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言葉に出来ない

『王都でグールが出たらしいぞ。』

『いやグールじゃなく呪われた者だと聞いたぞ。』

『なんだそれ。』

『王都にだけ現れたのか?』

『王都の守護石は効果が無くなったと言う事か?』

『新しい聖女様は守護の力がないと聞いたぞ。』

『神官長様や魔導士長様は何をしているんだ。』

『第二王子殿下は何をしてらっしゃるのか。』


夕飯を食べていると周囲からそんな会話が聞こえて来た。

セリア様は何かを言いかけたが、シッと口に手を当てた。

食堂でその話に触れるのはマズイだろう。

王都の話題が届いていると言う事は商人などが王都から来たという事だ。

セリア様の正体がばれても困る・・・。

これはさっさと食事を済ませて部屋に戻るべきだろうな。


『あの、メイファ。さっきの話は・・・。』


部屋に戻るとさっそくセリア様が口を開いた。


「セリアさま、ラウラ領に入るまでは噂話は気になさいませんように。

 ご実家に戻れば正確な情報が解るはずです。

 今ここで噂を気にして変に勘繰られたり正体がバレても困ります。」

『ですが・・・王都の皆様は大丈夫でしょうか。』

「王国にグールなどのアンデッドが存在するとは聞いたことがありませんよ?

 教会関係者も魔導士協会関係者も大勢います。

 なので大丈夫だと思いますよ。

 それにお忘れですか?

 貴方様は第二王子から、王国から捨てられ殺されかけたのですよ?

 もうすぐご実家に帰れると言うのにまた捨てられたいのですか?

 また殺されかけたいのですか?」

『でも・・・王都に住む人々に罪は無いはずです!

 その人々が苦しむのであれば・・・』

「自分の命を捨てても助けると?

 では問いましょう。

 貴方様に罪がお有りでしたか?

 王宮の誰かが 王都に住む誰かが!

 たった1人でも貴方様に手を差し伸べた者がいましたか!!」

『それは・・・』

「噂はあくまでも噂でしかありません。

 セリア様が生き延びたと知った何者かが流した罠の可能性もあります。

 のこのこと出て行って殺されてあげるのですか?

 どうか・・・ご自分の命を大事にしていただけませんか。」

『・・・』

「このような事を申し上げてしまい申し訳ありません。

 私は外に出ていますので、どうかおやすみください。」


パタンとドアを閉めた後

セリア様がこっそり抜け出せないように窓に魔法を掛けておく。


セリア様の王宮での扱いは決して厚遇されていると言える様な物では無かった。

それでもセリア様は不満を口にする事もなく

ひらすら国の為民の為と聖女の務めを果たしていたというのに。

政略的な婚約だと解っていても第二王子に尽くしていたというのに。

王族も協会も教会も・・・簡単にセリア様を捨てるなどと。

なのにまだこの国の為にと・・・

セリア様

あなたはまだ幼く、優しすぎる。

それゆえに純粋とも言える。

私は貴方をラウラ領へ ご実家に連れて帰る。

貴方の為にも 私の為にも。



  私の可愛いメイファ

  元気そうで何よりです。

  私の可愛い孫娘ルクセリアが貴方と一緒に居るのは幸いです。

  必ず無事に連れ帰って下さい。

  万が一にもルクセリアに何かあれば

  解っていますね?

          貴方の大叔母より愛をこめて♡



先程大叔母から送られてきた影鳥・・・。

影鳥を飛ばした時点で失敗したとは思った。

魔力痕でバレてしまうと、ハハハ・・・。

何がなんでもセリア様を無事に送り届けなければ・・・。

しかし・・・少々キツく言い過ぎたかもしれないな。

明朝 もう一度謝ろう。



    ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃



どうしましょう・・・。

頭ではわかっていたのに・・・。

聖女だからと王宮に連れて来られ

この国に縛る枷として第二王子殿下と婚約させられ

愛情はなくても、せめて情は生まれるかと・・・

守護石への魔法補充と魔獣討伐での回復

国の為民の為と頑張っていたけど・・・

まさか捨てられるなんて・・・

まして命まで狙われるなんて・・・

好きなお菓子も我慢したわ。

家族と会えないことも我慢したわ。

私は聖女なんだからって・・・

仕方が無い事なんだって・・・

でも・・・

本当にそうだったの?

メイファは王宮の人みたいに我慢しろなんて言わなかったわ。

新しく第二王子の婚約者になったあの聖女様も我慢なんてしてなかった。

お菓子だって食べてたし、お洒落だってしてたし

朝夕のお祈りだってしてなかったじゃない。

あら?・・・

何故私だけが我慢しなくてはいけなかったのかしら・・・。


それに

王国にアンデッドは居ないことも解っているのよ。

噂は不確かな物だとも解っているの。

新しい聖女様が現れたのならそちらに任せればよいのも解っているのよ。

解っているのに・・・

何度もそう言いたかったのに・・・。

何故言えないの・・・。

メイファを怒らせてしまったわ。

呆れてしまったかしら・・・。

たまたま冒険者ギルドから護衛に来て下さっただけなのに

巻き込んでしまってご迷惑までお掛けしてしまって。

自分の考えさえ伝えられないのは駄目よね。

明日ちゃんと謝らなければ・・・

謝れるかしら・・・。また言葉が出てこなかったら・・・。

そうだ!

手紙を書いておけばよいのだわ!

上手く喋れなかったら渡せばよいわよね。


メイファは1人で逃げも出来たのに私を見捨てなかった。

誤魔化さずにちゃんと私と向き合って話してくれた。

自分の命を大事にとも言ってくれた。

お姉様と同じ様に・・・。


もしかして・・・

ううん、確証がないわね・・・。

いつか話してくださるかしら。



    ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃



「昨夜は申し訳ありませんでした。」

『昨夜はごめんなさい。』


室内へ入って頭を下げれば、セリア様も頭を下げていた・・・。


「私が悪かったのです。

 セリア様を守りたくてついムキになってしまいました。

 申し訳ありません。」

『いえ私の方こそ。

 解っているのにうまく言葉が出て来なくて・・・。

 ごめんなさい。』


そう言いながらセリア様は何かを言いたそうにするのに

言葉が出て来ずにいる自分に泣いてしまった。

なんだろう。

セリア様の言葉が上手く出てこないとは・・・。

言葉がでない時の為に手紙を書いたのだとセリア様は泣きながら手紙を渡してくれた。


手紙には

解っているのに何故か自分が思っている事と違う言葉が出て来てしまうと

ちゃんと私が言う事も理解しているし自分でも領地へ帰りたいと思っていると

困らせる気は無かった、怒らせる気は無かった。

巻き込んでしまってごめんなさいと書かれていた。

これは何かおかしくないか?

もしかして何か呪詛でも掛けられた?

私の鑑定では見る事も出来ないし、呪詛を解く事も出来ないが

大叔母ならば可能であろう。


「セリア様。急いで領地に、ご自宅に戻りましょう。

 おそらくセリア様に呪詛が掛けられています。

 思った言葉が出てこないのはそのせいでしょうね。」

『!!!』

「セリア様、ご自分にレストアを掛ける事は可能ですか?」

『レストアですか? やってみますね。』


やはり・・・。

セリア様がいくらレストアを唱えても魔法は発動しなかった。

本来であれば呪詛など自分で解除できるはずなのに・・・。


『・・・。

 私は・・・こんな事も気付けなかったのですね・・・。』


ぽろぽろと泣き出してしまった・・・。


「セリア様のせいではありません・・・。

 泣かないでください。

 おばあさまならきっと何とかしてくださいますよ。」

『はい・・・。』



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