第1話 神聖なる森で目覚めたら、神様がロリになってました
深い緑に囲まれた神聖な森。
柔らかな朝日が葉の間から差し込んで、木漏れ日が優しく地面を照らしていた。
森の中、ふかふかした草の上で一人の男がうつ伏せに倒れていた。
鳥のさえずり、葉擦れの音、湿った土と草の香り。自然の匂いに包まれて、ハルトはゆっくりと目を開けた。
「……うぅん、土の味……って、ここは!?」
「目覚めましたか? ハルト様」
耳元で響く柔らかな声。
顔を起こすと、そこには小さな少女の姿があった。
「き、君は……子供?」
「あら、子供だなんて。若く見られて嬉しいですわ♡」
少女は両手を頬に当て、嬉しそうにくねくねと身体を揺らしている。
どう見ても小学生くらいの外見なのに、言葉遣いや仕草はどこか大人びていた。
「それはそうと……一体ここはどこなんだ? 確か俺……」
記憶を遡る。
ベットへ倒れ込んで、声を聞いて、光に包まれて――
「あっ、そうだ! 確か、めっちゃ可愛い神様に『世界を救って』って頼まれたんだよな!」
その瞬間、女性――いや、目の前の“少女”の顔が真っ赤になった。
「は、ハルト様……! 可愛い我が子にそんなこと言われたら……もう耐えられませんよ♡」
「我が子……?」
あのとき会った神様も“我が子”って呼んでた。
まさかとは思ったが、まさかとは思ったが……!
「な、なあ。よければ名前を聞かせてもらっていいか?」
「はい! 私の名前はテラです!忘れちゃったのですか?」
「――なんでロリ姿になってるのおおおおおおおお?!」
ハルトの叫びが神聖な森に響き渡った。
おかしい!
あの時はめちゃくちゃ巨乳で、優しくて、神々しくて──まさに「女神様」って感じだったのに!
「ちょ、ちょっと待って!? なんでそんな姿に!? サイズが……いや、色々と小さくなってないか!?」
「まぁ、失礼な!これは“分身体”ですよ。ハルト様のそばにいるために、私の力の一部を具現化した姿ですの」
「えぇ!? じゃあ夢の中で出会った時の巨乳が本体ってこと……?」
我ながら最低な事を言っている気がする!
「きょ……爆乳……っ♡ ハルト様ったら、そんな卑猥な言葉駄目ですよ?」
爆乳とは言ってねぇよ!
「まぁ、我が子に”そういうこと”言われるのは悪くありませんね」
顔を真っ赤にして口元をおさえるテラ。なぜか妙に嬉しそうにしてるのが怖い。
「べ、別に変な意味じゃなくてだな……あーもう! マジで異世界来たってわけか?」
俺は立ち上がって、森の周囲を見渡す。空気は澄んでるし、どこか幻想的な雰囲気すらある。
木の幹は太く、根元には光る苔のようなものが這っていた。
「はい。ここは《グラント村》の近くにある“神聖なる森”──私に縁のある場所ですわ」
テラはしれっとした顔で言った。
「なるほどな。……って、そもそも異世界来て、俺に何をしろって言うんだよ?」
「私の仲間である旧支配者を救い出して、新支配者を討伐して頂きたいのです」
新支配者、その単語が出た瞬間、テラの表情はさっきまでとは違い真剣な表情となった。
「新支配者?旧支配者の仲間?どういう事なんだ?」
俺は困惑した。現世で生きていた時はまあまあ知識があったが、新支配者や旧支配者という事は宗教の話でしか聞いたことなかった。
「そうですね、長くなるので少し歩いて説明しましょう!ほら、こちらへ来てください」
そう言われテラが手を差し伸べた。
俺はその手を握り一緒にどこかへと向かった。
「ハルト様は宗教についてある程度の知識はありますか?」
「あ、ああ。俺の世界はいろんな宗教があってそれぞれに神話があるのを知ってる程度だけど」
「ならある程度は省けますね」
そういい、テラはニコッと笑う。とてもかわいらしい。
……ロリコンじゃないからな?
「まずこの世界を説明するのに2つの勢力を説明します」
そういいテラは色々と話してくれた。
まず新支配者と旧支配者の2つの勢力があるらしい。
旧支配者の宗教名は【エルミナ】
新支配者の宗教名は【ネオ・セフィラ】
そしてテラは旧支配者に所属しており人類と協調、平和的に暮らしていた。
しかしある時に外宇宙から新支配者と言われている神々がこの世界に降臨し元からいた旧支配者に対して攻撃を仕掛けた。
これを第一次聖戦というらしい。
最初は人類と旧支配者が協力し外宇宙からきた新支配者を追い出そうとしたが、段々劣勢となり裏切るものも出てきて負けたらしい。
そして勝った新支配者は新しく裏切った人類に自分たちを信仰させ【ネオ・セフィラ】を作成。
対価として能力を与えた。
「ということなのです」
テラの表情はとても暗く、どこか悔しさを残していた。
「じゃあ俺はその新支配者を倒すために旧支配者を助け出し、世界を救えってことなんだな?」
「ええ、そういうことです。流石我が子です!物わかりもいいですね!」
褒めてるのか貶してるのかわからないな……
そんなこんなしていると小さな町が見えてきた。
「あ、もうそろそろ着きますよハルト様!」
「あそこは?」
そう質問すると、テラはこちらを向き微笑んだ。
「私の故郷みたいな場所です!」
こうして俺とテラは小さな村へと向かっていった