表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

03_システムの補修もできない俺達は解雇ですか?

「なんだよ、挨拶もなしか?」

「喋れないんだよ」

新たに機械室に入ってきた筋肉質な男に、エネが代わりに応えてくれた。

そりゃあすまん、と男が謝る。別に構わない、毎度のやりとりは少し面倒だが。

特に気にせず手を動かし続ける。

機器の並ぶ室内、既に10人程度の人間がいる。


「…で、この集落(ムラ)はずっと昔、腕のいい医者がひとり居たらしくてな。長老がガキの頃というから相当な前だがな。だからこの集落は変な名がついてんだ」


なるほど。隣のメカマンの言葉に頷きながら手を動かす。

配線よし、パック接続よし、念のためメモリもジャンクから持ってきた品に一時的に交換済み。


「医者の技は消えちまったが、療養の機械だけなら俺たちだけでも受け継げる。フロもそのうちのひとつさ。まぁそれなりのガスと維持費を食うから、それなりのパックは提供頂いてるけどよ」


見た感じは悪くない。電源を入れてみる。

軍手を嵌め工具を持った私の後ろには、期待と好奇心で見つめる技術屋たち数人が腕を組んでいる。


BEEP、LED、冷却ファンの回転音。順調に…

すん、と電源が落ちた。くそ、またか。


「すまんな、旅の人に見てもらってよ」

「」

構わない、もはやここまで来たら意地でも。


『風呂に入れる』という、耳を疑う誘いがあったから来てみたというのに。

気がついたらニワカの修理屋である。


居住区の隅にある警戒厳重な階段、それを降りて途中からは梯子を何段か降りて、更なる地下区画にあったのは水源となる浄化施設や地下農場、この集落を支えるメカニカルなブロックだった。


「三つある浄水施設のひとつが調子悪くてなぁ。俺たちメカニックチームで随分見たんだが、ついにわからなくて暫く放置のままだったんだ」

「今すぐの問題ではないが、もう一台も不調になったら集落の生存に関わる。厄介なレギオンを倒してくれた信頼できる方の、異なる視点で見てもらえたらと」


まあそれは良くわかる。案外、気付かない点に第三者が気付くことはあるものだから。

ラクダと旅する以上、専門家ではないが技術屋としての最低限の知識と能力もあるつもりだ。GKPで検索した情報で、少し見てみることにしたが。


「頑張れよ〜。俺たちはタイヤついてるものしか弄れねー」

「何か手伝えることあったら言ってね!」

エネとメリも面白そうに見ている。テスト用にとレアなパックを快く貸してくれたのだから、彼らも相当なお人好しだ。


さて。

問題があるのは浄水器施設全体のうち中央の制御装置部分。ボタンを押した直後は電源が入らないことはないが、動き出して数秒ですぐに停止…「落ちて」しまうのだ。

硬い床に座り込み、露出した機器と向き合う。

意味もなく軍手を嵌め直す。


制御画面が出力される前に落ちることもあるから、起動のシーケンスから逆算して統合管理ソフトウェアの問題ではない。しかしBEEPやファンなど基本的な機器アクセスは行われ、数回に一回は画面起動まで行くのだから、配線、電源供給、CPUやボードが完全に破損している訳でもない。

だがそれ以降だとしたら、仮に記憶装置や故障機器の接続をしようとしても電源が落ちる事態にはならないはず…


むむむ。

電源装置は稼働中機器から一時的に移植しているので、こちらの異常もほぼあり得ない。

コンデンサ、エナジー抵抗、CPU位相同期、それらの問題だとすると深すぎて手が出ないが。


「専門の俺等に分からないんだ、分からなくて当たり前だぜ」

「そうそう、旅の人にそこまで過度な期待はしてないよ。万に一つがあればというお試しさ」

「フロは生きてんだ、そろそろ諦めて入っていきなよ」


そんな言葉をかけられては尚更引けないだろう。

だいたい画面表示の前に落ちたり後に落ちたりというのは、機器故障としてはあり得ない範囲の再現性のなさというか…


「」

つまり。そうか。

この辻褄が合う結論のひとつ。

機器の方に故障は「無い」ということか?


手元の配線を簡単に繋ぎ直す。

電源に繋いだボタンを押す。


沈黙と期待感が、場を支配する。

起動。画面表示。自動化システム開始。

…落ちない。よし。

メカニックたちのどよめきが室内に拡がる。

室内の第三浄水施設の、各大型機器に次々と火が入っていく。LEDはすべて快調なグリーン。


「すげぇ!一体どこを?!どうやって??」

先ほど最後に入ってきたマッチョの技術屋が、驚きと尊敬の目で見てくる。

私はただ一言、


《電源ボタン》


とGKPに記して、見せた。


全員が同時に頭を抱えてその場に崩れ落ち、


エネが腹を抱えてバカ笑いしていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