第一章 始まりの日 第二話 本部
空を飛ぶ純白のロボットは滞空するのをやめ、ゆっくりと降りてきた。そして胸部から機械音がすると装甲が開いた。
緊張の一瞬である。
「大丈夫でしたか?まだこの地域に生き残りがいたとは、驚きました。」
中から顔を覗かせたのは、クールな感じの金髪長身美女だった。驚いたといった彼女の表情に変化は少ない。蜘蛛型を撃破したところ、大丈夫か聞いてくるところからして、敵ではないのだろう。
出雲が呆けていると再び彼女が口を開いた。
「どうかされましたか?まさか怪我でもあるのでしょうか。手当をするにもまずはここを離れましょう。まずは私の機甲人の手に乗って下さい。本部へお連れします。」
「ちょちょっとまっ─うおおおおおお。」
一気に話すと機内へと戻り、おもむろに機甲人とやらで出雲を掴んできた。乗るんじゃないの!とか思ったが、ロボットはそのまま出雲を風から守るように抱えて飛び始めた。
「高いいいいいい─ぅぅ」
出雲は朝からの異常事態の連続と空中での高速移動によって意識を失った。
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(………知らない天井。俺は気絶してたのか。)
目を覚ますとそこは、独特の臭いをした白い部屋、所謂病室であった。
ただしとても近未来的な作りであり、現代日本の病室ではないと断言できる。
それはさて置き、腕には点滴の針が刺さり、体には心電図の電極パッドが張り付けてある。
身体がとても気怠く、起きる気力もツッコむ気力も沸いてこない。
そのまま天井をぼーっと見つめながら、自身の置かれた異様な状況を振り返ってみようと思う。
まずは朝だ。死ぬほどリアルな死ぬ夢を見た。感覚や記憶は鮮明に残っており、夢ではなかったのではと思えるほどだ。
次に、その夢から目が覚めると家の周りが瓦礫の山になってしまっていた。家の周りだけじゃない。これまでに見た限りでは、瓦礫の無い場所なんてなかった。
その後は変な機械が襲いかかってきた。虫の形をした兵器が空を飛び地を這い、自分に襲いかかってきた。しかもガトリングのようなものをぶっ放しながら。あの恐怖は思い出すだけでちびってしまいそうだ。断じてあの時にちびったわけではない。そんなわけない、うん。
そして極めつけは、空飛ぶロボットが蜘蛛型を一瞬で倒し窮地を救ってくれた。そして中からは美女…。
改めて思い返すとありえなさが限界突破していた。
明らかに現実ではない。しかし、紛れもない現実である。夢ではない。
思わずため息が漏れる。いっそパニックになってしまった方が楽なのだろうか。だが、出来事が大きすぎて実感が湧いてこないのだ。
─シュイン
突然扉が開き例の彼女が入ってきた。
「目が覚めましたか。」
改めて助けてくれた彼女を見ると、やはり見れば見るほどの美少女である。
高い慎重にスラッとした体つきに、緑の瞳と綺麗な金髪、そして落ち着いた雰囲気だ。
つい見惚れてしまうな。
「どうかされたのでしょうか。私に何かおかしなところでも?」
いつまでも黙ったまま見ている出雲に、おかしなところがあると思ったのか、自分の身体をキョロキョロと見回している。
みとれていただけでおかしなところはないので、見ているこっちからすれば、ただただ可愛らしい仕草を披露してくれているだけになっている。
どうも彼女は体が先に動いてしまう性分のようだ。
「大丈夫ですよ。起きたばかりでぼーっとしちゃってて。」
「そうですか。検査では異常はなかったのですが。…脈拍が早いようですが本当に大丈夫なのですか?」
「だ、大丈夫です!それよりも助けてくれてありがとうございました。あなたが来てくれてなかったら死んじゃってたでしょうから。」
彼女に見惚れていたことを誤魔化しながら、助けてもらった感謝を伝える。
彼女は命の恩人と言うやつである。
どんなに感謝しても感謝しきれない。
そして同時に疑問もぶつける。
「ところであの機械?化け物?は、一体なんなんですか?」
「カテゴリーAですが。」
カテゴリーA?
「まさかご存じない訳ではないでしょう?」
「あー、いや、御存じないです…。」
驚いた彼女の目が痛い。
仕方ないじゃないか。
朝から訳の分からないことばかりなんだ。
「アレは未確認生命体やエイリアンと呼ばれる存在、通称カテゴリーA。全世界共通の敵です。本当にご存じないのですか?」
彼女はさも当然だと言わんばかりの様子である。
いや、当然のことなのだろう。
彼女は嘘をついているようでもないし、嘘を吐く必要もない。
自分の状況を話すべきか迷う。
信じてもらえないだろうし、おかしなやつとも思われるかもしれない。
しかし、何も知らないままではいられないのも事実。
そのためには自分の置かれた状況を伝えるしかないだろう。
意を決して出雲は話し始める。
「俺はカテゴリーAもロボットも知りませんし....世界がどんな状況下も分からないんです。」
朝から頭のどこかでは気づいていた事実を口にする。
怖い。知りたくない。気づきたくない。
それでも知らないといけない。
気付かないといけない。
「俺は多分───違う世界から、来ました。」
沈黙がその場を支配し一秒一秒が長く感じる。
ああ、言ってしまった。
後戻りはできない。
その沈黙を破り、美少女が口を開く。
「そうですか…。やはり…
身体的ではなく精神的な問題がでているようですね。もう一度精密検査をしましょう。そのあと精神科医を紹介しますので。安心してください。精神科医も一流です。」
「違います、違いますから!本当なんです!」
一遍に書けるほどの能力は無いので徐々に追加していきます。




