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第10話 僕、もうお嫁に行けない……

夕暮れの空が紫に染まり、ひんやりとした風が頬を撫でる中、ハルトたちは村の外れにある宿へと歩いていた。


リリアがシオンの隣を歩きながら、そっと口を開いた。

「シ……シオンちゃんってどこから来たの?」


シオンは少しだけ間を置き、答えた。。

「……分からない。覚えてないの。」


少し振るえた声で答えた。その声は奥底に何かがありそうな含みをしていた。

「そうなんだ……なんかごめんなさい…」

「んっ、大丈夫。それよりハルトが変態なのが重要だと思うのですが」


それを聞いたハルトは反論する。

「誰が変態じゃあああああ!」


「ハルトさんです」


「即答かよ!」


テラはそんなやりとりを優しい目で見守っていたが、ふと立ち止まり、空を見上げる。


「……気をつけてください。あれは…」

ハルトたちも顔を上げた。


一羽の黒いカラスが、くるくると円を描くように上空を舞っている。だがその羽音は異様に重く、まるで警鐘のように不気味に響いていた。


「なんだ……あれ、普通のカラスか?」

ハルトが目を細める。


カラスは一声、濁ったような鳴き声で「カァ……」と鳴き、林の奥へと飛び去った。


――その直後。


「……っ来るぞ!!」

セバスが声を上げた。


ガサガサッ……ッバキィン!


木々を押しのけ、異形の影が林から這い出てくる。

灰色の皮膚、複数の手足、仮面のような顔。腐肉のような匂いを漂わせ、五体もの魔物が姿を現した。


「うわっ……あれは……」

リリアが青ざめる。


「ただの獣じゃない。帝国の“混成獣ハイブリッド”か……!」


テラが唇をかみしめた。

「人工的に魔法で造られた魔物。自然の流れに反した存在ですわ……!」


「ちっ……やるしかねぇな!」

ハルトが剣を抜き、前に出た。


「全員、隊列を!」

セバスが冷静に指示を飛ばす。


「リリア、後方から魔法支援!」

「シオン、左の崖上を取って狙撃位置へ!」

「テラは回復と結界を!」


「任せて」

「了解」

「はい♡」


そして、ハルトは目の前の魔物へ剣を構えた。


「さあ、お前ら……かかってこい!」


冷たい風が吹きすさぶ中、宿の明かりはまだ遠い。

しかし、戦いの火蓋はすでに――切られた。


異形の魔物たちが、口から粘液を垂らしながら襲いかかってくる。

「うおっ!? お前ら食欲ありすぎだろ……!」


そんな中リリアが魔法を詠唱中であった。

「時の律を破る声よ、古の契約に従え――」


「お、おお…凄いかっこいい詠唱してる!」

「ハルトちゃんなら詠唱しなくても出せるわよ?」

「それとこれとは違うじゃん!ロマンってやつだよ!」

「もー、ないものねだりなんてお母さん困っちゃうわぁ」


そんな話をしているとリリアの詠唱がピタッと止まり、聞こえなくなった。

「あ、あれ?リリア?」

見ると、リリアの上半身が魔物の口にすっぽりハマっていた。


「んー!!んー!!」

リリアが物凄く叫んでいる。

「リリア!いま助けるからな!」

まだ慣れない魔法を使うとリリアを傷つけてしまうと考えた俺は剣で切り倒そうとしたが、石につまずいて倒れ込んだ反動でリリアのスカートを下げてしまった。


……あっ水色パンツだ


その瞬間リリアの上半身を加えていた魔物が爆発四散した。

そしてその中にいたリリアの表情は物凄く真っ赤だった。


「うぅ……僕、もうお嫁に行けない……」

「本当にすいませんでしたああああああああああああああああ」

俺は戦闘そっちのけで土下座した。


「最低です。純粋な女の子を穢したんですよ」

シオンは冷静だったがその目はゴミを見るような目であった。

「あらあらハルトちゃん?分かってるよねー?」


おわった。俺の異世界人生終わった。


そんなこんなしているとセバスが全ての敵を倒していた。

「ふむ、これしきでは汗もかきませんな。……さあ、パンツより先に戦況を見ましょうぞ」


ねえ、あれ絶対気を使ってるよね。

誰がどう見ても気を使って言ってくれてるよ。

セバスめっちゃ聖人じゃん。


「とりあえずリリアちゃん!私が隠してあげるから早くはきなさい♡」

テラに言われたリリアは涙目になりながら脱がされたスカートをはきなおした。


そして俺はテラの前で正座していた。

「……すいませんでした……あ、ところで宿ってあとどのくらい……?」


テラの表情は笑っていたが、ハイライトはなかった。

「もうすぐですわ♡ でもその前に、もう一発おしおき♡」


バチィィィ!


「……街に着いたら、誰にも言わないでよね……」

リリアの表情はまだ真っ赤であった。


こうして俺は、約一時間にわたって女神からの説教を受けながら――

宿がある村へと向かっていった。

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