活動
季節、2月。
東京。
若頭「もっと酒持ってきてー」
嬢1「凄~い、若強~い」
若頭「へっへ~、そうだよ~?私は結構お酒強いんで~すよ~」
VIPルームの一角を貸切り、組員をまばらに配置している。
嬢2「若~あたしには~?」
若頭「はいはい、君にもドンペリ~・・3、いや!4本いっちゃう!」
嬢2「やたー!さっすが~嬉しい~!若~ありがとう~私~きゅんってきちゃった~」 腕を組まずに、肩で寄り添う。
嬢1「は~い、どうぞ~」 若にドンペリを注ぐ。
組員1「頭、そろそろ・・」
若頭「ええ~まだいいじゃな~い、ね~?」
嬢1、2『ね~?』
組員1「・・わ、分かりました」
暫く飲んだ後、べろんに酔っ払った若頭と共に、ロイスに乗り込む。
車が発信する。
若頭「例の件、どうだ?」 車に乗り込んだ途端に真顔になった。
組員「は、既に、全部手配済みです、ガサも一昨日済んでます、明日入る事はありません」
若頭「成功したら、警部さんに包渡してやれ」
組員1「へい」
若頭「この取引で魚虎会はもっと上に行く事になる、しっかりやるんだぞ」
組員1「へい!」
車は橋を渡っていた。
若頭「ん?おい・・こっち道あってんのか?」
運転手と助手席の男は無言。
組員1「おい!頭が聞いてー」 〈ス〉助手席の男が右手に何かを握り、こっちに向けた。
組員1「頭!」庇う。
若頭「ちいい!」 懐から拳銃を取り出しー、〈ポロ〉銃が手から落ちた。《プシュ》 透明なシールド展開。 後ろと、前を、遮断した。
組員1「何だ?何か体が・・」
若頭「・・やられた、あの女共・・」
組員2「事故で死んで貰う、安心しろ、ちゃんと死体はある・・先に沈んでるがな」
若頭「馬鹿な?今朝はちゃんと・・いつからだ?」
組員3運転手「あんたが嬢と飲んでる時、トイレに来た奴らを片っ端からね」
若頭「馬鹿な・・確認はした筈だ・・」
組員2「まあ、客として最初は潜ったしな」
組員3「確認しなきゃ~客全員さ」
若頭「くっそ・・」
組員2「じゃ」 スキューバダイビングの装備をつける。
組員3「そういう事で」
若頭「待て!冥土の土産に教えてくれんか?俺は誰にやられたんだ?」
組員2「・・」
組員3「すまんな、俺達も知らないんだ」
若頭「ふ・・そか」
組員1「頭あ・・」
《ドガアアアアアアアアアアアアアアアア!!》 頑丈な車だった。
橋のフェンスを突き破り、《イイイイイイ、ザッパアアアアアアアアアア・・ジャボ・・ブゴ・・》
沈んでいった。
1時間後・・。
寂れた港、の外れ、〈ザバア〉、〈ザバア〉上がる。
崖下に着替えを置いて置いた。
〈SN、SN、E〉 メール送信。
〈ピロリン〉
船場康介の携帯が鳴った。
痩せた、バーコード頭、眼鏡のどこにでもいる、普通のサラリーマン。パジャマ姿。
役職は課長補佐。
年下の課長にこき使われている立場だ。
安いアパートで、レトルトカレーを食べていた。
康介「・・」 メールを打ってる。
〈R〉 送信。
テレビが点いていて、ニュースを見ている。
ストップウォッチを〈カチ〉 押した。
康介「翌朝の3時のニュースかな?」
康介はレトルトカレーを置き、 コーヒー牛乳を飲んだ。
康介「何でこうも・・悪党が多いのかねえ・・」
寝転がり、狭い天井を見た。
康介「明日の株は・・ん~・・医療かな・・」 スマホを見ながら、独り言。
しかし、スマホを覗けば、一社の大型株を1~3億単位で取引していた。
朝、早く家を出た。
満員電車に乗りたくないからいつもこうしてる。
皆俯いて、スマホ、小説、新聞を見ている。
静かだ。
朝、早起き出来るという事は、キチンと身の回りを整理整頓出来ている人達という事だ。
