大叔母ご立腹
『只今戻りました! ルクセリア様御帰還です!!』
と勢いよく屋敷の扉を開けば・・・
ひっ・・・
大叔母がドドンと仁王立ちしていた・・・。
『お婆様!』
と駆け寄るセリアの後ろで私は条件反射的に土下座した。
「申し訳ありませんでしたぁ!!」
『お立ちなさいメイファ。今はそれどころではありませんよ。』
「ヒッ・・・はい。」
私は立ち上がり深呼吸をする。
大叔母は普段温厚だし身内にはすごく優しい。
まあ身内に優しく絆が強いのは魔人族の特徴でもあるが。
逆に怒らせると・・・ものすごく恐ろしい。
王宮も知らぬ訳でもあるまいに・・・。
あ、現国王以外は大叔母と面識がないのか・・・。
それは・・・ご愁傷様?
『『『 セリア!怪我は無いかい?! 』』』
『お父様、お母様、お兄様! お久しぶりです!』
『まぁルクセリア随分と大きくなって。』
『すっかりレディになったな。』
出迎えの中にルシエルが居ない?
ほっとする自分が居た。 が、甘かった。
『やあメイファ。随分と久しぶりだね
婚約者をほったらかして何処へ行っていたのかな?』
耳元でささやかれゾワッとして逃げようとしたが
しっかりと背中から抱きしめられていた。
うわぁぁぁ。
こいつのこういうところが苦手なんだよぉー!!
『お兄様!そういうところがお姉様に嫌がられるのですよ!』
ぐいっと間に割って入ってくれるセリア、ナイス!
というか伯父様も伯母さまも笑ってないで止めていただきたいのですが?
『はい、じゃれ合うのは後にしてちょうだい。
さぁ会議を始めますよ。』
パンッと手を打って大叔母が声を掛ける。
皆で顔を引き締めリビングに向かう。
『さて今回の件ですが。
ルクセリアを王宮に差し出させておいて捨て
なおかつ暗殺を謀るとは断じて許せる事ではありません。
私は第三王妃や第二王子からの申し開きを一切聞くつもりはありませんからね。』
大叔母はかなりご立腹のようだ。
『また現国王についても薬物で眠らせてあると報告が上がっており
これも第二王子が成人するまでの事で成人後は命が危ないとも。
我が友に薬物を盛り命を狙うとはなんと愚かな。
さらには第一王子の命までしつこく狙っているとの報告も受けています。
いずれも第三妃が糸を引いているとの確証もあります。
さて皆さん、どうしたいですか?』ニッコリ
『母上、私としてはこのままラウラ領を魔国に編入させてもよいかと。
元よりこの地は母上の結婚祝いに魔王陛下より頂いたものですし。』
『私も同意見ですね
ルクセリアの命を狙うなどと許せるわけがありません。』
『領民のほとんどは魔人族ですし王国側も気にしないでしょう。』
『ルクセリアはどう思いますか?』
『私は・・・
争う事が無く魔国に編入出来るならそうしたいです。
王宮の方々には何の感情もありません。
ですが、この国に住まう方々が争いに巻き込まれるのは嫌です・・・。
かと言ってまた聖女として仕える気もありません。
だって・・・
お菓子も食べさせて貰えなかったし、絵本も読ませて貰えなかったし。
ご飯は美味しくなかったし、家族とも会わせて貰えなかったし。
それに・・・
第二王子とはこの屋敷で会って以来会った事もなかったのよ?!
信じられる? 嫁げといわれたのに手紙すらないのよ?!』
皆ポカンとしてしまった。
お菓子? 絵本? ご飯が美味しくない?
そして第二王子とあれから会った事がない?
「あー・・・セリア。聞いてもいいかな?」
『はい、なんでしょう?お姉様。』
「その・・・セリアは第二王子が好きだったの?」
『え? いえまさか。これっぽっちも。
だって顔も覚えていませんわ!』
「そうか・・・。」
『ずっと孤独だったし朝晩のお祈りだけで
勉強も読書もさせてもらえなかったのよ?
あんな所もどりたくもないです!』
『待て。お父様やお母様からの手紙は?』
『え?私の元には届いていませんけど・・・。』
『私が送った本屋お菓子も?』
『ええ、お兄様たちからも何も・・・』
『『『 ・・・ 』』』
『では私達に届いたルクセリアからの手紙は・・・』
『私は書いたことがありません。ペンすらなかったのよ?』
『『 ・・・ 』』
ベキッ
あ、大叔母の椅子が壊れた・・・。
『私達を馬鹿にしすぎているわね・・・。』
「落ち着いて下さい、大叔母様。
セリアの言葉を聞いたでしょう?
争いに民を巻き込みたくないと。
そりゃね、私だって八つ裂きにしてやりたいですよ。
やろうと思えば簡単にできますし。
でもまずは現国王と第一王子の身の安全の確保でしょう?
あのバカ共には精神的な苦痛を与えればよいのです。
勿論自死など選べないようにね。
あのバカ共さえ居なければ
現国王と第一王子に国の事は任せておけば大丈夫でしょうし?
無益な争いは避けるべきですよ。」
『・・・・。
解ったわ。
どうやって現国王を助け出すつもり?』
「そうですね。正面からどうどうと行きます?
現国王のお見舞いに魔国王族として。
断れないはずですよ?」
『なるほど、私とメイファなら断れないでしょうね。』ニッコリ
「ええ。それにおもしろい噂も耳にしておりますし。」ニッコリ
『ほう?どのような?』
コソコソコソコソッ
『それはおもしろそうですね、ふふふ』
「はい、大叔母様。」
『あの、どのような噂で・・・?』
『貴方方は知らない方がよいでしょう、ふふふ。
私に任せておいてちょうだい。』
『お姉様?』
「大丈夫だよセリア。危ない事をする訳ではないから。」
まあ違う意味で危ないかもしれないけど。
取り敢えず現国王が回復したら
ラウラ領がすぐにでも編入出来るように準備だけはしておかないと。
しかたない、一度魔国に飛んでくるか。
あ・・・
「そう言えば第一王子はどうします?」
『ああ、それならすでに保護してありますよ。』
「さすが大叔母様ですね。」
『ふふふ、ランファのお陰ですよ。』
「兄上の?・・・」
『第一王子の護衛として潜入していましたからね。』
「そうだったんですか。」
『現国王との約束でしたから。』
「なるほど。
では一度魔国へ行って準備をしてきます。」
『ええ、お願いね。』
Ψ------Ψ------Ψ------Ψ------Ψ------Ψ------Ψ
「と言う訳で父上宜しくお願いしますね。」
『ふむ・・・。まあいいだろう。
私も一緒に行くか?』
「駄目です、父上は人化が下手すぎます!」
『う・・・。
城内に出れば・・・。』
「駄目に決まってるでしょう!
父上を見て魔王の襲撃なんて言われたらどうするんですか!
それこそ戦にでもなったら本末転倒でしょう!!」
『私だって姪の為になにかしたい・・・。』
「父上、いい歳したおっさんが
しかもいかつい魔王陛下がそんな顔しても可愛くありませんよ!」
可愛い少女ならともかく、そんな上目使いで見るなよ親父殿!!
「では父上母上 いってまいりますね。」
『うむ、私の分まで暴れてこい。』
「そこまで暴れませんよ!」
『その姿だとランファそっくりねぇ。』
「そりゃ双子ですから・・・。
それでは。」
さあこっちの準備はできた。待ってろよ王宮の阿呆共め!
読んで下さりありがとうございます。
イラストは友人が描いてくれました(*'ω'*)