第二話 訓練開始
訓練は開始しません。世界観説明です。
「まぁネアが化けもn……ゴホン。すごいっていうのはわかったけどさ」
「おい。お前今、化け物って言おうと……」
「『体術』って何ですか!」
ずっと気になっていたのだ。『体術』なるものがネアのステータスにあることが。
「はぁ、まぁいいか。で、『体術』だな。『体術』ってのは殴る、蹴る、などの基本的な動作に技が加わったものだ。ちょっと見てろ」
そういうとネアは『竜拳!』と言って空気を殴った。すると、とんでもない衝撃波が起きた。
「あ~れ~」
飛ばされた。めっちゃ飛ばされた。そして岩に頭を打ちそうになって、俗に言う走馬灯が見えた。
母さんと父さんが喧嘩しているところ。兄ちゃんが友達と殴り合っているところ。兄ちゃんがその戦いでフルボッコにされて負けたところ。幼稚園の友達が先生を煽っているところ。先生が煽った友達を叩いたところ。その先生がフットワークの軽い友達の母親に土下座しているところ。
あれ? 走馬灯なんか変じゃない?
突然走馬灯が消えた。
「おい。こんなので飛ばされるなよ」
ネアだった。岩に頭をぶつける直前に自分を止めてくれたらしかった。あきれているっぽかった。仕方ないじゃない。弱いんだから。魔力以外は糞の塊なんだから。
「こりゃぁ訓練が必要だな」
「訓練!やりますやります!」
「よし。そうと決まれば今からやろう。善は急げだ」
そうだ。善はいそg……。あれ? 善は急げってことわざ、この世界にもあるの?
そういえば「キモい」とか、「タメ口」とか言ってたなぁ。もしかして誰かが伝えたのかな?
「ねえねえ」
「どうした?」
「キモい、とか、タメ口、とか何で知ってるの?」
「あぁ、そうか、お前はまだこの世界のことはわからないんだったな」
ネアはどうやって切り出したらいいのかわからないのか、「うーん、そうだなぁ」とか
「えーとなぁ」とかつぶやいている。
「ん-と、初めにこの世界は種族が大きく分けて3つある」
この世界には、魔人族、人族、亜人族の三種がいるそうで、自分は人族、ネアは竜人だから亜人族というわけである。で、その三種は戦争を何度かしてきたらしい。
「2000年前は、魔人族と人族の争いが一番激しかった時でな、そりゃぁもう災害級の魔法がバンバン使われてた。で、その時の人族最高の魔術師がレナ・ラータムという女性だったんだ。」
ネアは話し方がとても上手だ。どんどん話に引き込まれているのが自分でも分かった。
「でもな、戦争は魔術師だけで勝てるものじゃない。まぁ魔術師だけで勝てることもあるんだが、ごく稀だ。では何が必要か。」
そこでネアは間を開けた。
「圧倒的な実力を持った戦士。つまり『勇者』だ」
ネアの説明を聞いて、もしかしたらナリアトル王国も亜人族か魔人族のどっちかと戦争をしているの かもしれない、そういう考えが浮かんだ。だから自分は召喚されたときに『勇者様』だなんて言われたのか。納得。
「だが、2000年前の人族側にはその『勇者』がいなかった。普通は嘆くもんだ。最高の魔術師がいるのに、最高の戦士がいない、だから自分たちはいつか負けてしまう、とな」
「じゃあどうしたんだ? ナリアトル王国が存在してるんだから、まさか負けたわけじゃないよな」
「そこだ。『勇者』はいない、育てるという選択肢があるほど悠長でもなかった。じゃあどうしたか」
そこでまたネアは間を開けた。
「『外』から持ってきたんだよ」
「そうか。召喚だ!」
「正解だ。そして前代未聞の召喚をするためには最高の魔力と、それを使用する魔術師が必要だ。だがその点にはレナがいたので困らなかった。」
やっぱりネアは饒舌だ。政治家かなんかになったら成功すると思う。
「そして召喚は実行され、見事に勇者が召喚され、戦争には勝った、というわけだ」
なるほど。そういうことがあったのか。だがそれだと一つ疑問が残こる。
「なんで自分は召喚されたんだ?」
「それはナリアトルの者に聞かないとわからんだろうな」
「いや、そうじゃなく、なんで召喚できたのか、だよ。さすがに2000年は人間が生きられるわけがないだろう。だったら最高の魔術師であるレナさんはいないわけだ。さっきのネアの言葉を借りると最高の魔力もそれを使用する魔術師もいない、という状況になる。じゃあ一体全体どうやって自分を召喚したのか、そこが分からない」
そう説明するとネアは、そういうことか、とうなずいている。
「まず最初の2000年は生きられるわけがないという仮説だが、可能だ」
「え?」
衝撃の事実。20世紀も人間が生きられるというのが可能? 信じられない。
「レナ・ラータムは不老不死の呪術を開発していた」
「呪術?なんだそれ?魔術とは何が違うんだ?」
「いや、違うところは何もない。呪術というのはレナ・ラータムが作った恐ろしい魔術に対する造語だよ」
不老不死が恐ろしいから呪術ってことか。確かに20世紀はかなり、というか、めっちゃ引く。
「で、本題に戻すぞ。確かにレナ・ラータムは死んだ。だがそのことはお前が召喚された原因でもある」
「どういうことだ?」
首を傾げた。
「レナ・ラータムはもし、この後も戦争時に『勇者』が現れなかった場合のための保険として、召喚の魔方陣を作った。確か、ナリアトル王国にも2個くらい置いていたはずだ」
そういえば召喚されたとき、自分が無能だとわかっていてもナリアトル王国のお偉いさんたちは余裕な感じがあったようにも感じられた。もしかしたら自分の時が初めての勇者召喚だったのかもしれない。
「だがな、何個も最高の魔力を魔法陣に詰め込んで、それをある程度の実力者が使えるようにしないといけないとなると、とんでもなく体力を消費するということはわかるよな」
「あぁ、それで死んだのか」
「そうだ」
ネアは悔しそうな顔をしていた。もしかしたら面識があったのかもな。いや、そしたらネアは2000歳超えのスーパーおじいちゃん? まさかな、ハハハハハハハ……笑えんぞ。考えれば考えるほどそう見えていく。ブンブンと頭を振ってスーパーおじいちゃんネアの存在を脳内から葬り去った。
「で、何度か勇者は召喚されたんだが、亜人族との戦争の時にも召喚されたんだ。その時に召喚された勇者が教えてくれたんだ。ことわざとかキモい、とかな」
そういう出会いがあったのか。というか亜人族との戦争で勇者と亜人族の戦士が仲良くなるとか
本末転倒では?
「まぁそういうことだ。で訓練するぞ」
あ、そうだった。訓練するんだった。
「お願いします」
ワクワクするな。
最後までお読みいただきありがとうございます。