【第9話】「初任務は凄い先輩と嫌いな奴と良い奴」
「それで、君達には明日から任務を遂行してもらうわけだけど、君達はまだ弱いからね、異神祭までの3ヶ月間は新人育成期間になってるんだ。だから先輩隊員1人と新人3人の4人組で行うようになってる。仲間と協力して学ぶことは学ぶ、これが基本だから覚えておいてね。」
次に始まったのが班分けだ、日によって変わるのかと思ったがそうでもないらしく、3ヶ月間固定だそうだ。久瀬は気の合わないやつと白銀以外ならなんでもいいと思い、そして、神に祈った。
結果白銀と組まされた。
久瀬も露骨に嫌な顔をしたが白銀はそれ以上に嫌悪満載の顔している。互いに隠す気などない。
そこに元気で陽気な声がした。久瀬と白銀と組むもう1人の声である。
「えっと〜なになにお二人さん知り合いな感じ?じゃあオレとも仲良くしてねー!」
燃える太陽のような髪色をした少年。前髪を黒のヘアバンドで上げているが所々髪がでている。身長は久瀬と同じくらいだ。
「オレは赤炎縷々、女っぽい名前だけど漢字で書くとゴツいから!よろしく!お前らは?」
「俺は久瀬颯斗、よろしく!」
「…白銀雅」
白銀はまた騒がしい奴が来たと言わんばかりの表情だ。久瀬は白銀と違って好意的そうな赤炎に歓喜した。これでもし3人目も白銀のような人物であれば3ヶ月間は不機嫌確定だ。
「久瀬に白銀な!あっ、オレ15なんだけど…もしかして年上?!」
「いや、俺も15だぜ、今年で16になる!」
「…15」
「おーまじか!同年代か!じゃあオレのことも赤炎って呼んでくれよな!縷々でもいいぜ!」
この一連の流れで久瀬が赤炎に抱いた印象は良い奴。和羽のようにグイグイ来るタイプだと思ったがそうでもなさそうだ。率先して会話の輪を広げる、おそらくチームに1人は居たら嬉しいムードメーカー的な存在だった。白銀も相変わらず無愛想だが久瀬に向けるような嫌悪感は抱いていないようだった。
久瀬に向ける印象が"サル"であれば、
赤炎に向ける印象は"騒がしい奴、でも悪い奴ではない"といったものだろう。
久瀬と白銀、2人は赤炎が来たことでどこかホッとしていた。
「それじゃあ班分けも終わったから寮に案内するよ。因みに3人部屋だから、班分けしたメンバーでよろしく。」
爆弾みたいな発言をした。
連れてこられたのは第二部隊の建物から3分ほど歩いた場所にある大きな建物、隊員の多数がこの寮にいるらしい。因みに多数というのは異怪がどこに現れても対処できるように各都道フケンに一つは異怪神軍の拠点があり、そこにも寮があるためだ。拠点といっても各部隊の本拠点は隊長が存在するところの為"支部"という形にはなる。
「ここが君達の部屋ね、入ったらもう休んでくれて結構だから。」
部屋の中は意外にも1LDKの部屋だった。3人で暮らすとなれば狭いともいえるがもう少し狭いものだと久瀬は思っていた。さすがに寝具はベッドではなく敷布団だったが寝られれば何でもいい。あとはテレビとテーブルとイスにソファー、と至ってどこにでもある家具だ。
「あ、これ第二の隊服じゃん」
「明日はこれで来いってことか」
「疲れた、俺はもう寝る」
「はっ?おい待てよ!」
「〜〜!あいつやっぱ嫌いだわ!俺風呂行ってくる!」
白銀の行動に苛ついた久瀬はそそくさと風呂場へ行ってしまった。そこには赤炎だけが残された。
「ありゃりゃ、これ大丈夫かなー」
「……………」
─────
「おーい久瀬ー起きろー」
赤炎の声で意識が覚醒する。霞がかった視界を手で擦りながらゆっくりと目を開く。カーテンから射し込む光はない、不思議に思い時計を見るとまだ5時だった。
「まだ5時じゃねーか、何でこんな早いんだよ」
「いやそうなんだけどさー、任務がいつから始まるとかそーゆー指示なんもなかっただろ?だからとりあえず早く起きといたほうが良いかなって」
「あーなるほど、お前頭いいな!」
「だろー!白銀も起きてるから早く行こうぜ!」
(うわあいつ居るんだった…!)
