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地獄門使いの異邦人〈エトランジェ〉  作者: 織田昌内
第二章 芳しき乙女たち
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小さな再会(四)

「元に戻りませんわね・・・」


次の目的地へと向かう途中、俺たちは急に黒くなったコートについて話し合った。


エイアブさんが言うには、このコートは白い『聖遺物』を餌としていたクモから取り出した糸によって編まれたらしい。


もしかしたらこのコートにも白い『聖遺物』と同じ効果があるのではないかと当初思われていたが、そもそも白色魔法については分からないことが多く、どうにも判然としないようだ。


リーニアに白色魔法が使えるか聞いたところ、『ピュリフィケーション』という魔法が使えるそうだが、その効果というのも、“空気を綺麗にしたような感じになる”というかなり微妙な魔法であった。


俺も試しに聖文を唱えてみたが、変化があったのかどうかがまずわからない。


ついでに黒色魔法についても聞いてみたが、これにいたっては魔法が存在するのかも怪しく、リーニアは黒い『聖遺物』の実物を見たことがないらしい。


結局のところ、このコートについては何もわからないということで話が終わってしまい、俺たちは次に、今日の昼飯をどうするかといういたって平凡な話題へと移行した。


「今向かってる場所の近くに街があるかもしれないし、最悪カヴァルーナ帝国の都まで行けば手に入るだろ」


「言っていただければ私が作りましたのに」


貴族のお嬢様に料理ができるのかとかなり失礼な疑問が浮かんだが、リーニアはセルマさんから教えてもらっているため、それなりに得意だと言う。


そういえば、セルマさんの料理はかなりうまかったな。リーニアは掃除にも手馴れていたし、オルドックス家の女性は家庭的のようだ。


飛び立ってからおよそ一時間、黒馬は国境を超え、ようやくカヴァルーナ帝国北方の高山地帯に到着した。


黒馬から降りた俺たちは早速『聖遺物』が見つかりそうな鉱山を探すことにした。いっそ『テクトニズム』で片っ端から掘り起こしてしまおうと俺は考えたのだが、リーニアにあっさり反対されてしまった。


そんなことをしたら周囲の生態を破壊しかねないからだという。15歳の少女に叱られてしまった・・・


仕方なく、俺たちは地道に鉱石が掘り起こせそうな場所を探すことにしたのだが・・・


「このやり方では不可能じゃないか?」


「そうですわね・・・」


他の傭兵は一体どのようにして『聖遺物』を掘り起こしているのだろうか。そもそも、この仕事は一人で行うものなのか?


こんな時に役立つ魔獣はいないのだろうかと頭の中でモグラのような生物を想像していると、隣を歩くリーニアが急に俺の頭上を指差した。


「剣夜様、黒い扉が・・・」


モグラを呼び出せたのか?


歩みを止めつつ見上げると、暗黒に染まった『ゲート』が静かに開いたのだが・・・


「ぎゃっ!」


「おっと」


『ゲート』から現れたのはなんと小さな女の子であった。


顔面から突っ込んできた小さな体を俺は反射的にキャッチする。


少女の華奢な体は本当に中身が詰まっているのかが甚だ疑問になるほど軽く、まるで鳥の羽を抱えているような感触だった。


漆黒艶めく長い髪は一本たりとも乱れておらず、肌のなんたる白いことときたら、これは人形なのではないかとも思えたが、俺は一瞬にしてこの少女の正体を見破った。


着ている服が巫女装束なのだから・・・


「もしかして、赤姫か?」


「おう、剣夜か!元気にやっておったか」


「俺は元気だが、それよりも、どうしてこんな登場の仕方なんだ?というか、どうして縮んだ?」


「それがのう・・・」


「あの、剣夜様?」


「・・・ああ、悪い」


赤姫に意識を向け過ぎていて、隣で困惑した表情を見せながら話しかけてくるリーニアへの反応が遅れてしまった。


「その子は一体・・・」


「こいつは、その・・・」


「おい、剣夜。今は儂と話しておるのじゃぞ」


リーニアに向けた俺の顔は、少女のものとは思えないほどの力で再び正面やや下側に向けさせられた。


頬を軽く膨らませるそのあどけない様子に、俺の鼓動はわずかに加速する。


そういえば、赤姫の素顔を見るのは初めてだ。こんなにも可愛らしいのに、どうして隠していたんだ?


いや、成長すれば人の骨格は変化して・・・


「痛い、痛い」


「今良からぬことを想像しおったな!」


「剣夜様!」


さすがに堪忍袋の緒が切れてしまったようで、リーニアは俺の腕を強く掴んで揺さぶってくる。


二人の少女に頬をつねられ、体を揺さぶられる。これは一体なんの仕打ちだというのだろうか・・・


「赤姫はとりあえず立ってくれないか?」


「いやじゃ!儂は疲れているからのう」


「・・・リーニア、こいつはなんというか、知り合いの少女だ」


「知り合いですか・・・それより、その子はどこの出身なのですか?全く聞いたことがない言語でしたわ」


なんとも白々しい俺に懐疑的な目を向けるリーニアは意外な質問をしてきた。言葉がわからない、だと・・・


「俺の言葉がわからないのか?」


「いえ。今の言葉はわかるのですが、剣夜様がその子と話していた言葉の方がわかりませんでしたわ」


「おい、剣夜。こやつはさっきからなんと言っておるのじゃ?」


「赤姫もわからないのか?」

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