【第10話】「空はいつも知っている」
初任務を終えた久瀬、白銀、赤炎の3人。一番下の階級である下級ということもあり特に傷も負うことなく帰還していた。
「そーいやあんたクソつぇーんだな!隊員はみんなあんなレベルなのか!」
「あ?あんたじゃなくて城据さんだろうが!もしくは城据隊員!」
「うっ!すまねぇ!」
「すまねぇじゃなくてすみませんな!」
「お前は敬語も使えないんだな」
「うるせぇーよ!お前はいちいち口だすな!!」
「まぁまぁ落ち着けって!先輩の前だぞ」
「それよりも、本当に隊員はみんなあんなレベルなんですか?」
「あーそれは─────」
「いや、違うぞ。」
落ち着いた低い声、他の隊員と違う隊服、水色交じりの白髪、これが当てはまるのは一人しかいない、
─九操副隊長(?!)─
一同の声が重なった、3人は驚いている様子だったが城据は特に表情を変えることなく新しい煙草に火をつけた。
「どうしてここに?!」
「まぁちょっとな。それよりもさっきの話なんだが、あれは違うな、本当はそうであって欲しいんだが…」
「隊員のレベルが皆んな城据さんくらいって話ですか?それが違うのなら?新人教育係は一般隊員がするんですよね?」
「いや、普通はそうなんだが城据は違う、なんたってこいつは…」
「副隊長候補第一席だからな」
3人は目を見開き口を開けたまま固まっていった。無理もないだろう、
異怪神軍には位が存在する。
部隊の中の頂点は隊長、そして次に副隊長だ。次期隊長は副隊長がなるわけなので繰り上がりということになる。
副隊長の下には候補が第三席まで存在し、この中から次期副隊長を決める。第一席は副隊長候補の中で一番有力な人物に与えられる位だ、変動はあるものの、つまるところ部隊のNo.3ということだ。
3人の中に驚きはあったものの同時に納得もした。そんな人物ならばあの強さにも納得がいく。
「まぁそういうことだから城据を他の隊員と同じだとは思うなよ。」
九操は城据に向かって満面の笑みを浮かべた。城据は少し引いている。
「でも普通はって、どうして教育係なんかになったんですか」
「こいつがサボっていたからだな、その罰だ。よかったなお前達、普通じゃあり得ないことだからな!部隊のNo.3が新人隊員の教えにつくなんて」
それじゃあ頑張れよと城据の肩を叩くと何故か来たときよりも機嫌を良くしながら帰っていった。それを城据は九操が見えなくなるまで見つめた後、余計なことを言ってくれるなと言わんばかりの表情を白銀に向けた。確かにサボりと言っていたときの九繰の表情は笑顔だったが、かなりの圧も含まれていた気がする。
いくら副隊長候補第一席といえど本物には逆らえないんだと3人は悟った。
「はぁ…お前ら、任務はこれで終わりじゃないぞー、まだ朝方だ、次行くぞ」
「うげぇーもう次いくのかよ」
「そういう組織だぞここはー」
「文句をいうくらいなら辞めろ」
「だーれがやめるかボケ」
「あっ行く前にちょっとお手洗い行ってきていいですか?」
「おー早く戻って来いよ」
空は果てしない。この地救を包み込み、いつも見守っている。故に知っている、生命の行方を。だから知っている、愚かな生命を、対立する生命を。
しかしどうすることも出来ない、空は包み込むだけ、何も出来ない、する術はない。
だから良いのだ、何もできないから、物語は進む。
赤炎が戻ってきた後、3人は城据と共に新たな任務へと向かっていた。
「次は試験ときみてーな下級じゃなくて中級だ、今のお前らじゃ苦戦するかもなー、だが一人じゃねぇ、協力し合えば倒せる相手だ。」
「それともう一つ、今回俺は戦わねぇお前らの力だけで倒してみろ。」
「まっかせろ!」
「「分かりました」」
─────
今回の標的である中級の異怪は2体、怪我人や死者は出ていないものの周囲の建物がいくつか破壊されている。一体一体が5階建てのビルほどの大きさだ。
「よーし、んじゃあー行け!」
合図と共に3人は走り出す、だが正面からの突撃の為異怪に気付かれてしまった。片方の異怪は長い尻尾を使って3人を叩き潰そうとする。3人は地を蹴って後ろに飛びギリギリのところで躱す。未だ地に落ちている尻尾の上に白銀は乗る。
異怪は白銀が尻尾の上に乗ったことに気づくと勢いよく空中へと飛ばす。白銀は異怪を見下ろせる程高く滞空すると、まるで予想通りと言わんばかりに笑みを浮かべ自身の体の2倍ほどの大きさの氷柱を異怪に向けて放った。異怪は氷柱を破壊しようと再び尻尾を上げる。しかし下にいた赤炎が尻尾に向かって攻撃したため届くことなく氷柱が直撃し、異怪は消滅した。