康介はこの品が良い雰囲気が気に入っていた。
出社。
警備員に挨拶を済ませ、エレベーターに乗る。
〈キンコーン〉 36階に着いた。
海際の47階建ての高層ビル、そこが船場康介 (41) の仕事場だった。
ここは世界的大企業、RCC本社。東京湾に位置する、造船所だった。
まだ若干二十のコネ社員の上司に今日も怒られている、康介。
しかし、取引会社の部品発注に問題が生じた時に、康介が上手く対応した事があってから、社長に見初められている為、職場の皆からは信頼が厚い。
康介がミスしてる訳でもないのに、コネはそれが気に食わないらしい。
何かにつけ、康介を陥れようとしてくる。
コネ「康介さん!いい加減にそのしおれたスーツやめろって言いましたよね?また着て来てるし!」
皆『「クスクス・・」「まあた始まった」「恒例のコント」「毎回面白いよな」』
康介「・・はあ・・」
コネ「あんたもさ!結構給料貰ってんだから!ちっとは恋とかしたらどうなの?」
康介「はあ・・恋・・ですか・・」
コネ「・・合コンとか行かないの?」
康介「いや・・自分はそういうのは・・ちょっと」
コネ「はあ・・誰かこいつにいい男伝授してやってよ?」 職場の皆に振る。
皆『・・』 皆PCを睨んでいる。
康介「分かりました・・じゃあ・・誘われたら・・行ってみます」
コネ「おお!・・でも・・お前なんか誰も誘わないって!あっはっはっはっは!」
康介「ですよね、はは・・っはっはっはっは」
コネ「笑ってんじゃねえ!」 怒鳴る。 〈ビク〉 肩をすくめる。
康介「いや・・だって前に、課長が笑ったら、部下も笑えと・・」
皆『プフウ、クスクス』
コネ「空気読めって言ってんの!」
康介「はい、分かりました」
コネ「はあ・・もういいよ・・行け」
康介「失礼します」
席に着いた。
里美「康さん、合コン行くって本当?」
良子「もう、里美?」
里美「いいじゃない!・・ねえ?行こっか?合コン?」
康介「はあ・・じゃあ・・行ってみます・・」
里美「良し!決まりね!友達誘って行くから!良子~男適当にまた宜しく~」
良子「うん、分かった、じゃあ・・連絡網回しとく」
康介「・・あの・・」
里美「じゃあ・・康さん!今晩どう?」
康介「え?今晩ですか?」
里美「ええ?駄目?」
康介「・・いや・・いい・・ですけど・・」
里美「じゃ決まり!会社終わったら、駅前の居酒屋ね!はっとんっていうお店分かる?」
康介「まあ・・分かります」
里美「じゃあ・・そこに20時に・・ね?」
康介「は・・はあ・・」
コネ「話は聞いた、俺も行ってやろう」 〈ガシ〉 康介の肩を組む。
皆『・・・・』
会話が終わり、PCの仕事に打ち込む。
康介「(・・やべえな・・)」
今夜は横浜の中国マフィアの筆頭、ヒンレイという女の頭の暗殺が予定に入っていて、今晩、東京駅前の立体駐車場の視察に来る所を狙う手はずだった。
康介「(何も起きなきゃいいけど・・)」
康介「(そうだ・・まだ新品のスーツセットあったよな?あれ?あったっけ?確かバーゲンで買って・・そのまま押し入れに・・まあ・・20時だし、一回家帰って、間に合うだろう・・しかし・・合コンかあ・・初めてだなあ・・)」
わくわくと緊張が高まり、そわそわした。
コネ「船場!そわそわするな!」
康介「す、すいません・・(意外に目ざといんだよな・・しかし・・)」
職場で角栓パックをし始めた人に言われたくないと康介は思った。
19時。
一回家に戻った康介は押入れからスーツセットを取り出す。
康介「良かった、あったあった」
湿気対策で新聞紙を押入れ全体に施していた事が幸いし、カビは生えていなかった。
新品のスーツ、靴、ネクタイ姿。
