必要な嘘
翌朝。
4時。
染井の事務所。
仮眠室。
簡易ソファベッド。
染衣「・・」 目を覚まし、横を見る。
康介「・・」 隣りで寝ている。
染衣「〈クス〉」 康介の頬に〈プニ〉指をそっと立てる。
康介「・・」 覚まさない。
染衣「〈クスクス〉」 康介の鼻の先に〈プニプニ〉指を立てる。
康介「うーん・・むにゃむにゃ」〈カリカリ〉 鼻をかく。
染衣「〈クスクス〉」
康介「・・」 起きたようだ。目を開けた。
染衣「・・おはよう」
康介「・・おはよう・・」
染衣「〈クスクス〉」
康介「・・何?・・何だよ?」 笑いながら訊く。
染衣「だあって・・〈クスクス〉何か・・何か・・ごめん・・あたし・・分かんない・・」
うつ伏せになり顔をそっぽに向ける。
康介「・・後悔してる?俺で」
染衣「違う!」 勢い良く起き上がり、康介を見る。
康介「・・じゃ何?何で泣くの?」
染衣「分かんない、説明出来ない、自分でも分かんない、でも絶対後悔とかそんなマイナスな感情じゃない」
康介「・・そうか・・良かった」 手を伸ばし、頬の涙を指で拭う。
染衣「・・私・・初めてだったのに・・血、あんまり出なかったね」
康介「・・そういう人もいるらしいよ」
染衣「そうなんだ」
康介「これから宜しく」
染衣「こちらこそ、よろしくお願いします」
染衣は着替えながら言う。
染衣「キッチンに簡単な材料あったから、朝食食べてく?」
康介「頂こうかな」
染衣「分かった。じゃあ作る」 部屋から出て行った。
布団の中。
康介「・・」 静かなまだ暗い朝。
康介「(後悔してるのは俺の方か?・・いや・・マイナスな感情は全くない、少なくても・・そう・・何か・・心が満たされてる・・そんな・・何だコレ?・・初めて経験するなあ・・モニカを作った時の感情と似てるって言えば似てるけど・・ん~~何か違うなあ・・初めて味わう感情だ・・敗北感にも近いような・・悔しいような・・嬉しいような・・恥ずかしいような・・これが恋の感情?おお!これが恋の感情ってやつなのか?きっとそうだ!これが恋してるってやつなのか!?だとしたら・・)」
立ち上がる。
康介「これが・・恋・・なんてこった・・今まで恋愛なんて正直馬鹿にしてたが・・これは・・」
歩き回る。
康介「・・」 歩き回る。
暫く部屋を歩き回って・・立ち止まった。
康介「(ヤバイ!!)」 〈カ!〉目を見開き、膝をついた。
康介「(え?何コレ?は?何コレ?ヤバイ!めっちゃ恥ずかしい!ええ?何か今更何か今更何か恥ずかしいいいいい!)」
また歩き回る。
康介「(何で?は?どうした康介?は?何が?落ち着け!とにかく!状況を整理するんだ!いいか?俺は泣く子も黙るメシア機関のボスだぞ?どんな悪党も俺の前では操り人形!情報操作で人形同然!そんな俺が・・そんな俺が・・昨日・・あんな・・あんな間抜けな声で・・あんな間抜けな格好をして・・あんな顔で俺のを・・俺のを・・)」
康介はまた膝をついた。
康介「(あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”)」 肘を床につき、頭を抱える。
康介「(やばいやばいやばいやばいいいい!!なんて事してしまったんだああああ!嫌、だってあんな私覚悟してますみたいな言い方されたら、誰だってえええ・・くそおお・・恥ずかしすぎだろおお!?何だコレ?ナニコレ?はあ?ナニコレええええ?世の中の人間はどうして平然とあんな恥ずかしい真似をいとも簡単にできるんだ?馬鹿だからか?馬鹿だからか?馬鹿だからなのかああ?それとも・・)」
窓を見る。
