[犬回]あたたかく軟らかなものを踏みました
ばっちい話です。
二回目、です。
家の中で、素足で、あたたかく軟らかいものを踏んでしまったのは、今朝で二回目なんです。
私は犬を飼っています。
ポジティブで陽キャで、自己肯定感が高くて、可愛らしくて、人間大好きで、褒められ撫でられるのも大好きで、常にany foodsを探して家の中を自由に嗅ぎ回り、盗みを犯し、人用寝具やソファーを独占したりする、そんな犬を飼っておるのです。
彼女は、私の娘みたいな存在です。
そして、一日に一度か二度、あたたかいものを落とします。多くの場合、それ用のシートの上に、気張って落とすのです。
しかし。[切れ]が悪い場合、お尻にくっ付けたまま密かに移動し[切れ]なかったものを、人間からは見づらい、落とし穴みいな、或いは灯台もと暗し的な場所へ[切れ]きれなかった分の、あたたかく軟らかいものを捻りだし、密かに設置している事もあるのです。
巧妙な罠を、彼女はたまに設置するのです。
ーー、二回目、です。
私がその罠を踏み抜いたのは。しかも素足でベットリいっちゃったのは、今朝で二回目です。
踏んだ瞬間は、それが何かは全く判りません。
ーーん? 何か軟らかいものを踏んだか?
不思議な触感なのです。小学校低学年で、図工で扱った粘土をよくこねくりまわし、柔らかくした時のあの感触ーー、それが、足の裏に感じれた、ような……、知ってはいる気がするけれど、よくわからない、そんな触感。
なんとも言えない不可解さで頭に疑問符が浮かびます。
ーー私はいったい、何を踏んだのーー?
そう思って、家の床の上と、自分の足裏の状態を、ようやく確認しはじめる訳です。
そしたらば。
茶色いんでございます、床も足裏も茶色いのです。
私は茶色がくっついた足裏を、足をあげながら観察します。
あたたかく、軟らかい、質量のあるものを、自分は踏み抜いたらしい?
だって足裏に食い込んで潰れているもの。床も茶色いし、泥地みたいに踏まれて擦れた後があるし……、
ねえ、嘘でしょう……、まさか、そんな。
いや、でも、コレは……さっき、あの子が出したのを流せる紙で包んでトイレに捨てて、自分の手を洗うためにやって来た洗面所で、踏んでしまった……、このあたたかく軟らかいものは……!
「Sucreさん、貴女……!!」
叱りはしません。だって彼女はもうソファーで寛いでいたから。
けれど思わず独り言って漏れるのです。漏れるのですよ、まあ漏れたわけだし、漏れちゃうんですよ。
そこからの私は迅速に作業をします。
トイレに流せるウェットティッシュで足裏と床の、茶色い、あたたかく軟らかいものを拭き取り。
浴室でボディーソープとシャワーを使い、手と足裏を丁寧に洗って浴室を出て。
両足を床につけるようになった後に消毒用の泡のフォームで洗面所の床の一部分を拭き取って。
使用したトイレに流せるウェットティッシュを、トイレに捨てたんです。
念のためもう一度手を洗って、洗面所から居間にもどると、こころなし、やりきってスッキリした顔をしてソファーの上で寛いでいる愛犬の姿が目に入ります。
叱りはしません。
怒りも微塵もありません。
ただ、二度あることは、三度あるかもしれない、そう思っている私がいるのでした。




