第一話 やべぇ森
ヤッホーみんな! ぼくは七瀬優太! 異世界に転移されて無能だったから追放されちゃった!
てへぺろ!
そんな僕は今、走っています。なんでかって? それはね、巨〇兵みたいなやつに目を付けられちゃったからなんだ!
「……なんでだよ! なんでジ〇リが異世界にいるんだよ。というかさっきからこの森やばすぎるんだよ! 平然と音速で走る青いハリネズミとか、銀河が破壊可能な爆弾を単体で所有する青いたぬきがとかがごろごろいるんですけど。無理ゲーにもほどがあるわ!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「うわっあぶねぇ!」
巨〇兵がとんでもない光線ぶっ放してきた。光線が地面にとてつもなくでかいクレーターを作った。
月のクレーターみたいである。
このままでは死んでしまう。どこかに逃げ場がないかと必死に探していたら、
「あった!」
20メートル先に洞窟を発見した。そこまで残りの気力を振り絞ってダッシュする。
「うおぉぉぉぉぉ」
入口に前転しながら突撃した。巨〇兵は自分のことを見失ったらしく、ドスンドスンと足音を響かせながら去っていった。
「うわぁ」
洞窟の中は神秘的だった。鉱石の光で洞窟が虹色に光っている。まるでイルミネーションのようだった。そして10分くらい歩いていると、扉を発見した。石でできていて、模様などがなくシンプルだった。
「なんでこんなところに扉が?」
好奇心のままに扉を開けた。ズズズズズという音が洞窟の中に響いた。
扉が完全に開き、足を踏み入れると、竜人がいた。男だと思う。翼が立派だった。金色の瞳に、赤色の髪が神秘的でもあった。そしてとんでもない威圧感があった。冷や汗など滝のようにだらだらと流れている。やばいものに触れてしまった。
「さ、さようならー」
そのまま逃げようとすると
「待て」
と言われた。
「ふぇあぁい」
はい、と言おうとしたがあまりの威圧感で涙声になってしまった。
「お前の名はなんだ」
「な、七瀬優太です」
「我の名はネアだ。アヴァンドの森の最強だ」
「アヴァンドの森? なんですかそれ」
ネアの威圧にもちょっと、本当にちょっとだが慣れてきた。
「アヴァンドの森を知らない? お前、もしや異世界人か?」
異世界人のことを知っているのか。
「はい。そうです。ナリアトル王国に召喚されて、追放されました」
事情を説明すると、ネアは額に手を当て、やれやれという風にため息をついた。
「ナリアトル王国は何をしている。勝手に召喚して追放など訳が分からん」
「いや、僕が無能だっただけなので。仕方がないです」
「無能? 確かにこいつのステータス、魔力は伝説級でそれ以外は糞の塊のようだが、魔力に関する第六感を持っているのだがな」
ごふっ。糞の塊はひどすぎやしませんか。いやそれより第六感?そんなの聞いてないぞ。というかなんで自分のステータスを知ってるんだ。
「すみません。第六感とは何ですか? あとなぜ僕のステータスがわかるんですか?」
「それは我が『鑑定』のスキルを持っているからにすぎん」
羨ましすぎる。『鑑定』だなんて神スキルじゃないか。
「そして第六感だな。お前のスキルには感覚過敏があるだろ。お前の感覚過敏は普通の感覚過敏ではない」
普通じゃない? どういうことだ?
「通常、感覚過敏は五感が常人より少し鋭いくらいだ。しかしお前の五感は何にも変わっとらん。その代わりに魔力に関する第六感が授けられているという感じだろうな」
「その第六感があったら何が違うんですか」
そう尋ねるとネアは少し考えて、
「おそらくだが、訓練次第で魔法適性がなくとも魔法が使えたりするのではないか」
と答えた。
え? マジで? 魔法使えるの? よっしゃー! 無理だとあきらめてた魔法をバンバン使ってやるぜ!
「ネアさん」
「なんだ? あと『さん』ってやめろ。キモい」
「じゃあネア? あなたのステータスを教えてくださいな」
「まぁいいが、そんなものが気になるのか」
「いやだってすごそうじゃん」
「急にタメ口になるのもキモいな」
じゃあどうすればいいんだよ。
ネアのステータスはこうだった。
『名前』
ネア・イヴァン
『レベル』
278
『力』
6784
『体力』
5435
『魔力』
5291
『俊敏性』
3655
『スキル』
衝撃魔力変換 振動 疑似覚醒 身体強化 鑑定
暗闇魔法適性 氷凍魔法適性 火炎魔法適性 光天魔法適性 雷電魔法適性 風嵐魔法適性
『体術』
竜王弾術
「キモっ。めっちゃ引いた。ドン引きだわ。」
これはえぐすぎる。すごいとかそういうレベルじゃないわ。化け物。バグ。
「何故だ?」
ネアが解せん、というような表情をしていた。
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