康介「(・・俺がおかしいのか?)」
壁を見る。
康介「(・・よくよく考えたら、そうなのかも・・そうなのかも・・そ・・なの・・かも)」
また歩き回る。
また膝をつく。
康介「(駄目だあああああああ、いくら説得しようとしても駄目だあああああ、やばい死ねる!恥ずかしい!死ねる!何だコレ!今更かよ!これが賢者タイムか?最中は全然だったのにいいいいいい、くっそおおお、やばいやばいまともに顔が見れない・・、俺が!?この俺が!?メシア機関最強のこの俺があ!?あんなあんな女一人に・・あんな女ひと・・一人に・・一人に・・一人に・・)」 色々思い出す。
康介「(あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”何故だあああ、何でこうも乱れてんだ?冷静になれない!心臓がちぎれる!何で?は?何で?頭がパンクする!冷静になればなる程パンクする!誰か助けろおおおおお)」
染井の足音。
康介「!!」
染衣「簡単なやつ出来たよう・・どうぞ!」 お盆で運んできた。
康介「・・」 布団にすっぽり入っている。
染衣「・・?お~い?持ってきたよ?」
康介「・・う・・うん分かった・・食べるから・・その・・その・・部屋から出ててくんない?」
染衣「・・え?何で?一緒に食べようよ?」
康介「いや・・あの・・その・・顔が・・」
染衣「・・?は?」
康介「その・・顔が・・見れない・・」
〈シーーーーーーーーーーーーーーーーーン〉
染衣「・・え?どういう意味?嫌いになったの?冷静になったら嫌いになったの?」
康介「違うよ!?」 勢い良く布団から出る。
康介「!!」
染衣「・・」 泣いていた。
康介「違うんだマイナスはないんだ・・ただ・」
染衣「・・グス・・ただ?」
康介「・・ただ・・その・・昨日の夜を思い出すだけで・・胸が張り裂けそうになる程・・は・・恥ずかしくて・・人前で・・あんな・・あんなこ、声、とか・・恥ずかしくて・・朝起きた時は思考がぼんやりしてて・・はっきりしてきた途端に・・ぶわああって来たんだ・・」
染衣「・・」
康介「だ・・だから・・君を嫌いになったとか、そういうんじゃなくて・・ただ・・初めてだったからなのかも知れない・・初めて大切な人が出来たから・・なのかも・・」
染衣「・・」〈ガバ〉 抱きついた。
康介「お!?おおうふ!?」〈ドサ〉 ベッドの上に押し倒された。
染衣「可愛い・・女の子みたいに初心なんだね康ちゃん・・」
康介「・・俺も驚いてる・・びっくりだよ・・俺が・・この俺が・・」
染衣「・・大丈夫だよ・・すぐに慣れるよ・・」
康介「・・ん・・そうだね・・慣れるよね・・」
染衣「そうだよ・・慣れるよ・・」
いい匂いを嗅ぎながら、康介は思った。
もしかしたら、世の中の人間達は自分が思っている以上に強いのかもしれないと。
もしかしたら、今から知っていく感情は、自分がこれまで経験してきたモノとは全く異質な可能性がると。
自分が激変してしまう可能性を考慮しなければならない、そう思った。
康介「・・はは・・お腹空いた」
染衣「・・ふふ・・目玉焼き好き?卵焼き派?」
康介「卵焼き派かな」
〈ギシ〉 2人、起き上がる。
染衣「じゃあん、卵焼きで~す」 料理を見せる。
康介「おお~美味しそう!」
染衣「ど~ぞ!召し上がれ!」
康介「い、いただきます!〈パク、モグモグ〉」
染衣「ど、どう?」
康介「ん~!美味しい!これ出汁巻き?」
染衣「そう!良かったあ!、そうよ、出汁巻き卵焼き、出汁はね~・・」
康介「ふんふん?〈パク、モグモグ〉」
こんなに楽しい朝食は久しぶりだった。
