第10話 ~涙~
7月15日 9時1分
「もういやや。神崎から離れたい」
笛吹が少し離れた神崎に聞こえ無いように友達の小路に話しかけた。
「だよね。他のところに隠れよう」
そういうと2人は立ち上がり静かに階段を下りて行った。
「俺もやめとくよ…」
小薄も扉の向こうに行ってしまった。
「俺らも行こうぜ」
そういって立ち上った俺は中瀬と羽野に目で合図した。
「待てよ。ここにいようぜ。鬼もこやんし。神崎に訊きたいこともあるし」
雄大の顔を見て頷き、そこに座った。
「あー。暑い暑い」
嫌味の様に俺が呟く。
「いいのか?いかなくて」
神崎が座った俺に気が付きこちらを向いた。
「うん。雄大が言うからな」
「そうか」
沈黙が続きその時間がとても短く感じた。皆が色々な想いを整理しているんだなと、俺は静かに陰で座っていた。
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「もうそろそろだな」
気が付いたら時間は9時56分だった。
「はぁ。また始まるんか…。なんかもう慣れてきたわ」
「なれたらあかんって。もう寝とこ。夜寝られへんかったし」
そう言って中瀬が陰で寝転んだ。それに続いて俺と雄大も寝転がった。
「はあ。なんなんだろうな。これが夢だったらいいのに」
「ははは。気が付いたら自分の部屋のベットから落ちたところってか?」
「そうは言ってないけど。せめて、9人になる前の時間に戻ってほしいよ」
「夢落ちか。いいな。それ」
こんな他愛無い会話もこれで最後かもしれない。そう思ったらドンドン言葉が溢れてくる。
「俺、親孝行してたらよかったな」
「なんやねん急に」
中瀬が笑って受け流す。ああ―――――――――――――――――――
「もうやだな…こんなの」
自然に涙が溢れてきた。今まで出なかったのが不思議だったんだ。
「泣くなって。俺らまで泣けてくるやんけ…」
「お前、俺らとかそんなん…勝手に決めんなや。ぼけ…ぇ」
中瀬も羽野も今まで溜め込んでいた物を吐き出した。