康介「まあ・・こんなもんだろ」 姿見鏡を見る。予想以上に・・何も代わり映えしない。
康介「まあ・・こんなもんだろ・・」 がっかりした。
康介「・・はあ・・でも・・約束したもんなあ・・行きたくないなあ・・」 玄関で座る。
康介「どうせ俺なんか行ったって・・この外見じゃあ・・はあ・・」
バーコードの頭を撫でる。
メガネを拭く。
康介「期待するな康介!期待するから駄目なんだ、それに・・あっちはあっちだ・・」 その目は、気を抜けば・・鋭くー。
康介「は・・いかんいかん・・目で勘ぐられるからな・・穏やかに・・穏やかに・・」
玄関の鏡で覇気がない目の練習をする。
康介「・・良し」〈ガチャン〉 家を出た。
19時20分。
ヒンレイ「今日の立体駐車場の視察の件ですけど・・予定より早く済ませたいの・・10時って約束だったけど、20時にして貰えないかしら?・・ええ・・ちょっとね・・友達と飲みに行く事になっちゃったの・・ええ・・ええ・・勿論よ・・ふふ・・ええ・・ええ・・はいはい・・ええ・・はーい・・じゃあ宜しく~・・」 〈ピ〉
組員1「変更ですか?」
ヒンレイ「ええ・・彼がどうしてもっていうから・・ふふふ・・ま、仕方ないじゃない?」
組員1「はい、・・おい」
組員2「ハオ」 他の組員に連絡に行かせた。
ヒンレイ「あの駐車場・・便利よねえ・・大型取引現場にぴったり、監視カメラもついてるし」
組員「朝鮮共がだいぶゴネましたが・・」
ヒンレイ「大丈夫よ~あんな奴ら、心配しすぎよ」
組員1「しかし、噂ではかなりの凄腕を雇ったとか」
ヒンレイ「いつもの事じゃない?その為に貴方達がいるんでしょう?」
組員1「頭、今日は止めて貰いませんか?嫌な予感がするんです・・」
ヒンレイ「あら?反抗するの?チュン」
チュン「い、いいえ・・そんな・・」
ヒンレイ「あんたをガキの頃から育ててやった恩を今まさに返す時じゃない?」
チュン「か、頭・・」
ヒンレイ「それに・・ふふふ・・守って・・くれるんでしょう?」〈モゾモゾ〉
チュン「あ・・はあ・・はあ・・ああ・・はいい・・命に・・あ!代えて!ぐふう!」
ヒンレイ「うふふ・・いい子・・いい子ね・・」 座り、画面から見えなくなった。
チュン「あ!ああああ!」
19時50分。
康介が店に入る。
良子、里美『あ!来た来た、お~いこっちこっち~」 畳の部屋。
既に結構集まっていた。
男5人、女2人。
康介「あ・・どうも・・」
コネ「遅い!幹事が早く来なくてどうする!」 既に酔っている。
康介「でも・・まだ10分前ですよ?」
コネ「皆聞いたか?ほらな!俺の言った通りどろ?上司に楯突くんだいちいちいち!」
良子「柴田課長のお酒は別会計だから」 ボソっと教えてくれた。
康介「あ、はあ、はい」
柴田「おい!こっちにこい!船場!」
里美「ああ・・はいはい・・課長・・私が晩酌しますよ~」 良子と里美が目配せする。
良子「ここに座って、康さん」 中央付近の座布団に案内される。
康介「あ、はあ、どうも」
良子「(康さん、落ち着いてるし、今日のスーツ綺麗だし、大人の雰囲気出せば大丈夫!いつもの調子で課長と漫才やってね!)」
康介「あ、はあ、どうも」
良子「あ!Line来た!今電車乗ったって!」
里美「そっか」
課長「おい!俺の女はまだ届かんのか?」
男1「まあ、まあ部長、ここは私がモノマネを一発」 30後半。
課長「おお!やれやれええ」〈パチパチ〉
15分経ったがまだ女組みは現れない。
良子「どうしたのかしら?」
里美「迷子になった?」
良子「まさかあ?駅前だよ?」
里美「そうよ・・ねえ・・」
康介「・・」〈ブルブル〉 スマホが鳴った。
康介「・・」 〈T、民、D?〉(トラブル発生、人質、どうする?)