康介には両親共にいたが、実際、かなり疎まれていた。
それは幼い康介が怖かったからだ。
両親は出来るだけ康介に何も教えようとしなかった。
何も見せようとしなかった。
それが逆に康介の人間的感情の育成を阻害させた。
平気で秘密を暴露してしまい、手当たり次第に論理による爆弾を周囲に撒き散らした。
周囲の人々は康介を恐れ、康介の両親は近所から迫害された。
泣きながら康介にお願いする母親。
母親「康介~お願いよおお、もう、もう、秘密を暴くの止めて頂戴い!ね?」
康介「?何でですか?」
母親「誰にも知られたくない秘密を皆に知られたら嫌でしょう?それを皆にしてるんだよ?」
康介「僕、秘密ないですもん」
母親「もしあったら嫌でしょう?もう、止めて、皆傷ついてるのよ?あなたのせいで」
康介「・・ごめんなさい、それはそれは・・」 反省等微塵もしていなかった。
自業自得。
この言葉を知っていたから、罪悪感など少しも湧かなかった。
その2日後、友達の母親の浮気を暴露してしまった事が止めとなった。
この時、康介は初めて、人の恐ろしさを実感する。
本当に殺る人は最後まで殺るんだと思い知った。
それが止めとなり、家は近所から完全に孤立。
回覧板は勿論、きちんとゴミを出した筈なのに未回収。
玄関前に撒き散らされた。
母親はノイローゼになり、倒れ、入院。
父親は仕事で忙しく、いつも帰宅は深夜。
父親が家に帰ってこなくなったのはそれから暫くしてからだった。
それからは児童福祉施設から小学校に通った。
最初は天才だ、神童だと言われた。
しかし、それも言葉がすらすら喋れるようになるまでだった。
それからはまるで。
康介を化物を見るような目で、両親は見ていた。
父親の帰りが遅い理由。
母親の誕生日。
結婚記念日。
残業。
寄り道。
ずばずば言い当てた。
サプライズにならなかった。
母親は嘘、演技が苦手だったから。
事前に察知されたのだと父親はがっかりした。
そしてそれは康介が原因だとも分かっていた。
幼稚園の保母。
両親。
これらは毎日康介と会う。
人は何故ペットを可愛いと思うのか?
それは知能が低いからである。
猫や犬が喋れたらどう思うのだろう?
ある日突然に、喧嘩して、お前殺すぞと言われたらどう思うだろう。
人間は喧嘩になっても苦労なく勝てる相手しか、命の危険を全く感じない相手にしか、精神的に差の開きがある相手しか可愛いとは思えない。
その安全性を信頼性という題目に置き換えて。
康介の例はまさしくそれだった。
幼稚園。
保母との会話。
《わいわいがやがや》
保母「康介君・・」
康介「ん~?」
保母「お絵かき皆してるんだよ?康介君もやろうよ~?」
康介「やだ」
保母「どうして?」
康介「なんとなく」
保母「じゃあ・・何で算数やってるの?」
康介「楽しい」
保母「楽しいの?」
康介「うん」
保母「そっかあ・・康介君は頭良いもんね~」
康介「あなたよりはね」
保母「〈ピク〉・・でも・・まだ掛け算とかは分かんないでしょう?」
康介「まだね?でもすぐだよ」
保母「まだなら、まだまだお姉さんの方が上だよ~?」
康介「・・はあ・・だから?何?」
保母「〈ピクピク〉だから、少しはお姉さんのいう事聞いて欲しいな~?」
康介「うんうん、分かった分かった~」 算数を続ける。
保母「・・」
康介「・・」 続ける。
保母「・・はあ・・」 ため息、去る。
康介「はあ・・」 保母に聞こえるようにため息返し。
保母は一瞬立ち止まったが、振り向かず、去った。
保母達の康介への評判はすぐに広まった。
保母2人が康介の会話を廊下でしていた。
