第七話 『黒護』
あらすじと、タイトル変えました。三度目です。これでどう変わるかな? ワクワク
ネアへの奇襲作戦が失敗に終わり、落胆していたのも束の間。
今度は兎人族の男の単独襲撃を受けていた。ネアは例のごとく、避難していた。
「トオリャァ」
兎人族の、火を纏ったライダーキックで吹っ飛ばされる。多分あばらにヒビ入った。
それにしても、こいつ良くネアがいるのに自分に襲撃できたな。自分だったらネアの威圧で心折れてるぞ。
「『魔力砲』」
早すぎてあたんない。それにしてもあばらが痛いな。ズキズキしてる。
「『天魔地』」
避難避難、っと。それから、ポーションで回復。毎回思うが、『天魔地』強すぎん?
いやぁ昼間の空は青いですn……
「フーン!!」
はぁぁぁ!? なんでここまでジャンプで来れるんだよ! い、いや、今は冷静になれ。
「『魔力砲』」
よしっ! 今度は当たった。自由落下を続ける兎人族に、『天魔地』を解除して踵落としを喰らわせる。
「ウがッ」
ドガァァァン。
兎人族は、ものすごい勢いで地面に衝突したので、砂埃が巻き起こった。だが、立ち上がってきた兎人族の姿が見えた瞬間、戦慄した。
は? なんでダメージがないんだ?! 当たったろ!? 意味が分からん。困惑しながら着地すると、踵のほうに痛みがあった。原因は何かと確認すると、
「火傷?」
なんでここに?
「セイッ」
「あぶなっ!」
油断も隙も無い。長々と考えてる暇はないんだ。戦いながら考えないと。
「フンッ」
「カハッ」
大丈夫。『紅天』で強化すれば、攻撃は相手に届く……それにしても外傷少なくないか? できてるの痣くらいだぞ。血を吐いても全然おかしくないダメージのはずだ。しかもまた、こっちには火傷。
「ハッ」
「タァ!」
また火傷。
「ウオオオ」
「クッ」
また火傷。また火傷。また火傷。……なんで? もしかしたら、あの火が関係してるのか?
でも相手は防御に徹してる。なんで攻め手のこっちが火傷するんだ。
より観察するために『紅天』で『魔力眼』を発動した。一か八か、訓練でもやったことはない。
「おぉ」
すると、まったく別の世界が見えた。相手の魔力の使い方が、目でわかる。
魔力が足に、手に……
「そいうことか!」
魔力を手に移動させることで、防御性を高めているのか! そのことが分かった瞬間、
自分の魔力は扉を開いた。
「『黒護』」
それは、防御に特化した、『魔力体漲』二つ目の派生。もちろんほかのステータスも上昇している。
「オリャ……?」
押し切れるとでも思ったのか? お前がなんとなーくやっていることを、こっちは明確に意識して、やってのけたんだよ。なんとなーくと意識とでは、意識のほうが強い。
「うおお」
「グハッ」
どうだ! 明らかに今までと火力が違うだろう。
「な……ぜだ?」
「お前喋れんのかよ」
腹を抑えてうずくまっている、兎人族の口から出てきた、意外な事実。(というか、口から何かが出てくること自体が、意外な事実なのだが)
……それはいいとして、正面からだと、経験の差で互角になってしまう。だったら、この前手に入れた、あれで応戦しよう。
「『同化』」
こんなこともあろうかと、『紅天』を周囲に振りまいておいたのだ! ドヤァ。
というわけで、後ろに回って現れ、後頭部をキックした。
うん! ネアはやっぱり異常なんだ。だって普通だったら、あんな感じでぶっ飛ばされてるんだから。惨めな感じで……いやいや、あれが普通だから。惨めなんかじゃ全然ない。
…………全然立たないんだけど。
「気絶してる?」
だったら好都合、とネアのところに向かった時。
「馬鹿! 後ろ見ろ!」
「え? なにをいってr――」
ドカッ
吹っ飛ばされた。多分、さっき自分がやったことを、あの兎人族にされたんだろう。惨めはこっちだった。
油断大敵、ネアがそう教えてくれたのに。どんな達人でも油断すれば死ぬって。
「これ……思った以上にやばいな」
『黒護』を発動していなかったから、『紅天』で、急所にキックを受けてしまった。くらくらする。
これが脳震盪という奴だろう。
「ソオリャァ」
相手の強烈な攻撃を、『黒護』で固めた腕をクロスさせて受け止めた。
だが、脳震盪のダメージがデカかった。衝撃を抑えきれず、後ろにまた吹っ飛ばされてしまった。
そこからは地獄のようだった。相手の一挙手一投足に踊らされていた。ダメージを受ける前までは何ともなかった蹴りが、パンチが、恐ろしいほど強く感じた。まるで岩石でたたきつけられているような。
ふと、ネアのほうを見た。無表情だった。いや、失望していた。何の感情も浮かべていないように見えるが、あれは侮蔑の目だ。そう分かった瞬間、立ち上がる気力ができた。
「まだ……終わりじゃないの?」
「黙れクソ兎。お前に腹立ってきたわ」
掌に、水晶玉みたいな『魔力砲』を創った。精度120%
「死ね」
その『魔力砲』を放った。辺り一面が光に包まれていった。
平らだった地面が、デカいクレーターになっていた。
自分の攻撃から避けるために創った『天魔地』から、クレーターの端に降りた。そして、その中心で倒れている兎人族に声をかけた。
「まだ生きてんだろ。死んだふりすんなよ、セコくさい」
中心へと歩きながら続ける。
「さっさと起きろ……こっちには」
「これがあるんだからさぁ!」
そう言って、先程の水晶玉型の『魔力砲』を見せた。いや、『先程の』ではない。『紅天』で作った。
ただならぬ気配を感じて兎人族が、バッ、っと起き上がった。
「もう手遅れだよ。死んだふりなんてしなけりゃよかったのにな。さっきので味を占めたか?」
最後の「か?」を合図に、制御していた『魔力砲』を解放した。
また、一面が光に包まれた。紅色の光だ。
「……これは予想外」
もろに『魔力砲』を受けたはずの、兎人族が立っていた。その姿からは、黄色の魔力が噴出している。
「なんでお前がそれ使えんだよ」
その黄色の魔力は、ネアのスキルにもある、『疑似覚醒』を発動しているという証拠だった。
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