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閑話:2人の王子

『初めまして、ルクセリア・ラウラと申します。』


出会ったのはルクセリアがまだ7歳の頃だった。

ラウラ領はここ数年魔物の被害が少ないと報告があがり

その理由は聖女が誕生したのではないかという事で視察に訪れたのだ。

実際にラウラ領に来てすぐにそれは確信に変わった。

空気が違うのだ。

あの重苦しい空気から解放され、すがすがしく明るい気持ちになれたのだ。

こんなにも違う物なのか。

それならばすぐにでも聖女を王宮に連れ帰らなければ。

そう思った。

だが実際に聖女らしき人物に会ってみれば、まだ7歳の少女ではないか。

これは困った・・・。

無理強いして親元から話すにはあまりにも不憫だ。

どうしたものか・・・。

考えあぐねていたら愚弟が阿呆な発言をしてしまった。


『ルクセリア嬢。私の婚約者として王宮に来るように命ずる。』


おいおいおい、何を言ってくれてるんだこの阿呆は。

陛下になんの相談も無くその様な発言が許されるわけがないだろう。

ましてやまだ7歳の少女だぞ?

親元から離れる事に不安があったりもする年齢なんだぞ?

だいたい会ったばかりで何故その様な発言が出てくるのか私には理解できないのだが。

見ろ、ラウラ辺境伯も驚いているではないか。

いかん、ここは私が落ち着かねば。


『ゴラン、いきなりそんな事を言うものではないよ。

 ルクセリア嬢も辺境伯も驚いているだろう?

 まずは親睦を深める事から始めないと。』

『ふん、兄上は年が離れているから相手にされないもんな。

 俺は年の釣り合いも取れるしコイツが気に入ったんだ。』

『ゴラン、ご令嬢に向かってコイツなんて言い方は失礼ですよ。』

『コイツはコイツだろ。

 俺よりも身分が低いんだし。

 1ヵ月だ、それで準備して王宮に来い、いいな!』


好き勝手言ってさっさと帰っていきやがった・・・。

強引について来るとは思ったが・・・本当に何してくれるんだ。

うぅ・・・気まずい・・・。

付き添ってきた宰務官を見ると顔が青ざめていた。

まあそうなるよな、私だって顔色は悪くなっているだろう・・・。


『あー・・・。ラウラ辺境伯。

 愚弟が申し訳ない・・・。』

『なるほど。あの方が第二王子殿下ですか・・・。』

『ところで、確認しておきたいのだが。

 ルクセリア嬢が聖女と言う事でよいのかな?』

『恐らくそうなのでしょうね。

 ルクセリアが生まれてからこのラウラ領は魔物の被害が減りましたので。』

『ここにも守護石か結界があるのか?』

『いえ、どうやらルクセリアが居るだけで効果があるようです。』


なるほどな。

このラウラ領は魔国と隣接する辺境の地ゆえに魔物も多かったが

ルクセリア嬢のお陰で数も減って来て安定している訳か。

王宮の連中が欲しがる訳だな・・・。


『解った。私は早急に帰えり陛下にお会いして相談をしてみる。

 なるべく早く対処するようにするが十分気を付けていてくれ。

 愚弟の後ろには第三妃が居る・・・。

 おそらくはあれが糸を引いているのだろう。』

『どこまで抵抗できるかは解りませんが・・・承知いたしました。』

『すまないな。

 私にもう少し権限があればよかったのだが・・・。』

『いえ。殿下もどうかお気をつけて。』


別れの挨拶もそこそこに急いで帰路についた。

勘弁してくれ、私はもうすこしゆっくりと話もしたかった。

せっかく訪れたのだからこの地も見て回りたかった。

やはりあの愚弟は連れてくるべきではなかったのだ・・・。


王宮に戻って父である陛下には会えなかった。

病で倒れ意識が無いだと?

ありえないだろう。出立前まではお元気だったんだぞ?

第三妃の仕業か?

あれは前々から怪しかったからな。

母である王妃や第二妃を殺めたのも恐らくはあれだろう。

確証が得られずに追及出来ていないのがはがゆい。

父と母は仲が良かった、故に父はほかの誰もを王妃にしようとしなかった。

だから父にまで手を伸ばしたのか?

まったく・・・こんな時に頼れる身内もいないとは。


『殿下。

 このままでは殿下のお命まで危ぶまれます。

 ここは一旦身を隠した方がよろしいかと・・・。』

『父を置いて逃げろと言うのか?』

『陛下の意識が無い以上第三妃が王妃になる事はありません。

 また未成年である第二王子がすぐに即位する事も不可能です。

 第二王子が即位可能な年齢になるまでは陛下が命を落とす事はないと思われます。

 今一番命の危険に晒されているのは殿下なのです。』

『だが何処へ身を隠せと・・・』

『私に心当たりがございますのでお任せ下さい。』


私は幼馴染である護衛騎士の進言に従うしかなかった。

今父が亡くなってしまえば私が王位に就く事になる。

それを第三妃は許さないだろう。

故に私が生きている限り父が殺される事も無いはずだ。

父上・・・私が解決策を見つけるまでどうか・・・耐えていてください。


  ━・━・━・━・━・━・━・━・━・


兄上がしばらく遠征に出かける?

いつ戻ってこれるかも判らない?

ふふん、これで小言から解放されるな。

父上も母上も兄上も周りの奴らも すぐに兄上と比較して五月蝿いんだよ。

母上なんかはすぐに癇癪熾すし・・・。

でも今日は聖女に登城命令をだしてきたと言ったら上機嫌だったな。

まだ7歳だとは思わなかったから少し気の毒な気もするが・・・。

その分俺が相手をしてやればいいだろう。

美味しいお菓子やドレスや小物でも与えれば気も紛れるだろう。


そう思って居たのに、登城してからは一切会わせて貰えなかった。

最初の頃こそ気にはしていたが、会わせて貰えない内に気にならなくなった。

兄上にしても時々報告の手紙が届くくらいで姿を見かける事もなくなった。

五月蝿い兄上が居ない事で母上の機嫌もよくなるかと思えば

ずっとイライラしているだけだった。


そのうち聖女は10歳になり俺は14歳になった、成人までは後1年。

父上は相変わらず病で床に臥せっている。

母上は父上の元に見舞にもいかず 神官長や魔導士長となにやら話し込む日々。

俺はただ漠然と日々を過ごすだけ。

そんな日常を疑問すら思わなかった。

そしてある日突然 本物の聖女とやらを神官長が連れて来た。

どこが本物の聖女だと言うのだろう・・・。

この女が持つ属性は微弱なLV1の光属性のみではないか。

聖女の条件は聖属性の魔力だろうに。

相手にする気も無かった。

だが母上には頻繁に会えと言われるし、神官長はなにかと2人きりにしてくるし。

気が付けば・・・何故か俺はその女に惚れていた。

訳がわからなかったが神官長と魔導士長に


『恋とはそんなものですよ。』


後から考えればわかる。

神官長も魔導士長も恋愛経験ゼロなのに解る訳がないだろうと。

だがその時の俺はそれで納得してしまい


『俺は真実の愛を見つけた!

 そして彼女こそが本物の聖女だとも確信した!』


などと言ってしまったのだ・・・。

母上や神官長・魔導士長は嬉々として聖女を追い出し暗殺者を放ってしまった。

この時少しでも心配していたら・・・

せめて兄上に知らせていれば・・・

俺の未来は変わっていたのだろうか。

無理だな・・・。あの時の俺は何も考えていなかったのだから。

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