第6話 ~恐~
「もう何分経った?」
俺が中瀬に問いかける。
「死の鞄を見たら分かるやろ?」
そう中瀬に言うと同時に自分でも死の鞄を見る。
「8時50分だ。もうすぐだフッ!」
今まで黙っていた雄大が中瀬の口を塞いだ。
「なんやねフッ!」
中瀬の口から手が退いたと思ったらまた喋り出しそれを塞がれた。
「なんか聞こえへん?」
耳打ちでそう言って沈黙を作った。
タン…タン…タン…タン…
俺と中瀬が顔を見合わせる。
「やべぇよ」
「やべぇな」
「黙ってろ」
沈黙が続く―――――
カタン…カタン…カタン…カタン…
足音が徐々に大きくなる。皆が両手で口を押えた。
「終わりだ…。もう俺ら死ぬんだ…」
中瀬が両手を地面に力なく落とした。
「いやや…死にたくない!!うわぁぁぁぁぁぁ」
「このアホ!隠れるぞ!雄大」
中瀬を無理矢理手を引っ張り物陰に隠れた。
ガチャ…
ドアが静かに開いた気がした。
こっちに向かう足音が聞こえた気がした。
感覚神経が鈍り状況が把握できない。
"死"への恐怖、それだけで体が細胞単位で震えだす。
最後の力を振り絞り首を動かし、振り向いた。
先生!?そこに立っていたのは川田先生。
驚き先生から視点を外せない。
そして先生と目が合った。先生の目は、死んでいた。
先生はこっちへ向かってくる。中瀬と雄大は黙って蹲っていた。
すると中瀬は口を開いた。
「どうせ死ぬなら…届かないけど―――
灰原が!灰原、好きだァァァァァァァァァァァァァァ」
キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン♪
中瀬が叫び終えるとチャイムが鳴り響き先生の死んだ目が閉ざされた。
「…え?終わったん?ちょお待て待て、俺めっちゃ恥ずかしいやん!」
中瀬の頬が赤く鳴り始める。
「じゃ、1回教室戻ろか…灰原~プッ」
雄大が中瀬をおちょくっている。
いつもの風景。いつもの友達。いつもの―――――
「絶対生き残ろうな!!」
「おぉ…なんやねん急に、当たり前やろ!」
「おぉ!!」
約束を交わし立ち上る。そこには倒れた先生がいた。
「先生!?なんでここに…」
「先生が鬼なんだよ、しかも多分記憶が無いな」
「マジで!?それはそれでよかったかも…灰原の事聞かれんで済んだし」
いつもの中瀬の笑顔がそこにはあった。
ガララ――
静かに教室のドアを開け目を開ける。
「おぉ…おぉ!」
そこには2年4組全員の姿があった。
「全然見つからんし、てか鬼おるんか?」
「やんなー全員ここにおるんちゃう?」
「うん。捕まった人ゼロ~」
「もうどうせ捕まらんやろしこの1時間の休憩は隠れる所探す時間にしよ」
「了解ッ」
「じゃあな」
次々と教室から出ていく。
これが最後にならなければいいのに――――――――――