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ばれてた

次の日私は

  故郷の母が病で倒れ重篤だと知らせがあった 

なんて適当な理由を述べて馬を1頭譲ってもらった。

半ば強引だったかもしれないが代金を上乗せしておいたので許して欲しい。

母を重篤にしたのも、まあ理由が解れば母は許してくれるだろう。


セリア様を前に抱え込むように騎乗しとにかく馬を走らせた。

お店を回ってお菓子を買うハズだったのに

セリア様はそれをとても楽しみにしていたはずなのに。

せめて1つくらいは買ってから出発でもよかったか・・・。

いやそんな余裕は無かった。

一刻でも早く大叔母に呪詛を解いてもらわねば、

聖女に関する事で自分の意思とは違う言葉がでてしまう

そんな弊害以外にも何があるか解らない。


あの暗殺者を調べれば私達が生きていることはすぐに判ってしまうだろう。

その時セリア様の体になにか制限があったりしたらと思うとそれが恐ろしい。

お菓子は呪詛が無事解除出来て状況が落ち着いたらゆっくりと買いに行けばいいだろう。

それまでは・・・私がセリア様の為に作ろうか・・・。

うん、それがいいそうしよう。


ん?待てよ?

そうなると私もあの家に滞在する事になる訳で・・・

大叔母の説教が待ち受ける訳で・・・

ルシエルとも当然顔を合わせる事になる訳で・・・

あぁー・・・

どの道これまでの経緯と状況説明をするのに滞在するようになるか・・・

諦めるしかないか・・・

サヨナラ私の冒険者ライフ

サヨナラ私のフリーダム。

はぁー・・・と思わずため息をついてしまった。


『あの・・・メイファ。

 ごめんなさい。

 やっぱり私メイファに迷惑を掛けてますよね・・・。』


しまった。セリア様に誤解をさせてしまった。


「いえ違うんです。

 迷惑だなどセリア様にはこれっぽっちも思ってないですよ。

 ただ王族や教会や協会や偽聖女には くっそめいわ・・・ごほんっ。

 失礼しました。

 少々腹正しく思いますが。」


あー・・・

ついぽろっと本音が出そうになってセリア様がキョトンとしてしまっている。


『メイファはどうして私によくしてくれるのでしょう。

 あの森で私の事など・・・見捨ててもよかったはずです。

 他の冒険者であればきっと見捨てたでしょう。

 いえ、むしろ暗殺者しか居なかったかもしれません・・・。』

「それは・・・

 ギルマスにとって私は目障りな存在でしたから。

 私も一緒に暗殺者に始末させるつもりだったんでしょうね。

 私の実力を・・・あなどっていたんでしょうねぇ。」

『でしたら・・・

 私を置いて1人で逃げた方が楽だったのでは?』

「そんな事出来る訳がないでしょう。

 まだ未成年で愛らしい再従姉妹(はとこ)殿をほっておくことなど。

 そもそも未成年であるにも関わらず

 親元から引き離して王宮に連れ去っただけでも

 あ・・・

 ・・・・・・・・」


しまったぁ。つい感情に任せてうっかり・・・言ってしまった・・・。

あああ、せっかく隠していたのに・・・。

セリア様はどんな顔をしているのだろう・・・。

私からはその表情は見えない・・・。


『やっぱり・・・。

 メイファお姉さまでしたのね。

 ずるいです、早く仰ってくださればよかったのに・・・。』


グハッ・・・

バレてた・・・の・・・か?・・・


「バレてましたか・・・。」

『昨日のやり取りで、なんとなくそうかなと思いました。』

「うぐっ・・・

 つい感情的になってしまいました・・・。」

『メイファお姉さまは昔もそうやって私を守ってくださいましたものね。

 でも・・・それなら何故最初にそう名乗ってくださらなかったのです?』

「そ・・・それはですね・・・。」

『ルシエルお兄様の事が原因でしょうか?』

「んぐっ・・・

 そ、そそ、そんな事は・・・・。」

『やっぱり・・・。

 あれはお兄様も悪いのです。いくじがないのですわ!』


ブハッ・・・

もお何かと色々バレている・・・。

これは開き直った方がいいのかもしれない。

その方が気が楽になれる・・・、そうしよう。ハハハ


「セリア様、その話はまた後程。

 少し馬を急がせます。」

『わかりました。でも今度は急にいなくならないでくださいね?』

「大叔母が居る時点で逃げられません・・・。」

『ふふふ、お婆様は最強ですから。』

「そうですね。」


はぁと再び溜息を洩らしながら私は馬を急がせた。


乗合馬車ではなく馬を走らせたので予定よりも早くラウラ領地内に入れた。

さすがに馬も疲れただろうから少し休憩させねばなるまい。

その間に私達も食事をとる事にしよう。

まだ私達が生きている事は知られていないようで追手の気配もない。

馬に水と餌を用意して自分達が座る場所を確保する。

そう言えば・・・と思い出して収納鞄をあされば、あった!


「セリア様 どうぞ召し上がって下さい。」

『これは!』

「ふふふ、さあどうぞ。」


あの店のカスタードパイを会計の時に持ち帰り用で1つ買っておいたのだ。

私の収納鞄は上位魔法アイテムなので時間停止機能が付いている。

食品などの鮮度が保てるのだ。


『ありがとうございます!

 ところでメイファお姉さま?』

「なんでしょうか?」

『いつまで私をセリア様と呼ぶのでしょうか?・・・

 昔の様にセリアと呼んでくださいませんの?』

「あ・・・。

 なんと言いますか・・・

 その・・・

 この喋り方に慣れてしまって照れ臭いと言いますか・・・。」

『私ずっとお会いしたかったのに・・・。』

「す・・すみません・・・。」

『昔の様にセリアと呼んでください、メイファお姉さま。』

「わ・・・わかりました。」


ニコリと笑うセリア様・・・セリアは昔と変わらないままだった。

遊びに行けばお姉さま!と小さな手を広げて駆け寄って来る。

兄しかいない私にとってセリアは小さくて可愛らしい天使だった。

ルシエルの件で家を飛び出してからはずっと会えていなくて・・・。

偶然とはいえ、また再会出来たのは嬉しかった。

あの暗殺現場でなければもっと素直に喜べたはずだ。

そう思うと王宮にも協会にも教会にも腹が立つ。

私の可愛い天使になにしてくれてるんだ・・・。


『お姉さま?』


いかん、顰め面になっていたようだ・・・。


「すみません・・・。少々嫌な事を思い出しただけです。

 さぁもう少し休憩したらまた 馬で走り抜けますよ。」

『お姉さま、その堅苦しい話し方も止めていただけると・・・。』

「そうですね・・・。

 ではセリアも普通に。昔の様に話して?」

『!!!

 そうですわね、いえ。そうね。

 わかったわお姉さま!』


ふふふっ

二人で見つめ合い、ちょっと照れ臭くなったので笑ってごまかした。

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