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第12話 いざエルデン街 探索!

朝日が差し込む和風の宿の一室。

障子越しに鳥のさえずりが響き、ほんのりと香る出汁の匂いが空腹を誘う。


ハルトがあくびを噛み殺しながら座布団に座り、湯気の立つ味噌汁を啜る。


「うめぇ!幸せだ!」


「ふふ、ちゃんとお礼を言って食べてくださいな♡」

テラが隣で微笑みながら、箸を口元に運ぶ。


シオンは静かに白米をもくもくと口に運び、リリアはまだ少し寝ぼけた表情で焼き魚をつついている。


セバスが湯呑を置きながら口を開いた。


「さて、今日の予定を確認しておきましょうか。……それでテラ様、どうしてこの街へ来たのですかな?」


「そうね、この街はヴァルド・アーシュベルグっていう下級貴族に支配されてるの」

「そして彼は騎士であり旧支配者信奉者、つまりエルミナ信徒の一人」


シオンが静かに補足し続ける。

「エルデン街は元々エルミナ教が広く信仰されてて街の住民は皆平和に暮らしてたの」

「……だけど帝国軍がやってきてからは全てが変わってしまった」

「教会や神父様、抵抗する人たちは全員殺されていって死者は約12万人、行方不明者は2万人だったと聞いた」


重い内容を淡々と語るシオンだったが、その表情はまったく変わらない。

「酷すぎる……でもどうしてシオンはそんなに詳しいんだ?」

あまりにも詳しいシオンに、思わず俺は問いかけてしまった。


俺の質問に対し、シオンはわずかに目を伏せたまま、言いづらそうに口を開いた。

「ヴァルド・アーシュベルグ……私のお父様です」

「お、お父さん?!しかも貴族の娘?!」

俺とリリア、セバス、テラは大きく驚いた顔をした。


「で、ですがシオン殿。ご身分が貴族のご令嬢であるのに、なぜ遺跡で倒れておられたのですか?」

セバスは困惑を隠せないまま、なんとか言葉を紡いだ。


それを聞いたシオンは冷静に答えた。

「外に出してくれなかったから家出して、走ってたんだけど疲れたから寝てた」


あれ寝てたの?!

俺はびっくりしながら質問した。

「……じゃあ何で家出したんだ?」


「もう一人で買い物とか出来るのに警備や護衛を付けてきてゆっくり買い物出来ないの」

「しかもいつもおヒゲジョリジョリしてくるし、セバスのヒゲ見ると嫌な思い出が蘇るの」

その一言に、セバスは自慢のヒゲを触りながらしょんぼりと肩を落とした。


「まあ、とりあえずシオンがヴァルドの娘なら、普通に会えるってことだよな?」

俺がそう言うと、テラが少し微笑む。


「ええ、可能性は高いですわね。彼に私たちの存在を伝えれば、門前払いされることはないでしょう」


リリアが箸を置いて声を上げた。

「つまり、シオンはお嬢様ってこと……? 全然そんな感じじゃなかったけど……」


「お嬢様……?」

シオンは白米を口に入れながら、首をかしげる。


「よく大魔王に連れ去られる人の事……?」

「どこの桃の方だ!」

ハルトがすかさず突っ込む。


セバスは自慢のヒゲをさすりながら、微妙に落ち込み気味の声で言った。

「しかし……いくら貴族とはいえ、ヴァルド様が旧支配者の信者と知られてしまえば帝国軍は黙ってはいないでしょうね……」


「え?」

俺は箸を止めた。


テラが少しだけ眉を曇らせる。

「そうね……この街の空気、少し重いものがあるわ。もしも帝国の目を避けて動いているのだとしたら……直接の接触には注意が必要かもしれませんわ」


「……つまり、合えるけど、迂闊に行くと帝国兵にバレる可能性があるってこと?」

リリアが言った。


「うん……それに、父様……私が家出したこと、怒ってるかも……」

シオンがぽつりと呟く。


その瞬間、全員がピタリと動きを止めた。


「…………」

「…………」

「…………」

「……うん、それは……怒ってるだろうな」

俺は真顔で言った。

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