康介「・・」 〈Y、Z、民丸、ATK〉(殺れ、確定事項、人質は殺さずに、接近戦で撃滅しろ)メール返信。
里美「何?それ?」
スマホを覗かれた。
里美「変なの~何?それ?何かの暗号?」
康介「いやあ・・お恥ずかしい・・僕・・こう見えて、ミリオタで・・友人と、結構こういうメールしてるんですよ、頭の体操にもなるし」
里美「ええ~康さんは優しい康さんじゃなきゃ駄目え」 手を握って、ぶんぶん振る。
康介「いや、あの・・すいません・・」
課長「何だ?何だ?何の話だ?」 いつの間にか課長が傍に立っていた。
里美「いや、何でも」
男2「船場さんがミリタリ好きだっていう話ですよ、ね?ひっ」 睨む里美と良子。
課長「あ~に~?ミリミリだ~?」
康介「ミリタリです」
課長「一緒だろうが!」
康介「はあ、ミリミリって何ですか?」
課長「うう~煩い!だいたいお前はなあ・・くどくど」
里美「でも・・本当遅いね・・」
良子「何かあったんじゃないかなあ」
里美「私ちょっと見てくるね」
良子「私も行こうか?」
里美「いいから、何かあったらLineする、じゃね」
良子「気をつけてね」
〈ガラガラ、ガラガラバタン〉
課長「聞いてるのか?おい?」
〈ス〉黙って立ち上がる。
課長「何だこりゃ!やんのか?」 課長も立つが、よろけて座る。
康介「・・あの・・トイレに」
男1「あ、真っ直ぐ突き当たりです」
康介「どうも」
〈バタン〉 個室に入り、スマホを取り出す。
康介「・・」 〈他、T、注〉 (他、問題、注意せよ)
〈ブルブル〉 〈 R 〉
康介「・・」 トイレから出た。
20時14分。
ヒンレイ「全く・・どうすんだい?これ?」
組員1「すいません」
女2人が拘束されている。怪我はないようだ。
ヒンレイ「謝りゃ済む問題?顔もしっかり見られてるし、はあ・・」
組員1「この女が悪いんです、人の車内を勝手に覗いてやがるから、何かの工作員だと思ってつい、部下が・・」
組員3「すいやせん!」
どうやら、高級車をまじまじ見ていた所を捕まえられたようだ。
ヒンレイ「貴方達、運が悪かったわね?あたし今日大事な用事があるの、貴方達に構っている暇ないのよ、だからー・・闇落ちして、ね?」
女達『ん”~ん”~』 泣いている。
〈パシ!〉 突然ブレーカーが落ちた。
ヒンレイ「な!?何!?」
〈ヒュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ〉 ビルの階の中間辺り、窓の隙間からスナイパーが覗く。
???「・・」 女だった。
〈プシュ・・プシュ・・プシュ〉外の外車部下連中を仕留めていく。
もう3箇所からも狙撃しているようだった。
ヒンレイ「はあ、はあ、逃げるよ!早くしな!おい?おい?」拳銃を手に、唯一街明かりが届いてる場所へ移動し、背中を鉄骨に預け、呼びかける。 返事はない。
後ろから近づく影ー。丁度、人質達から見えた。
暗視ゴーグルを身につけた、髭を生やした男が一瞬、外の街明かりに照らされた。
〈ヒュン〉 首の動脈を切られた。〈ピュウーーー、ビチャビチャチャ〉
人質達『ん”~ん”~ん”~』
ヒンレイ「あぐう!?うう・・」 立ち上がり、振り向くが、何も・・見えない。
ヒンレイ「うう・・」〈ドシャアアア・・〉
〈パ、パパ・・パシ!〉 明かりが戻った。
人質達『ん”~~~~~~~!!、ん”~~~~~~~~~!!』
辺りは、何か鋭利な刃物で首を切断された死体だらけだった。
犯人は居なかった。
《ウウウウウウ、ウウウウウウ、ウウウウ、ウウウウウウ〉パトカーのサイレンが聞こえて来た、人質の女達2人はサイレンの音を聞いた瞬間気絶した。
22時。
康介「・・はあ・・」〈バタン〉
当日、軽い、事情聴取を受けた後、家に帰った康介。
誰も怪我はしてないらしく、安心して、カフェオレを飲んだ。
〈ブン〉 コンセントを入れ、PCを立ち上げる。
康介「今日もトラブル発生か・・はらはらしたなあ・・」
〈ブルブル〉スマホを見る。 〈E、丸〉(全て収まった)
康介「・・」 〈 R 〉
康介「お?株落ちてるし・・」 シャットダウンし、席を立ち、ベッドに寝る。
〈ギシ・・〉
康介「必ず・・見つけ出してやるからな・・」
〈ピ〉 リモコン式の照明を消した。