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第4話 可愛い我が子よ、戦う時です!

「あ……えっと……こ、こんにちは…僕はリリアと申します。」

小柄な銀髪の少女――リリアは、どこか怯えたように視線を逸らしながら小さく頭を下げた。


「お、おう。俺はハルト。こっちはテラ」

「テラ様っ……! 本当に……」

リリアの表情に驚きが浮かんだ。


「ふふ、久しぶりね、リリア。あなた、大きくなったわ」


「う、うん……僕……ちょっとだけ、だけど」

リリアは頷くと、少し緊張した面持ちで自分の鞄を開けた。


「お父さん……今日の魔法練習、記録しておいたよ」

そう言って日記のような小さなノートをマルクに手渡す。


「おお……頑張っておるな。ちゃんと結界の基本式も覚えてきたか」

マルクは目を細めて嬉しそうに笑う。


「そういうのって学校とかで学べるのか?」

「う、うん。でも……僕、学校にも行けなかったし、友達もいなかった……だから全部独学なんだ」


その言葉を聞いたハルトは、静かに頷いた。

「俺も学校苦手だったよ。沢山の人がいて、それに面倒くさいしな」

「でも凄いよ、俺は魔法ってもんは分からないけどそうやって学ぶって事は」

「……ありがとう」

二人の間に、不思議な絆のようなものが芽生えかけていた――が、


「ハルト様……リリアさん……学校に行かないとだめですよ?」

「ちょ!?テラ!? 今の流れでそれ!?」

「我が子が不登校など、女神として見過ごせません!」

両手を腰にあて、ぷくっと怒った顔のテラ。


「ははは!やっぱり変わってないな、テラ様!」

マルクが小さく笑った。


――と、そのときだった。


ドォンッ!


重い音と共に、遠くから爆音が響いた。家が軽く揺れる。


「……っ!? これは……!」

セバスが扉を開け、飛び込んできた。


「報告! 森の東側より魔物の群れが接近! 数十体規模! 村人たちは武装中です!」


「来たか……」

マルクがすぐさま立ち上がる。


「全員、持ち場へ急げ! ハルト殿、テラ様、できれば村の奥へ――」


「いえ、私は残りますわ」

テラがきっぱりと言った。


「私もだ。できることがあるなら、俺も戦う!」

ハルトの言葉にセバスとマルクが目を見開く。


「……承知した。ハルト殿、こっちじゃ!」


そしてハルトはリリスに部屋の奥へ行くように言った。

「リリスは家の奥で待っておくんじゃぞ!」


「でもお父さん!僕も戦えるよ!」

リリスは自前の杖を持って戦う意思表した。

しかしハルトはそれを拒否した。


「だめじゃ!危険すぎる!」

「で、でも……!」

「わかった、危なくなったらすぐに逃げるんじゃぞ?」

「は、はい!」

リリスは急いで杖を持ち直し、戦う準備をした。

そしてハルトは部屋にあった剣や防具を装備し、俺やテラ、セバス、リリスと共に戦場へ向かった。


村の広場に出ると、既に男たちが弓や槍を構え、女性たちは避難誘導をしていた。セバスが最前線へと向かう。


森の影――そこから、黒い獣たちが次々と現れた。

狼のような魔物、異形の虫、そして血に飢えたような飛行獣。


「くっ……あんな数を……!」


リリアは前に立ち、詠唱を始める。


「――《氷の矢よ、敵を穿て》! アイスランス!」


鋭い氷の槍が魔物を貫く。周囲が驚くほどの威力だった。


「おお……リリア!」

マルクが目を見張る。


だが――


「きゃっ!」

リリアの背後に回り込んだ魔物が、鋭い爪を突き出す――


「やばっ! リリアッ!!」


ドンッ!


土が爆ぜる音。リリアの前にハルトが立っていた。手には自然と光る陣が浮かび上がっている。


「これって……勝手に出た!?」

地面から大地の壁が出現し、魔物を吹き飛ばす。


「これは……古代術式!? しかも……あの呪文は、禁術級の旧魔法じゃぞ!?」

村長マルクが目を剥く。


「な、なんか俺、すげぇ魔法使えてるっぽい!?」

ハルトが困惑する中、更なる魔物の群れが押し寄せる。


だが、そのとき。


「あらぁ~ハルト様、マナの限界が近づいてますわ。 少し、私の力をお貸ししますね♡」


テラがそっと背中に手を当てると、柔らかな光がハルトに流れ込んでいった。


「これで、もう一発いけますよ」


「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」


轟音と共に、巨大な地割れが走り、魔物たちを呑み込んだ。

村人たちが歓声を上げる。

「いけぇぇ!若いのに続けぇぇぇぇぇ!!」

「俺たちの村は、俺たちで守るんじゃあああ!!」


セバスも前線で暴れ回り、マルクが昔のように陣形を指示し、魔物の残党を掃討していく。

やがて、最後の魔物が倒れた。


「……やったのか?」


誰かの呟きが、夕闇に溶けていった。

ハルトはその場に崩れ落ちる。


「つ、疲れたぁ……!」


テラがそっと寄り添う。

「よく頑張りましたね、我が子……♡」

「我が子って言うなっての……でも、ありがとな」


こうして魔物の侵攻を村の全員で抑えたのであった。

そして全員が安堵していると、後ろから馬が駆ける音が聞こえてきた……

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