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そして、物語はつづく  作者: 矢月
【第一章】祝福の英雄と名も無き英雄たち
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【第11話】「歯車」


城据の背後から現れた人物に久瀬は驚きと不平な顔を隠せなかった。


「久瀬君、白銀君こんにちはー!!和羽ですー!!」

「なんっでお前がここにいんだよ!」

「第六の任務ですよ!久瀬君達と同じです!」

「そうだー、今回たまたま近くにいたのがこいつらだったってわけだ。」

「和羽さんの知り合いなんですね」

「和羽ちゃんこんなイケメンと知り合いなのー?!羨ましぃー!」


和羽と同じ班になった新人隊員は口々に喋り始める。一人はイケメンなどと言っているが決して久瀬のことではない、白銀のことだ。


「城据第一席、さっそく隊員の治癒を始めてもよろしいですか?」

「おう、頼むわ」


久瀬には和羽が、白銀にはツインテールの少女が、赤炎には髪の長い女性がそれぞれの前に座り治癒を始める。3人を包み込むような温かな光が現れ、徐々に己の疲労と傷を癒やしていく。


光がきえた後、久瀬は自身の手を開閉したり辺りを軽く走ってみる。


「うぉおおー!頭痛くねー身体痛くねー!」

「本当だ…」

「これが治癒系の祝福か…」


久瀬ほど大々的には喜んでいないものの、赤炎は笑顔を浮かべる。白銀は喜んでいるのだろうか、いつも通りの無愛想な表情だ。


「うん、3人とも上出来ですね。」

「「「ありがとうございます(!)」」」

「はい、それでは城据第一席、我々はこれで失礼します。」

「おー」

「ありがとうな!」

「サンキュー!」

「………」


それぞれお礼を告げ、立ち去ろうとした時────


━ズドンォ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ン!!!━


後ろから轟くような爆発音が響き、全員が音の方へと反射的に振り向く。そこには数km先に異怪がいた。のだが…


「なんだありゃ…でけぇ…」


今までに見たことのない大きさの異怪だった。既に周囲の建物からは煙と炎が昇っている。


「あー…ちょっと不味いな…ありゃ少なくとも特級以上だ」

「特級ですか?!」


異怪に気を取られていた7人は呟かれた言葉に城据の方へ向く。

異怪には危険度を分かりやすくする為に大まかに六つの階級に別けられている。上から

異神級(いしんきゅう)」「怪害級(かいがいきゅう)」「特級」「上級」「中級」「下級」だ。

下級クラスなら新人隊員程度でも倒すことが可能であるし中級なら新人隊員が数人集まれば対処可能だ。上級クラスならば一般隊員が数人いれば倒すことができる。

だが明確に変わるのは特級からである。特級クラスを倒すのは一般的に副隊長クラスの人物だ。


本来ならばこの場にいる誰も倒すことは出来ないはずだった…。が、この場にいる、1人だけ特級を倒すことの出来る人物が。


「よーしお前らよく聞けー、あいつは俺が倒す、お前らは間違っても倒しに行こうなんて思うな、確実に死ぬ。だからお前らがすることは周囲の避難誘導とあいつの近くにいる雑魚の処理だ。分かったなー」