朝から最悪な気持ちになりながらも久瀬はリビングへと向かうのだった。
顔を洗い赤炎が用意してくれた朝食を食べた後、隊服に身を通した。
時刻は6時を過ぎた頃、
玄関の扉が勢いよく空いた。
「よおーお前らー起きてっかぁー?起きてんなー、じゃあさっさと外出ろー!」
突然の状況に3人は唖然としている。が、一番始めに口を開いたのは久瀬だった。
「いや外出ろじゃねーよ!お前誰だ!!」
「あ?誰ってお前らの教育係!先輩!分かったらいつまでも突っ立ってないで来い」
教育係と言ったのは口に火をついていない煙草を咥える短髪の黒髪の男。すでに姿が見えなくなってしまったので急いで追いかけた。
「えー、あー俺は城据柳、ったく何で俺が教育係なんてしなきゃなんねーんだよ。まぁあれだ、教えるとかよく分かんねーから見て学べ。」
あからさまに面倒くさいという表情、それよりも教育係が教えるのが分からないとは普通に問題ではないだろうか、とにかく3人の頭に浮かんだのは"ハズレ"の3文字だった。呆けていると名前を聞かれたので答えたが特に反応することもなく煙草に火をつけた。
「これから異怪討伐しに行く、階級は下級だから下手な真似しねー限りは死ぬこともない。があっちは俺達と同じように群れでいる、間違っても舐めてかかろうなんて思うなよー」
「おう!」
「はい!」
「はい」
「おうじゃなくてはいだろーがくそガキ」
城据が久瀬に拳を食らわせたところで初任務が始まった。
─────
「見えるかー見えねーと可笑しいけどなー」
3人の視界にうつるのは数kmほど先にいる5体の異怪。それぞれが異なった異形の形をしているが共通しているのは漆黒の身体を持つということ。
「じゃー倒すぞー、倒し方はー────」
城据は口に煙草を咥えながらどこから取り出したかも分からない拳銃を異怪に向けた。
すると銃口の間近に赤黒い稲妻が舞った。その稲妻は回転しながらやがて銃弾へと形を変えた。と同時に城据は引き金を引く。放たれた銃弾は形を変えた後もなお微かに稲妻をまといながら異怪へめがけて進み、異怪を貫く。銃弾が通った後とは思えない程の大きな風穴が空き異怪は消滅、4体へと減った。
「えーこうだ」
「いや分かりませんよ!」
「いや倒し方っても祝福なんて人によって違うだろ、まーとりあえず威力のつえー技ぶっ放したらいーんだよ」
「うぅ…久瀬と白銀は分かったのか?」
「あぁ、ようは試験ときみたいにやればいいってことだろ?下手に難しい説明されるよりよっぽど分かりやすいぜ!」
「もとより、この先輩隊員は見て学べと言った、説明を求めるほうがおかしい」
「えー!オレが間違ってんの?!あっ!待ってくれよーーー!!」
先に行ってしまった久瀬達を赤炎は追いかけながら叫んだが、彼は楽しそうだった。何故こうも個性派揃いなのか、もとより異怪神軍はそんな奴らしかいないのだが。
3人は内心焦っていた、何故なら先程の城据の攻撃を見てしまったからだ。攻撃は遠ければ遠いところから放つほど威力は落ちる。誰だって顔面間近に放った光線と、離れた距離から放った光線のどちらが強いかなんてわかるだろう。だがそれでも光線が相手に効くのは、"一定の威力で放ち続けている"からだ。だが銃弾はそうはいかない、一度放てばそれきりで、それに干渉することは出来ない。ならばどうするのか、答えは単純で"威力の強い弾丸を放つ"こと、数km先にいっても威力が十分にある弾丸を放つこと、それだけだ。しかし祝福は、威力が強ければ強いほど体にかかる疲労も負荷も大きい、身体の限度をこえてもなお使用すれば負荷限界を起こし最悪死に至る。祝福とはそういうものだ。だから3人は焦っていた。そういうことが平然とできてしま隊員のレベルの高さに。それにまだ副隊長、隊長と上がいる。特に白銀はその事実に焦っていた。
(ただの隊員なのに…ここまでレベルが高いのか…!)
「はぁーオレここでやっていけるかなー」
「だっだだだだだ大丈夫だろ!俺らまだ新人!!焦んなよ!」
「いやお前が一番落ちつけ!」
「…気づいたか」
前を見れば異怪はこちらに気づいたようで襲いかかろうとしている。3人はそれぞれ3方向に別れ、一対一になるような形を取った。残りの一体は少し離れた場所にいるため後回しにすることにした。
「よっしゃああ行くぞーーー!」
久瀬が意気込み祝福を発動させた瞬間───
「!」
「っ!?」
「は?」
白銀と赤炎と対峙していた異怪と、離れた場所にいた異怪が2人を無視して久瀬の方へ向かった。
「なんでだよぉおおおお!!!!」
「どうしてだ?!」
「異怪は確かに俺の方を見ていた…なのに何故、」
「ぎゃぁあああ!一気に4体は無理無理無理無理!お前ら助けろやーーー!!!」
久瀬の叫びに停止していた体を動かし、異怪の方へと向かった。
白銀は木の上に登り上から氷柱を連射する、久瀬に気を取られてい異怪は成す術なく消滅した。
赤炎はマッチを取り出し火をつける。異怪に向かってなげマッチは宙を舞う。赤炎はそれが十分に異怪近づいたのを確認してから指を鳴らす。すると小さな灯火は弾けるように広がり異怪の身を包んだ後暫くしてから消滅した。
久瀬は逃げていた足を止め異怪に体を向ける。得意の渦めいた流水を生み出し異怪に近距離からぶつけ倒した。
あとは残り一体、今倒した異怪と一回り大きかったが3人はまるで他者に手柄を譲らんとばかりか全力で駆けていきながら、攻撃の準備をする。
放った瞬間は同時で、一斉攻撃を受けた異怪はけたたましい泣き声を上げた後消滅した。
「っと、これで全部倒せたか」
「…そうみたいだな、じゃ!早く先輩のとこ戻ろうーぜ!」
「俺1人で十分だった、お前らは先に帰っておけばいいものを…」
「んだと!それはこっちのセリフですー!」
「落ち着けってお前ら!」
久瀬と白銀は文句言う口は止めず城据の元へ戻っていった。
久瀬に起きたことなど等に忘れて…
「おーお前ら良くやったなーまぁ下級だし試験でやってるしやれなきゃおかしいがなー」
「いろいろ多いんだよ!素直に褒めれねぇのか!」
「こんなんで褒めてたらきりねーよ、面倒くせーなぁ。あー帰りたい、早く戻んぞー」
こうして久瀬、白銀、赤炎の初任務は幕を閉じた。