保母1「でね~その康介って奴がめっちゃ生意気でさ~」
保母2「分かる!あの糞ガキ~ってなる~」
暫く高い笑い声も混じり、話し込んでいた2人。
康介「ね~?」
保母1、2『《ビク!》』 驚く。
康介「何のお話~?」
保母1「うっさいわね!あっちいけよ!」
保母2「そうよ!今大人の話してんのよ!あっち行け糞ガキ!」
康介「・・」 動かない。
保母1「あっち行けって・・言ってんだろうがあ!」 勢いをつけ、前のめりになり叫ぶ」
康介「〈ビク〉」 少し後ずさる。
保母2「ひゅう!びびってる~」
保母1「大人舐めんなよ~チビガキ~糞ガキ~」
康介「・・」 黙って去った。
保母1「へん!見たあいつの顔!うけんだけど!」
保母2「あ~はっはっはっはまじざまあ!あたしも今度やってやろ~」
保母1「やれやれ!舐めてんだよ!ビシ!っと言ってやんなきゃ!」
保母2「だよね~」
その翌日、2人は首になった。
康介は園長にコピーを渡したのだ。録画の。
園長は脅され、結果、2人は首になった。
それから康介の支配が始まった。
大人は誰も康介には逆らえなくなった。
恐怖に包まれた園内は、清く、正しくがモットーの保母さん達の演技により、暫くは保たれたが、辞めていく保母が続出。
園長は泣きながら土下座し、康介の両親に相談。
相談内容は、退園して欲しい、だった。
家に帰り父親は康介を殴ろうとしたがー。
康介「殴れば警察に電話する、痣も見せる」
この言葉に両親は唖然。
最早、法律をも味方につけたこの悪魔に、両親は手も足も出なかった。
それからは他人のように扱われた。
康介も他人のように接した。
そして自業自得の名目で推理しまくり、些細な悪事も長野県に移り住むまで暴露して回った。
誰々がいじめを行った、その証拠、アリバイ。
誰々が、財布を盗んだ、その証拠、動機、アリバイ。
誰々が、その噂を流した。その動機、状況証拠。
皆最初は感心した。
凄いと思った。
しかし、凄すぎた。
近寄れなくなった。
恐いのだ。
怖すぎた。
次第に康介はボッチになり、いじめられるようになった。
犯人は隠れていじめなかった。
クラスを先導し、全体を使い、堂々といじめを行ってきた。
そして、学校全体が、それを握り潰していた。
ここで康介は権力の重要さを学んだ。
皮肉な事に、皆が康介を追い込む程に、康介は学んでいった。
人間の愚かさ、先導のしやすさ、脆さ、孤独に対する免疫のなさを。
康介は楽しんでいた。
観察していた。
そして図書室学習を許可されるきっかけになった事件が起こる。
生徒達がだんだん仲間割れし始めたのだ。
それは康介のクラスに留まらなかった。
別のクラス、学年、教師関係でもトラブルが続発。
校長は悩んだ。
そして、ある筋から優秀な探偵を雇い、調査を依頼した。
結果はたった一人の人間のしわざだった。
そう、康介だった。
夕方。
下校時刻になり、下駄箱に何かを入れる康介を写真に収めた。
探偵、校長、福祉長、康介と同時面談を行った。
写真を康介に見せた。
証拠にならないと康介は言った。
写真には康介が下駄箱に何かを入れてる風にしか見えず、手元は遠過ぎて写ってなかったからだった。
探偵「問題はそこじゃない、頭が良い君なら解る筈だ、問題は、最近起きてる一連の騒動や、人間関係問題は君が原因だと、我々が確信しているという事だ、証拠があろうがなかろうが、関係ない、違うかな?」
康介「・・さあ?」
校長「・・何が望みだ?言ってみたまえ!」
皆『・・』
康介「へえ・・何で望みを聞いてくれるのかは分かんないけど、まあ、いっか!じゃあ、もう僕に構うな」
