して、勝手にぶつかっただけだろうに。


俺のどこに非があるのか全く理解できなかったが、ここはそっとしておいてやろう。ここで追求するのはものすごくかわいそうな気がしてならない。


「剣夜様、どうかされたのですか?」


「どうもしてないぞ」


赤姫がたてた盛大な音を不思議に思ったのか、リーニアが二階へと上がって来た。


特に理由はないが、俺は素早く散らかっていた本を本棚に戻し、座り込んでいた赤姫を立たせ、何もなかったかのように振る舞った。


「何をなさっていたのですか?」


リーニアは俺たちに対して懐疑的な視線を向けてくる。


何もやましいことはしていないのだが、じんわりと冷や汗を感じるのはなぜだろう。


「少し大きめの本を落としただけだ・・・それより、何かいいものは見つかったか?」


「帝都周辺の地形図、それと、カヴァルーナ帝国で産出する鉱石をまとめた本も見つけましたわ」


「それはすごいな」


「剣夜様はちゃんと探していたのですか?」


先ほど以上に鋭い眼差しになるリーニアの言葉に言い返すこともできず、俺は黙ったまま赤姫の方を見る。


俺はちゃんと探そうとしたんだが・・・


「なんじゃ、儂のせいだとでも言うのか!?そもそも、剣夜が話せとい・・・うーっ!」


赤姫の口を塞ぐのも慣れたものだ。


「リーニアが見つけてくれた本で十分だろ。それを買って、鉱脈を探そうか」


俺はそのまま一階に降りようとしたが、リーニアは表情をますます険しくさせていき、頬を膨らましながら目で何かを訴えかけてくる。


そんなにサボっていたことを怒っているのだろうか・・・


謝るタイミングをすっかり逃してしまった俺はどうしようもできないまま、一人一階へと降りていった。


リーニアがすでにカウンターへと運んでいた本の代金を払おうとすると、店主は「女性は怒らさんな・・・」と小さく呟きながら俺の金を受け取った。


俺が悪いのか・・・


気分をわずかに落としながら俺は二人を連れて本屋を出たのだが、どちらも俺との距離をあけつつ、あらぬ方向に目を向けていた。


リーニアはいいが、赤姫は自業自得だろ?


「その・・・今日は帰るか?遅くなってもオルドックス夫妻が心配しそうだ」


「ご心配なく。今夜は剣夜様のところに泊まると伝えておきましたので」


「本当か?」


「ええ」


よく許してくれたな。


この世界では婚約者が同衾することは普通のことなのだろうか。


いや、その前にリーニアにはまだ早いだろ。俺もだが・・・


「なら、後二、三時間ぐらい探してから帰ることにするか」


「私のことは気にしないでください!」


「そういう訳にもいかないんだが・・・」


リーニアは強情にも意見を変える気がないようだが、やはり十五歳の少女を長いこと連れ回すのはまずいだろ・・・

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