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虹と機械

作者: 憐華
掲載日:2014/09/08

 地球とは別の世界。その名をイストワール。この世界には機械人形(オートマタ)と呼ばれている存在がいる。人間と同じ姿をし、同じ言葉を話す。一見すると人間と何も変わらないが、老いることがなく、食事・排泄・睡眠を必要とせず、感情が薄い。そんな人形のような機械。

 遺跡から見つかった文献では、はるか昔に神が人々にもたらした叡智、錬金術によって生み出されたと書かれている。しかし、すでに錬金術は失われており、その製法、素材、詳しい年代などは謎である。

 あまり関係はないが、動力は第一種永久機関を用いられていると考えられているようだ。

 現存する機械人形は約150体。もともとは500体ほどいたのだが、人間が行った実験による事故によりその数を多きく減らしてしまった。

 

 さて、今から始まる物語は在り来たりな、いたって平凡な物語。一人の少女と一体の機械人形が主人公の物語。

 

 

 物語の舞台はイストワールにある辺境の地ヒストリア。100名余りが住む小さな村である。その村の外れにある小高い丘にある一つの家。

 そこでは一人の少女と一体の機械人形が暮らしていた。少女の名はイリス・ソレーユ。機械人形の名はマキナ。

 マキナは代々このソレーユ家に使えている。イリスは幼い頃に母を病で亡くし、その後はマキナによって育てられていた。

 

「ねぇマキナ。ずっと気になっていたのだけれど、私のお父さんってどんな人なの?」

 

 イリスの父は彼女が生まれる前に亡くなっている。そのため、イリスが頼れるのはマキナだけなのだ。

 

「そうですね、とても勇敢で優しい人でしたよ。」

 

「そうなんだぁ…会ってみたかったなあ。」

 

「あらあら、イリスの綺麗な空色の瞳はお父さんにとてもよく似ていますよ。」

 

「そうなの?ということは私の銀色の髪はお母さん譲りで、瞳がお父さん譲りなんだ!」

 

 イリスはとても嬉しそうにしながら鏡を見ている。すると、マキナが思い出したように言った。

 

「そうですね、イリスも14歳になったことですし、王都にあるブリッツの実家に行くのもいいですね。」

 

「ブリッツ?…あぁ、お父さんの名前だよね!」

 

「ええ、シエルが亡くなったことも知らせないといけませんからね。」

 

 シエルとはイリスの母の名前だ。ブリッツはシエルと結婚後すぐにとある事故によって他界している。シエルの死後はイリスのことで手一杯だったのでマキナはまだ知らせていない。

 

「そうと決まれば、イリス。明後日に出る王都行きの馬車に乗りますから荷物の用意をしておいてくださいね。」

 

「はーい!」

 

 

 この世界における主な交通機関は箱馬車であるため王都までは4日ほどかかる。馬車のおよその速度は10~15km/hで街道はあまり整備されておらず、サスペンションもないため乗り心地はお世辞にも良いとは言えない。

 

「お嬢さんたち、もうすぐ出発するよ!」

 

 御者の人が急かすように言った。

 

「マキナ、急いで!」

 

「あらあら、そこまで急がなくても待ってくれますよ。」

 

「さ、お嬢さんたちで最後だ。今出すから乗ってまってな!」

 

 そう言ってきた御者の人に運賃を渡し、イリスたちは馬車に乗り込んだ。

 

 

 馬車が村を出てから4日後。天候にも恵まれ、晴々とした空の下ようやく王都が見えてきた。

 王都には城が建っており、その名の通り国王が住む都市だ。イストワールには大きく分けて5つの国がある。イリスたちが目的地としていた王都デスペハードは2番目に大きく、人口が1番多い都市でもある。

 

「イリス、起きてください。着きましたよ。」

 

 寝ていたイリスに向かってマキナが呼びかける。

 

「ううん…おはよう、マキナ。」

 

「はい。おはようございます。イリス。」

 

 二人は荷物を持ち、馬車を降りる。城壁を併せると10mにもなる門をくぐり抜けると、目の前には大通りを挟むようにして色とりどりのたくさんの建物が建ち並んでいる。

 

「ここが王都かぁ、すごい大きいね!」

 

「イリスは始めて来ますからね。私から離れてはダメですよ。村と比べて広いですし、人も多いのであっという間に迷子になってしまいますよ。」

 

「はーい!」

 

 始めて見るものを見てはしゃぐイリスの姿は危なっかしいがとても可愛らしいものがある。

 門から歩くこと約20分。ふと周りを見渡すと大きな邸宅が建ち並ぶ区域に入っていた。そのなかでも一際目立つ大きな邸宅。その邸宅の表札には[レーゲン]と書かれている。

 

「イリス。着きましたよ。ここがブリッツの実家です。」

 

「ここがお父さんの家…大きいねー。」

 

 レーゲン家は侯爵家だ。侯爵というのは五等爵の第二位である。つまりはとても位の高い家系なのだ。

 マキナは門扉の横にあるベルを鳴らした。ベルをならしてから数分後、邸宅から使用人らしき人がやってきた。

 

「お久しぶりですね、マキナ様。そちらの方はイリス様でしょうか?はじめまして。私、シュネーと申します。」

 

「は、はじめまして。イリスです。」

 

 イリスは初めて見る服装の人に戸惑っているようだ。シュネーはそんなイリスの様子を見て微笑む。

 

「それで、マキナ様。ご用件はなんでしょう。」

 

「シエルが亡くなりました。そのことについてネーベルにお話したいことがあります。」

 

「っ!!…それは…わかりました。少しお待ちください。」

 

