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そして、物語はつづく  作者: 矢月
【第一章】祝福の英雄と名も無き英雄たち
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【第17話】「上級①」

多忙のためしばらく執筆できませんでしたがこれから少しずつ進めていきます。


久瀬達がやって来たのは辺りに建物も木々もないひらけた荒野。遠くを見渡せば街が見えるため、住民に危害が及ばないよう立ち入り禁止のテープが普段から張り巡らされている。

どうやらここはよく異怪が現れる場所らしい。

そしてその荒野の中心に強く存在を放つ異形の化け物、

今回の討伐対象である上級クラスの異怪だ。


「討伐数は2体、数は少ないが本来は仮隊員程度が戦う相手ではない。間違っても舐めてかかろうなんて思うなよ、最初から全力で行け。死ぬぞ。」

(あれが上級……確かに存在感もオーラも中級とは比べものにならないが────────……)


(特級に比べればなんてことない。あのとき感じた恐怖……震えた手。あれはまさしく死の圧力だった────)


白銀は異怪から目を離すことなく頭の中で忘れられないあの出来事を思い出す。

遠くに居たとはいえ間違いなく感じた敗北、本能で感じ取った死、あのとき城据がいなければ己は人生を終えていただろうと。


「赤炎君、大丈夫かい?」


そこまで思考を巡らせた後、風鳴の声がした方を見れば赤炎の顔色が悪い。額には汗をかき、表情は暗い。久瀬も流石に心配なのか声を掛ける。


「おい大丈夫か?腹でもいてーのか?」

「いや.....大丈夫だ。心配してくれてありがとな、風鳴も」


赤炎は暗い表情から一変して笑顔を2人に向けた。


「当たり前の事を言っただけだよ、礼を言われる程のことじゃないさ」

「そーだぜ」


先程の暗い雰囲気は嘘のように明るくなったため、白銀は赤炎についてそこまで気に止めなかった。


「本当に大丈夫だな?なら時間が惜しい、任務を開始するぞ」

「はい!」


一連の流れを見ていた落葉は赤炎に確認をとった後、右手を勢いよく前に出すと同時に合図を出す。


「任務開始!」


合図とともに久瀬達は走り出す。今回は上級クラスの異怪だが、命の危機に瀕するようなことがあれば先輩が助けてくれるらしく気持ちはだいぶ穏やかだ。


「異怪に何か異変があればすぐに逃げるように!!」


落葉の声が後方からしたため6人は逃げる、という言葉に疑問を持ちつつも活気の良い返事で返した。

久瀬達の姿を見送った後、彼は声だけを城据に向ける。


「城据第一席はどう読んでいますか、今回の異怪」

「"しねーならしねー"で楽だ、だがしたらしたで俺達が片付ける、そんだけだ。第一上級以上とやるたびにそんなこと真剣に考えてたらキリねーぞ」

「いや真剣に考えてくださいよ、特級以上なら洒落になりませんよ。それに第一席だって勝てない場合もあるんですよ?」

「面倒くせーなー、今回は上級なんだからよっぽどのことがない限り大丈夫だろ。俺はパッパと終わらせて帰りてえーんだよ」

「私情10割ですね」

(ま、この人なら大丈夫って何故か思えるんだよな)


あいも変わらずやる気なさげに胡座をかいて座っている城据をよそに落葉は注意深く異怪を観察する。


(だがもし、もしそうなることがあればすぐにあいつらを逃さないといけない...俺の手でやれるか?)


睨むように久瀬達を見つめる落葉を、城据は新しい煙草を取り出して言った。


「おい落葉、心配すんな、面倒くせーがもしそうなったら俺がやる、おめーはガキ共を逃がすことだけを考えてればいーんだよ」


煙草をさしながら言ったその言葉は、おそらく城据なりの気の落ち着かせ方だろう。それは聞かなくとも分かったことだった。


「.....!ありがとうございます...」


そう、全ては起こってからの心配だ。


─────

今はまだ肌寒い風が頬に触れ、髪が流れに逆らって強くなびく。全身で絶え間なく呼吸を繰り返しそのリズムは十人十色。ただ足を動かし目的の場所まで体を運ぶという行為に久瀬は一人、滝のように汗をかいていた。


(なんっで、、!こんなに遠い、、場所から、、、始めんだよ!!)

