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[失敗談]小火さわぎを三度、起こす

 コノハナサクヤヒメ、という女神さまを、あなたたちは知っていらっしゃるだろうか。


 天より下った天津神である天孫ニニギに国津神でありながら見初められ、彼のもとに嫁ぎ、一夜をともにし、その一度で懐妊するも、ニニギに浮気を疑われ、潔白を証明するために「天津国の火の皇子の子なら、火の中でも無事に産まれてくるでしょう」と言い、出産時に自らの産屋に自ら火をつけ、山幸彦や海幸彦たちを産んだ、最高に美しく格好いい、お強い女神さまである。浅間神社や富士山の主祭神は彼女なのである。山桜は彼女の象徴。司るものの一つは日本の古来からの木の花。その生育や芽吹き。



ーーでは、私にサクヤさまがどう関連するのか、説明させてください。


 私は、浅間神社の近くで生まれ育ち、名前を決められるとき、とある占い師から、ちょっぴり古風でなんだか格式も感じる「咲」の字が入った名前を提案されました。


 浅間神社の側の「咲」の字の入った名前ーー、日本では古来から言霊信仰というものがございます。


 つまり、私はーー、畏れ多くも、サクヤヒメさまに所縁と由来のある名前を賜り、呼ばれるーー、という人生が決まったので御座います。


 自分の名前を意識し、サクヤヒメさまに想いを馳せながら、私は大きくなりました。


 私にとって、一番特別な神様。それがコノハナサクヤヒメさまなので御座います。


 浅間神社に詣でる時にも、私にはご神罰などは下りませんでした。むしろ、私はご加護の方を感じていました。


 生い立ち厳しい身でしたが、私は自身の美しい名前を誇りに、支えにして、生きてきたのでした。



 そして、時は流れ~~。


 私は大学生になり、実家から持ち出されていた電気毛布を掛けて冬の日に眠っておりました。

 そうしたら、なんだか……変な音と焼き焦げるような臭いが胸元の辺りからしてくるではありませんか。


 私は上体を起こし、おののきながら、胸部に掛けていた布団を確認したのです。


 そうしましたら、昭和の中期ぐらいに作られた電気毛布から、煙が上がって臭気が漂い、布団は一部分猛烈に熱くなっているではありませんか!


 私は急いで起き上がり、電気毛布のコードを電源から引き抜きました。


 暫くハクハクと動く己の胸を押さえながら、私はサクヤヒメさまの事を思い返しておりました。


ーーお産のときにこれよりひどい火にまかれながら、よく御子さま方をお産みになられましたね?!


 と。


 やはりサクヤさまは、凄まじい女神さまであらせられます。


 


 また時はたち。


 私は首都圏と呼ばれる知らない土地で、今の伴侶と暮らしだしておりました。


 私は、お香やアロマオイルなどの薫りが大好きで、自ら調合したアロマオイルを一人しずかに楽しんでいたりしました。


 ある日の夜の事で御座います。


 私は安価に買い求めた、三角錐型のお香を焚こうと決めておりました。煙草を誰も吸わない家で、どこかからいつの間にか連れ合いが手に入れてきた、ライターを用い、私はお香に火をつけたのです。


ーー4つ、同時に。


 強い薫りで満たされたい心持ちだったのでございます。


 暫くは静かな夜が継続されました。

 しかし。連れ合いが仕事から帰るころ、つまり私がお香に火を点けたほんの少しあとの時間にーー、それは起きてしまったのです。


 4つ同時に点けられたお香から、煙が次々と上がり、閉めきった部屋に密閉されーー、 


 火災探知機が鳴り出しました。

 賃貸アパートの一室での出来事です。


『火事です!! 火事です!! ゥウゥウ~!!! 火事です!! 火事です!! ゥウゥウゥウ~~!!!』


 連れ合いも動揺を隠しきれていませんでした。家へ帰ったら、突然に火災がしらされるのです。


 私と言えば『マズイマズイマズイやっちまった、犯罪者だ、ころされるかもしれない、警察がくる、消防車で水浸しにされる、怖い怖い怖い』となっておりました。


 お香の火を連れ合いと二人して慌てて消して、この騒動はおさまりました。


 室内で4つ同時にお香に火を点ける行為は、かなりリスキーなのだと、私はその体験から学んだので御座います。


 

 また少し時はたち~~


 私は、よく知っている別の首都圏へ、連れ合いの異同に伴い、住処をうつしておりました。


 私ははじめて、IHの存在を知るに至りました。もう、若くはない年の頃でした。


 無知だった私は、T-f○lのケトルを手に、台所へと立っておりました。


 お湯はヤカンで沸かすもの、電機ポットでは100度に足りず、美味しいお紅茶は淹れられないもの、と相場は決まっております。


 私は、ヤカンとポットしか、知らない人間でした。しかし、お湯を沸かすには、まず入れ物に水を投入し、火に掛けなければいけない事は、余りに明白で歴史にも語られる真理で御座います。


 連れ合いも、このケトルを電源を入れて沸かすのだよ、と言っておりました。


 ええ、電源とは勿論、IHの事をさすので御座いましょう。


 この平坦な、黒い台地に、私は電源を入れ、水の入ったケトルを置けば、宜しいのでしょう。


 疑念も抱かず、私はT-f○lのケトルを熱したIHの上に置きました。


ーーそうしましたら。


 見ていて程なくして、明らかに人体に有害な臭いが立ちはじめ、もうもうと煙が立上り、あろうことかケトルの底が熔け出したのです!


 困惑しながら、私は急いでIHの電源をおとし、ケトルを持ち上げ部屋の窓を開けました。お香の時と違い、明らかに有害な煙と臭いであったためです。


 台所のIHの上は、タールをぶち撒けたように汚れておりました。


 熔けたケトルの底を恐る恐る確認すると、なんとタイヤのような物で出来ているではありませんか。


 火に掛けたらいけないヤツであることは、直ぐに判りました。


 しかし、観察するのが……、遅かったので御座います。


 仕事から帰ってきた連れ合いに、私は混乱しながら、平謝り致しました。


 私が熔かしてしまったケトルは、連れ合いの生家からの贈り物だったので御座います。


 泣きながらタールを拭き取ったこと、煙と有害な臭いが出てまだ台所が臭っていること、大事なケトルをお釈迦にしたこと等を、謝りながら私は説明してゆきました。


 連れ合いは『まぁ、無事で良かったじゃない』『でもさ、ふつう、間違える……?』と、優しく言葉を掛けてくれたのでした。


 ケトルは専用の置き代に入れ、置き代のスイッチを押せば良かったようです。



 以上が、私が起こした小火ぼや騒ぎのおはなし全てで御座います。


 コノハナサクヤヒメさまのご加護で、火伏せが出来ているのかもしれません。


 みなさまは、火の扱いに、くれぐれも用心なさいますよう。


 ちなみに、私は未だ消防車には水をかけられておりません。

 今回ノリノリで書き上げましたが危ないのでくれぐれも真似なさいませんよう。

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