怖く、低く言う。
康介「うんざりなんだよ!お前ら馬鹿の相手は!」
皆『!!』
康介「僕は静かに勉強したいだけだ!放っといてくれ!馬鹿は馬鹿らしく馬鹿共と馬鹿みたいな生活送ってろ!俺にそれを押し付けんなああああああああ!!」
皆『・・』 圧倒される。
康介「もっとめちゃめちゃにしてやろうか?」
皆『!!』
皆『・・』
康介「出来ないとでも?」
探偵「それは自白かな?」
康介「あんたの言葉だ、関係ないだろ?」
探偵「・・まあ・・そうだね」
校長「・・分かった・・一人学習を許可しよう」
皆『!・・』
探偵「それでいいのかい?」
康介「教室は嫌だ、馬鹿な空間に居たくない、図書室が良い、本の匂いが好きなんだ」
校長「分かった」
皆『!』
校長「ただし、もう・・大人しくしててくれよ?」
康介「ちょっかい出さなければ何もしない、馬鹿が約束守れるとは思ってないけどね」
面談終了。
翌日。
校長は学校中におふれを出した。
二度と康介君の邪魔をしない事。
朝、9時から15時までは図書室には近づかない事。
しかし、それは逆効果だった。
康介は一人で図書室で勉強していたら、上級生達が面白がって、康介をからかいに来たのだ。
結果、康介は殴られ、鼻血が出た。
校長がそれを知ったのは事件が起こった後だった。
その康介を殴った生徒が、教室で別の生徒を派手に殴り、大怪我をさせたのだ。
原因を尋ねると以下の答えが返ってきた。
上級生徒「だって・・あいつが俺の悪口を皆に言いふらしてたから・・」
確認してみると。
被害者「だって、最初に悪口言ったのはあいつの方だし」
それは本人から聞いたのか?と問うと。
被害者「ううん?別の奴から聞いた」
その別の奴に訊くとまた別の奴と答えた。
そしてその筋を辿っても一周するだけで、少なくても4人、嘘をついているのは明らかだった。
しかし、一周する為、結局誰が口裏を合わせているのかは分からず、調査はストップした。
そこに康介はいなかった。
教師達、校長は間違いなく康介が絡んでいると確信していたが、康介も被害者である為、決めつけられなかった。
それから時々、康介を襲った、上級生達の不幸は続く。
ある者は不登校に。
ある者は自殺未遂。
ある者は暴力的に。
ある者はいじめの被害者に。
次第に学校中に噂が流れる。
図書室に近づいたら呪われる。
お陰で康介の勉強はみるみる捗った。
そしてあの日ー。
迎えが来たのだった。
染衣「どうしたの?卵焼き見つめて?」
康介「うん?・・ううん何でもない・・美味しいよ」
染衣「良かったふふ・・あったかいね」
康介「うん・・あったかい」
康介「(もし・・)」
康介「ん~これも美味しい!(もしも・・染衣さんの秘密を全て知ってしまったら・・自分は彼女を愛せなくなるのだろうか?自業自得として制裁するんだろうか?・・いいや・・多分・・目を瞑るだろう・・過去の・・あの頃の自分に言ってやりたい・・お前は間違ってると)」
昔、罪を各人の目の前に突きつけ回ったあの頃。
自分を認めず、仕掛けてくる相手のプライドを擦り切れるまでいたぶったあの頃。
仕掛けてきたのはお前らだろ?と全て自業自得で潰したあの頃。
今は、思う。
平穏に解決させる事も出来ただろうと。
すまないとは思わない。
思わない、が。
もっと違う道があったのではないのか?と。
康介「染衣蓮さん」
染衣「もう~蓮って呼んで?」
康介「・・蓮」
染衣「なあに?康ちゃん?」
皆が傷つかないように、嘘も必要ではなかったのかと。
康介「俺、蓮に会えて良かった、ありがとう〈ニコ〉」
街に朝日がうっすら滲んできた。