「異怪に気付かれないためだろ」

「心読むなや!!!」

「確かにいつもより距離が遠いな、始まる前から薄々思っていたが、、、」 

「まあ疑問に思っていることは全部後でまとめて聞こう!」


先頭を走るのは白銀と風鳴、ほとんど並列になってはいるが係、矢部、久瀬、赤炎の順になっている。 

異怪のもとへいち早く向かいたい白銀は、更に早く距離を詰めるために思い切り前方に踏み込んで高く飛ぶ。氷で足場を生成、対空が終わり氷に足をつけると同時に足場を蹴る。その過程を何度も繰り返し徐々に加速していく中で白銀はもう他者の声が届かないほど進んでいた。


「あいつあの野郎!上級だぞ?!一人であんなに先々行って大丈夫なのかよ!!」

「良くないね、僕も先に行くよ。皆、また後で」


そう言い残し瞬く間に風となって風鳴は白銀の先へ消えていった。


「あいつの祝福って風になれんのかよ?!」

「いや、違うなそれは!」

「うおびっくりした!!んな近くでデケー声出すなよ!」


久瀬の考えを即座に否定したのは矢部。

たいして距離も離れていないのに大きな声を出した矢部に驚いたが、ちょっと心臓が止まりそうになっただけで大した問題ではない。


「それはすまん」

「いや別に...てか違うってどういうことだよ」

「ああ、風鳴の祝福はな、単に風を生み出して操るだけだ。今彼が風になったように見えたのは"風に乗った"からだ。つまりそう錯覚してしまうぐらい速かったというわけだな!!」

「いやそれもあんま意味分かんねーよ、なに?祝福ってそんなこともできんのか?」

「まあそれに関しては努力あるのみだな!!俺も風鳴のそれを見たときは驚いたが初めからできたわけじゃないと言っていた!」

「つまり祝福の応用ってことか」

「そういうことになるな!!」


この耳が痛くなる声の大きさが矢部の通常声量なのか、ボリュームが下がることはない。証拠に大人しそうな係は会ったときと何一つ変わらない顔をしている。いや、これは諦めたという方が近い。


「.......皆んな、そろそろ気を引き締めたほうがいい」


係が主に久瀬と矢部に向けて話しかける。小さい声だが三人の耳には良く通った。

その声とともに二人は喋ることをやめ強く意識を異怪に集中させる。異形の怪物はもうすぐそこだ。小さな石の欠片が久瀬の頬を掠め、突風に片目を閉じる。

先に異怪のもとへと向かった白銀と風鳴はすでに交戦を開始している。異怪は二人に夢中になっており、久瀬たちに気づいているような様子はない。


「よし、異怪はこっちに気づいてない...が慎重にいこう」

「おお!」

「ああ!」


三人は大きく一歩踏み出すとそれぞれが祝福を発動させるため構えた。


その一方で先に戦闘を始めていた白銀と風鳴は派手に己の技をぶつけていく。

白銀は、攻撃の手を緩めることはせず目線だけを風鳴へと向ける。その目には、僅かな嫌悪が入り混じっていた。自身に向けられていた視線に気づくと、風鳴は笑って白銀の方へと顔を向ける。入り混じる感情には気づかないフリをして。


「えっと...どうしたのかな白銀君」

「......お前が来なくても、俺だけで十分だった」

「それは頼もしいね。でもこれは合同任務だから許してくれないかい?」

「....フン」


鼻を鳴らしながら、目線だけだったはずの意識を今度は顔ごと反らす。白銀の態度に内心呆れつつも風鳴は改めて異怪と向き合う。無論、この(かん)も攻撃の手を止めたことはない。


(強いな...白銀君は平然としてるけど中級に比べて明らかに攻撃が通りづらくなってる.....)


低級、中級のときよりも威力の高い技をもう何発も打っているが効いている気配がない。それに比べて異怪の攻撃は徐々に威力が増している。一度でも受ければ重症は避けられない上に、死ぬ可能性のほうが格段に高い。


(あ、)


少し離れた異怪の後方に4つの影があった。あとから追いついた久瀬たちだ。見ればこちらに意識が向いているため、異怪は久瀬たちに気がついていない。これはチャンスだ、と、風鳴はさらに意識を集中させるために両手に祝福を込める。一度久瀬たちの方に顔を向け、無言で合図を送る。気づいた久瀬と赤炎は何のことかと首をかしげたが、今まで共に行動をしていた矢部と係には正しく伝わったようだ。

両手に込めた小さな風を大きくさせていく。穏やかに渦を巻く風は徐々に自然の脅威へと姿を変えていく。

 

(威力は弱くてもいい....大事なのは異怪に皆んなが居ることを気づかせないこと...!)


一回り、また一回りと大きくなっていく風、そして風鳴は再び矢部たちの方に顔を向け頷く。

その様子を捉えた矢部が大きく声を上げる。


「今だ!!皆んな祝福を発動させろ!!」


久瀬たちは即座に祝福を発動させる。

同時に、風鳴の祝福が荒々しく


─祝福【(かぜ)(とも)に】─


異怪に向けて放たれた。

第二フェーズの始まりだ。



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