小さな再会(六)
リーニアの頭を撫で続けていると、いきなり俺の腰に向かってタックルしてくるやつがいた。
危うく転びかけたぞ・・・
「剣夜!儂と話さんか!」
「おい・・・」
「剣夜様を呼び捨てにするなんて、あなたは剣夜様とどういう関係なのですか!?」
「なんじゃ、この小娘は?」
「あなたの方が小さいでしょ!」
「なんじゃと!」
こうなるのか・・・
赤姫とリーニアは犬と猿、水と油のように相いれず、いがみ合っている。
リーニアは一度火がつくとなかなかおさまらないし、赤姫に至っては・・・ただの子供だな。心身ともに。
「二人とも落ち着いてくれ。赤姫、こっちはリーニア。貴族の娘だ。で、リーニア、こいつは赤姫。田舎者だから言葉遣いが少し変なんだ。多めに見てやってくれ」
「田舎者とはなんじゃ!儂の領民のくせに!」
「領民?」
「何するんじゃ!」
俺はこれ以上喋らせまいと赤姫の頭を鷲掴みにし、軽く力を込めた。こいつには教育が必要だな。
「白丸」
「そんな・・・」
赤姫を黙らせた俺は後のことを白丸に任せることにした。こいつは俺の言葉より白丸の言うことを聞きそうだからな。
困ったような様子の白丸に念話で指令を送りつつ、俺はリーニアに対して赤姫の言葉を誤魔化しにかかる。
結果、リーニアの中では赤姫がかなりかわいそうなやつということになってしまった。
「・・・苦労したのですね、赤姫ちゃん」
「ということで、当分赤姫との同行を許してくれないか?」
「そういうことでしたら、わかりましたわ」
「赤姫もわかったか?仲良くするんだぞ」
「・・・」
白丸から一通りの説教を受けた赤姫はもう厄介なことを言わなくなった。
しかし、白丸と本当に仲がいいな。いや、「一方的に」か?
まあそれはともかく、これでひとまず安心だな。
というか、俺たちはここで何をしていたんだったか・・・
赤姫の不意な出現で今日の目的をすっかり忘れてしまっていた俺は、鉱石掘りに難航していたことをようやく思い出した。
えらく足止めをくらったものだ。もうすっかりお昼だな・・・
「鉱石探しの前に、昼ご飯をなんとかするか」
「そうですわね」
「「ヒルゴハン」とはなんじゃ?」
・・・そんなことも知らないのか。リーニアが呆然としているじゃないか。
こいつは人間と話す前に人間界の常識を身につける必要があるな。小学校にでも通わせてやるか?この見た目なら問題あるまい。
「儂をあまり子供扱いするなよ」
まだ心を読んでくるのか・・・
それより、どうして赤姫はこんなにも縮んだんだ?リーニアがいない時にでも聞いてみるか・・・
そんなことを考えつつ、俺は地図を取り出し、近くにある街を探した。
「大きな街だと・・・帝都イリンゼンが一番近いか。ここからだと三時間くらいかかるかもしれないが、ここでいいか、リーニア」
「そうですわね。帝都では色々なものが手に入りますし、鉱脈についての情報が手に入るかもしれませんわ」
「決まりだな」
俺は早速『ゲート』を出現させ、黒馬を呼び出した。赤姫もいるが、一頭で大丈夫だろう。
その黒馬を見た赤姫はなぜか不思議そうな表情を見せる。お前の馬だろ?
「どうして剣夜が儂の魔獣を召喚できるんじゃ?」
「・・・」
「なんじゃ・・・仕方ないのう」
俺が睨むと、赤姫はそれ以上余計なことを言わなくなった。油断しているとこいつはすぐにとんでもないことを口走りそうだ。
「赤姫は俺の前に、リーニアは俺の後ろでいいな」
俺の言葉通り赤姫とリーニアは黒馬に飛び乗った。
赤姫の格好でちゃんと乗れるのか心配になったが、足が短いためあまり関係なかった。
二人が乗ったことを確認し、早速黒馬を飛翔させると、赤姫はメリーゴーランドに初めて乗った子供のようにはしゃぎ始める。
一方のリーニアはその赤姫に羨望四割、嫉妬六割といった眼差しを向けていた。
このメンバーでこの先やっていけるか心配でしょうがない。
「これはこれで楽しいのう。いつもは空を飛んで・・・うーん!」
「剣夜様?」
こいつは本当に・・・俺は赤姫を無理やり黙らせる。
もうこれ以上リーニアに疑いの目を向けられたくないんだ。
さすがに赤姫が苦しそうにしているため、俺は塞いだ手を離した。
「何するんじゃい!」
「悪い。だが、あまり暴れるなよ」
いきなり暴れ出す赤姫をなだめることに辟易しながらも、俺たちは三時間の飛行においてことなきを得た。
ただその間、リーニアからの質問攻めにはかなり参ったが・・・
赤姫の話し相手を探しに来たというのに、俺ばかりが喋ってどうする・・・
ここまで読んでいただきありがとうございました。
これにて
「第二章 芳しき乙女たち」
の完結となります。
引き続き第三章をお楽しみください。