─了解!!─

「じゃあいけ!」


7人が走り出したのを城据は見送りながら、顔を異怪の方へと上げる。

祝福【絶対率(ぜったいりつ)の銃者(のじゅうしゃ)】によって右手に銃を顕現させた後、


「まぁ…15の2…いや3ってとこだな」


そう呟きながら銃口を異怪へ向けた。この異形の化け物を倒して、己の口にくわえたままの煙草に火をつけるために。


─────

7人は走り出した後、効率をあげるために四方に分かれた。

それぞれが現れた異怪を倒しながら周囲に残っている住民が安全に避難できるように誘導する。

久瀬はあらかた避難を完了させると、他に逃げ遅れた人がいないか探す。


「おっ…とすまねぇ!」


脇腹辺りに衝撃を感じた久瀬は、それが人にぶつかったと認識し軽く謝罪した後その場を去ろうとする。だが久瀬は袖を引っ張ら動きを止められる。


「うおっ!何すんだよ…」

「それが謝罪?!信じられない!ほんっと人間ってやーね!」


久瀬の前に立つのは金髪の長い髪を大きな赤いリボンでハーフアップにしている幼い少女だった。


「アモル知ってるんだから!どうせ大してもうしわけないとかおもってないんでしょ!」

「はぁ?!思ってるから謝ってんだろ!」

「じゃあちゃんとしてよ!手と頭をじめんにつけて、ごめんなさいって!そうしたらアモル許してあげるわ!」


アモルと自身を名乗る少女が要求したのは、俗にいう土下座だ。だがぶつかってしまったにしろ一応謝ってはいる、それにこんなことで土下座など出来るものではない。この行為は、久瀬の"小さな子供に土下座をして謝る自分"という情けない光景を作るものである。そんなの久瀬のプライドでは到底出来たものでもない。


「ふっざけんなできるかぁ!俺は謝っただろ!てか早く離せよ、他のやつら避難させねぇと駄目なんだよ!周りにいる異怪も倒さねーといけねぇしよ」

「だーめ!」

「だめじゃねぇ!」

「だめだめだめだめだめだめったらだめ!」

「あ~〜〜〜〜〜〜もぉー!!」


久瀬は少女にうんざりしていた。ならもうプライドなどどうでもいいからさっさと土下座をしてこの場から去らせてもらおうと考え始めた。そのとき──


「なっ!くそっ!」

「うわっ!」


現れた異怪に久瀬は反応し、少女を押し飛ばす。


「ちょっと!急になにする──」

「黙ってろ!後ろを見てみろ!異怪がもうすぐそこにいる、死にたくなかったらいつまでも謝れなんてぐずぐず言わず今すぐ逃げろ!」

「だめ!」

「駄目じゃねぇ!もういい、俺は行く!とっとと逃げやがれ!!」

「あっ…!」


今だ否定の言葉を叫び続ける少女をよそに、久瀬は異怪を倒すべく走り去って行った。

少女はただ、静かに怒りを浮かべながらその場を見つめ続けた。



「皆さん落ち着いて下さいー!焦れば冷静な判断が出来なくなります!隊員の指示に従って行動して下さい!」


和羽の組の教育係である米倉(よねくら)は、さすがと言うべきか冷静に避難誘導を促していた。特級の異怪は本来副隊長クラスな為、米倉では到底太刀打ちが出来ないはずだが、こうして焦るべき事態でありながら心すら冷静でいられるのも、城据がここにいること、そして信頼しているからだろう。


「あっあのすみません!あそこの瓦礫にまだ子供がいるんです!!まだ5才なんです!助けて下さい!!」


米倉に縋るように頼み込んできたのは若い女性だ。おそらく瓦礫に挟まった子供の母親だれう。


「分かりました、ここは危険ですからお母さんは先に避難所へ」

「でっでも!!」

「大丈夫です、お子さんは必ず送り届けます」


焦っている者にこそ冷静に対応する。

今だ不安そうな母親に笑みを浮かべると、安心したような顔で感謝を述べながらその場を離れた。

米倉は母親が指さした方向へ体を向け、子供を助けるべく走って行く。

子を母のもとに届ける為に、隊員としての務めを果たす為に。



久瀬、白銀、赤炎が下級クラスの異怪を倒したながら避難誘導、和羽、同じ組の山下(やました)川上(かわかみ)は避難所で負傷者の治療、米倉は避難誘導をしながら負傷者の治療、城据は特級クラスの異怪の討伐。


各々がやるべきことをしながら少しずつ事態は収まっていく。


─────

「オラァ!!!」


久瀬が異怪を倒したところで辺りを見渡せばもう異形の化け物の姿はなかった。

どうやら全て倒しきったらしい。


「あれ、いつの間にかあのくそでけぇ異怪倒されてる、気づかなかった。」


逃げ遅れた人も久瀬の周りにはいなかったので今回のMVPである城据の元へと行く。彼がいなければ事態はさらに酷くなっていただろう。

途中で白銀と赤炎と合流し、城据の元へ着いたときには米倉はもういた。

手を振る米倉に久瀬と赤炎は振り替えして、今日の任務は本当に終了した。


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