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地獄門使いの異邦人〈エトランジェ〉  作者: 織田昌内
第二章 芳しき乙女たち
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芳しき乙女たち(二)

「話?何かあったのか?」


「行けばわかると思いますよ」


まあ、その通りだな。


俺は朝食を早々に終わらせ、王城に向かう準備をする。


準備といっても特にすることはなかったのだが、そんな俺の姿を見たシルヴィーはある提案をしてきた。


「前々から思っていたのですが、剣夜さんのその格好で王城内を歩くのはいささか目立ってしまいますね。まだ時間にも余裕がありますし、服を買いに行きませんか?」


「確かにこの格好では悪目立ちするか。それに、武器一つないというのはな・・・」


「でしたら早速行きましょう!わたくしの知り合いの店がありますので、そこに行けば良いものがきっと手に入ると思います。お金のことは心配しないでください」


「いや、そういうわけには・・・」


「わたくしは剣夜さんに命を救っていただいた恩があります。ですから気にしないでください。ただわたくしが剣夜さんに贈り物をしたいのです」


女の子にお金を払わせることに多少の後ろめたさを感じてしまうが、ここはありがたく受け取っておくことにしよう。


俺にほとんど金がないのは確かだし、それにシルヴィーはなかなか頑固だからな。


いつか彼女に数倍のお返しをすればいいだろう。


そんなことを考えていると、リーニアとシルヴィーが何かを言い合い始めた。


どうやら公然と王都内を歩き回れるようになったリーニアも俺のためにプレゼントを買いに行きたいらしい。


お返しが増えそうだ・・・



「着きましたよ」


シルヴィーに案内され、俺たちは王城付近の建物の前で立ち止まった。


ガラス張りの扉を開け、中に入ったシルヴィーは一人の男性に出迎えられた。


「いらっしゃいませシルヴィー様」


「こんにちはエイアブさん。今日は彼に見合った武器などの装備を探しにきました」


この人は確か俺たちが検問を通るのに協力してくれた商人だったか。店も構えていたのか。


とりあえず俺は軽い自己紹介をしつつ、エイアブさんに勧められた商品を見ていく。


途中、エイアブさんが教えてくれたのだが、シルヴィーは自分の発明品をエイアブさんに買い取ってもらっているらしい。


そしてエイアブさんは各国を回ってシルヴィーの発明品を売ったり、珍しい品を見つけては彼女に紹介したりしているらしい。


驚いたことにシルヴィーの作る、魔道具と呼ばれる商品は大変売れ行きがいいようだ。


「「魔道具」ってのはなんだ?」


「魔道具を見たことがありませんか?基本的に『聖遺物』を利用して作られた道具はすべて魔道具と呼ばれます。例えば・・・これは黄色い『聖遺物』を使うことで正面に光をあてることができる道具です」


シルヴィーはそう言いながら、店に置いてあった懐中電灯のようなものを見せてくれた。


取っ手の部分には黄色い石がはめ込まれており、そこを握りながらシルヴィーが聖文を唱えると、その魔道具は先の部分から光をまっすぐに放った。


「確かに便利だな。だが、結局これは魔法なんだろ?魔法が使えない人には扱えないんじゃないか?」


「シルヴィー様の商品が優れているのは、まさにその問題を緩和したところにあるのです。微弱の魔法しか使えない者でも、魔道具を使うことで本来以上の効果を得ることができます。シルヴィー様がお作りになったこの魔道具は『ルーチェ』の光をすべて一つの方向に向けることで光力を増しているのです。洞窟や遺跡を探検する時に重宝されます」


「これをシルヴィーが作ったのか。それはすごいな」


「えへへっ・・・」


シルヴィーを褒めながら、俺は無意識のうちに彼女の頭を撫でていた。


お姫様に対して失礼かと思ったが、予想に反してかなり喜んでくれた様子なのでよしとしておこう。


「気持ちいです・・・」


「羨ましいですわ・・・」


物欲しげな目でこちらをじっと見つめてきたリーニアに悪いと思い、俺はシルヴィーの頭からそっと手を離し、装備探しを再開した。


しばらく陳列された商品を一つ一つ眺めていると、店の奥から俺を呼ぶシルヴィーの声が聞こえた。


「剣夜さん!このコートはどうでしょう。白くてとっても綺麗ですよ」


「シルヴィー様はお目が高いですね。このコートは白い『聖遺物』を食料とするシロガネグモから取り出した糸によって編まれたというかなりの貴重品です。ただ、試しに魔法が使える方々にこれを着て聖文を唱えてもらったのですが、魔法は一切発動しませんでした。おそらく、この服には『聖遺物』と同じ効果は見られないと思われます」


エイアブさんの説明を聞いて、シルヴィーは少しだけ残念そうな表情を浮かべる。


「それでもこれはこれで見た目が綺麗だしな。それにシルヴィーが目をつけたんだ。俺はこれをもらうことにするよ」


「剣夜さん・・・よろしいのですか?」


不安げな表情を浮かべるシルヴィーをなだめながら、俺はエイアブさんからそのコートを受け取った。


所々がキラキラと光る純白のコートを俺は早速羽織り、感触を確かめた。


「悪くないな」


「お似合いですわ、剣夜様!」


「ありがとうリーニア。後は武器か・・・できれば直剣がいいんだが」


そう言いながら並べられた武器を眺めていると、今度はリーニアが俺に合いそうな武器を見つけてくれた。


「これはいかがでしょう?剣夜様にぴったりだと思いますわ」


そう言ってリーニアが指し示したのは、飾られているとも放置されているとも言えるような一つポツンと店の隅に置かれたロングソードだった。


刀身は他のものに比べて格段と銀色に輝いており、かなりの業物であるように感じられる。


さらによく見ると、柄の部分には何か紋章のようなものが彫られていた。


「確かに、これはいいかもしれないな」


「そうですわよね!」


「あの・・・その剣には少々問題がありまして。私も精巧に作られた一品だと思い即座に手に入れたのですが、その剣をしばらく握っていると段々と手が焼けるように熱くなっていくんですよ。いくら手袋をはめたり、取っ手の部分を革で覆ったりしても変わりませんでした」


なんだそれは。魔法か何かか?


しかし試してみないことには判断のつけようがないため、俺はエイアブさんの確認を取ってからその剣を握った。


しっくりくるような重量感に安堵しつつ、俺は剣を上から振り下ろして感触を確かめた。


「大丈夫ですか、剣夜様?」


「問題ないな。俺は気に入ったんだが」


「でしたら、その剣についてはお代は結構です。もともと売り物になるとは思っていませんでしたから」


なんだか悪いような気もしたが、彼がそう言うのであれば仕方がない。


俺は早速鞘を背中に装備してからその剣をしまい、買い物をここらで切り上げることにした。


このコートの代金はすでにシルヴィーが支払っていたようだが、こっそりエイアブさんにその値段を聞いたところ、なんと金貨25枚もしたようだ。


日本円で一体いくらになるのやら。


どこにそんな大量の貨幣を持っていたのか疑問に思ったが、どうやらこの国では紙幣も使われているようだ。


しかしこんな高価なプレゼントをもらってしまうのはさすがに・・・


「剣夜様。私からの贈り物はまたの機会にきっちりとさせていただきますわ」


「リーニアはこの剣を選んでくれたじゃないか」


「そうですが・・・」


とりたてて値段にこだわる必要もないと思うんだが。


それでもリーニアは気にしてしまうのだろう。


「わかった。楽しみにしてる」


「はい!」


そうして、俺たちはエイアブさんの店を後にした。

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