白銀が空中に投げ飛ばされたのと同時刻、久瀬はもう片方の異怪と対峙していた。手始めにソフトボール程の大きさの水をいくつか生み出し異怪にぶつける、威力はそこそこあったはずだが効果殆どみられない。その様子に久瀬は軽く舌打ちをした。
「やっぱ下級のときみてぇにはいかねーか」
目の前の異怪の強さを再認識し、今度はいつも通りの技を放つ。異怪は両手でそれを受け止めていたが穴が空く。今だと思い込みもう一度同じ様な技をぶつける。防ぐ手段を失った異怪は攻撃を全て受けてしまい消滅した。
「っよし!中級も意外と行けた──なっ!」
右足のバランスが崩れかけ倒れそうになるが持ちこたえる。
「くそ、さっきみてぇーな威力はやっぱあと1回が限界だな」
「おーい久瀬ー!そっちも終わったらしいな!こっち来いよー!」
赤炎の呼びかけに久瀬は反応し、2人の方へと走っていく、疲労はかなりあったが別に倒れそうな程では全くないので問題はなかった。
「終わったぞー!」
「おー、お前らくらいなら中級も問題ないなー、よーしこのまま次行くぞー。この調子でバンバン倒せー」
「先輩は倒さねーのか?」
「俺はお前らの見るから倒さねー」
「あんた…サボろーとしてね?」
「いーや、そんなことするわけねーだろ、ほらさっさと行くぞガキんちょども」
「ガキじゃない…」
「ガキだろまだまだ」
「まー次が多分最後だ、気合い入れていけよー」
「階級は?」
「下級と中級」
白銀と城据のやり取りを最後に、4人は最後の任務へ向かった。
雲一つなく青く澄み、太陽が辺りを照らす空は今日も世界を包み込む。空は平和だ。
「うわ…結構いるぞ…」
「あれを3人で倒すのかー」
「見えるだけでも6体、見えないだけでまだいるだろうな」
「まぁやるしかないか!」
「おう!」
「もとよりそのつもりだ」
意気込んだ3人を城据は見送りながら、何だかんだで良いチームになるだろうなと煙草を吸いながら思った。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
久瀬は氷柱状の水を生み出し異怪にぶつける、ぶつけた相手は下級の異怪だったらしく威力はそこまでなくても効いていた。すかさず同じものを3回ほど撃ち込む、そこへ白銀が氷柱をぶち込み異怪は倒された。
「あっ!俺が倒そうとしたのに何すんだ!」
「お前がさっさと倒さないからだろ、それに感謝しろ、お前の方に行っていた異怪を2体も倒してやったんだ」
「なっ…ちっどこまでもムカつくやろーだな!」
異怪を横取りされたことに腹が立つももう2体も倒しているという事実にも腹が立った。もとより好戦的な久瀬は対抗心が芽生え、白銀より多く倒してやると目標を立てた。それを横目でみていた赤炎は、相変わらずやってるなーと言わんばかりの表情で自身の前にいた異怪を倒した。
残りの数は5体、久瀬は激しく響く頭痛に目を少し伏せ、2人の後に続いた。
「おりゃああ!!」
異怪は一体、一体、また一体と減っていきついに最後の一体になった。偶然にも異怪は久瀬の方へと向かっている。
「おし!最後は俺が倒す!」
久瀬が祝福を発動させたその時─────────
「なっ?!」
目の前の異怪が二重になり、前へバランスを崩してしまう。その一瞬の隙をつき、異怪は久瀬の腹部に強烈な一撃を撃ち込む。そのまま久瀬は血を吐きながら壁へと打ち付けられてしまう。
「久瀬ー!大丈夫かー!」
「ちっ、あのアホが…!」
赤炎は久瀬の元へ、白銀は異怪の元へ向かおうとした。が、一歩踏み出した足はバランスを崩し、片膝を付いてしまう。
(んーやっぱりかー)
何度立とうとしてもまたバランスを崩してしまう。しかし異怪は2人に襲いかかる。
「くそっ!」
立てないならその場から攻撃すれば良い、そう思った時には遅かった。異怪の歪な手は、白銀の目前だった。その手を見つめたまま白銀は動かない、
久瀬と赤炎はもう終わりだ、そう思った瞬間
━ズドン━
一筋の黒い光によって異怪の手に穴が空き、そのまま体に大きな風穴が空いた。
3人は光が来た方を見る、そこには
「おーお前ら大丈夫かー、大丈夫じゃねーなー」
「城据さん!」
「久瀬は遅れてもいーからこっち来いー」
「お、おお!」
久瀬は城据の元へ、城据は2人の元へ行く。未だ赤炎と白銀は膝をついたまま動けない。
「んー結論から言うと祝福の疲労だな。お前らも前から少なからず疲労は感じてただろ、それが今回で限界だったって感じだなー。顔に手でも当ててみろ」
言われた通り顔に手を当てると手に違和感を感じた。見れば水分が自身の手についている、これは汗だ。
「その様子じゃ今気づいたんだろ、ま最後の任務で良かったなー。でもそれじゃあ帰れねぇだろ、だから呼んだ」
「?誰を…?」
城据の背後から現れた人物、数人いたがその内の一人は久瀬と白銀が知る人物だった。