 シエルの知己であるシュネーは驚きはしたものの、すぐに平静を取り戻すと邸宅へと戻っていった。

 待つこと5分。シュネーがやってきた。

 

「確認がとれました。どうぞこちらへ。」

 

 イリスたちはシュネーに案内されながら邸宅へと入っていった。

 広い邸宅の中を案内されて着いた場所は応接間の前だった。

 

「イリス様は、ここでお待ちください。」

 

 待てと言われたイリスは不満そうにしていたが、シュネーの真剣な表情を見てこくんとうなずいた。それを見てシュネーは微笑みながらイリスの頭をなでる。

 シュネーが扉をノックする。

 

「ネーベル様。マキナ様をお連れしました。」

 

「入れ。」

 

 扉の向こうから返事があったのを確認してから扉を開ける。

 

「「失礼します。」」

 

 応接間の中は、部屋の中央に華美な装飾が施されていないテーブルとソファがあるだけの簡素なつくりになっていた。

 マキナはテーブルをはさんでネーベルの向かい側に座った。

 

「話はシュネーから聞いている。それで、私に話とはなんだ。イリスの世話をしろ、と言うのなら私は断るが。」

 

「あなたならそう言うと思ってました。では、イリスはこれからも私と一緒にいる、ということでかまいませんね?」

 

「ああ。かまわんよ。…話はそれだけか?私は忙しいのでな。話が終わりなら帰ってもらおうか。」

 

 その言葉に対してマキナは語調を強くして言った。

 

「あなたは、あなたという人は!シエルが亡くなったというのに何も思わないんですか!」

 

「マキナ。君は道端で鼠が死んでいるのを見て何か思うか?つまりはそういうことだ。」

 

 それを聞いたマキナは…

 

「もう、いいです!あなたにはもう何も頼りませんし話しません!」

 

 そう言い放ってマキナは扉を勢いよく開くと応接間を出て行った。

 応接間に残されたネーベルは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 

「マキナ、すまない。私には、君たちに会う資格などないのだ。私は決して赦されないことをしてしまった。」

 

「ネーベル様。シエルは気にしていませんでしたよ。むしろあれがあったからブリッツと会えた、と喜んでいましたよ。」

 

「もしそうだとしても、私がブリッツ(息子)を殺したも同然なのだ。赦されていいはずがない…」

 

「確かに、あれは赦されないことなのでしょう。ですが、それをいつまでも気にしていてはダメだと思います。」

 

「わかっている。わかっているのだが…シュネー。あれをマキナに渡しておいてくれ。」

 

「承りました。それがシエルの意思ですからね。」

 

 シュネーは一礼して出て行った。

 

「本当にすまない…私は、私はどうしたらいいんだ。君ならこういうときはどうするのだろうか…なぁ、シエル。」

 

 応接間に一人残ったネーベルの言葉がむなしく溶けて、消えた。

 

 

 

 

「イリス。おまたせしました。帰りますよ。」

 

 いつもより抑揚のない、淡々とした声でマキナが言った。

 

「マキナ、なにかあったの?」

 

 そんなマキナを見て心配になったのか、イリスは問いかけた。

 

「大丈夫ですよ。さぁ、帰りましょう。」

 

「…マキナ、私にできることがあったら言ってね!」

 

「はい。では、帰りましょうか。」

 

 いつもと同じ声で返事をする。どうやらイリスの励ましで元の調子にもどったようだ。

 

「うん!」

 

 広い邸宅を出て門を出ようとしたところでシュネーに呼び止められた。

 

「マキナ様、イリス様。お待ちください。これをネーベル様からお渡しになるように言われました。どうぞお持ちください。」

 

 そう言ってシュネーは小さな黒い箱を渡してきた。中を見ると、中心に空色の宝石がはめ込まれた銀枠のブローチが入っていた。

 

「!?これはシエルがつけていたブローチ…失くしたはずでは…何故ネーベルが持っているのですか?」

 

 マキナはとても驚いた。それもそのはず、昔「失くしてしまった。」とシエル本人が言っていたのだ。

 

「それはシエル本人から預かったものです。マキナ様がここを訪ねた際に渡してくださいとのことです。」

 

 何の意図があってネーベルの元に預けたのかはシエル本人がいない今はもうわからないが、彼女のことだ。何か理由があったのだろう。マキナは自分のなかでそう結論付けた。

 

「ありがとうございます。それでは、また。」

 

「はい。お気をつけてお帰りください。」

 

 お互い簡単に挨拶をすませ帰路に着く。馬車乗り場に行く途中、マキナはブローチをイリスに見せた。

 

「イリス。これを渡しておきます。」

 

「ブローチ…私にくれるの?」

 

「はい。シエルが身に着けていたものです。」

 

 そう言ってイリスの胸にブローチを着ける。

 

「お母さんが…うん。ありがとう!」

 

 ブローチをつけてもらったイリスは花が咲いたような笑みを浮かべて歩き出す。

 その笑みが、後ろ姿がどこかシエルに似ていて、マキナは懐かしさを感じた。いつまでもイリスと一緒にいられればいいのに。

 

 そんなことを心のどこかで思いながら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


最後まで読んでいただきありがとうございました。

私の前作と同じく、部活で出す部誌(短編小説集)です。


今回のテーマは[機械]でした。


とある事情により書きたいところをかなり削ったため急ぎ足な物語になってしまいました。やっぱり文章を書くのは難しいですね。


次のテーマは[恋愛]です。私が好きなジャンルなのでがんばりたいと思います。


次も読んでくださるとうれしいです。ありがとうございました。

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