揚げ菓子
『おはようございます。』
「おはようございます。セリア様。」
お茶の入ったカップを手渡し挨拶を交わす。
「今日は天気があまりよくないようです。
出来れば雨が降り出す前に村へたどり着きたいですね。」
『そうですね。湿気が多いので寝癖がなおってくれません・・・。』
「大丈夫ですよ。帽子を被ってしまえば解りませんから。」
『確かにそうですね。帽子があると便利ですね。ふふっ』
どうやら魔法使いが被る三角帽が気に入ったようだ。
もう少し可愛らしい帽子があればよかったのだが、なにせダンジョン産。
見た目よりも機能重視の物しか出ないからな・・・。
村でもう少し女の子っぽい物を揃えてもいいのかもしれないな。
「さあセリア様。頑張ってお昼までに村へ着きましょう。
そして昼食は美味しい物を食べましょう!」
『はいっ! メイファは何が食べたいですか?』
「私ですか? そうですね・・・。
確かあの村は林檎のパイが美味しかったはずです。」
『林檎のパイですか。それは私も食べたいです!
でもメイファ。パイだとご飯ではなくデザートなのでは?・・・』
「む?そうですね・・・。
セリア様は何が食べたいですか?」
『私はお砂糖たっぷりのチュロスが食べたいです。』
「セリア様・・・。
チュロスはお菓子では?・・・」
『あ・・・。』
「どうやらお互い疲れが溜まっているみたいですね。
甘い物しか浮かびません。」苦笑
『そうですね。ふふふ。』
そんな話をしながら森を進めば遠目に村が見えた。
ここからは普通に道を歩く方がいいだろう。
森からガサゴソ出て来て警戒されても困る。
「セリア様ここからは道を歩いて行きましょう。」
『はい、解りました。』
王都や領都のように整えられた道ではないが、森の中よりは歩きやすい。
30分も掛からず村に着けそうだ。
ピカトステ♪ コブリハ♪ フリテッレ♪ オレイエット♪
セリア様が嬉しそうにお菓子の名前を口遊んでいる。
「セリア様、それ全部揚げ菓子ですよね?」
『ハッ・・・口に出てました?・・・』
「ええ、しっかりと。」ニッコリ
『恥ずかしい・・・。』
よほど揚げ菓子がお好きなのだろうか?
それならば昼食は軽めにして揚げ菓子も買った方がようだろうか。
などと考えていたら村に到着した。
「まずは宿を探しましょうか。」
『はい。』
探すと言ってもこの村に宿は1件しかなかったように思う。
やっぱり。
すぐに宿は見つける事ができた。
『いらっしゃいませ。』
「1泊でダブルの部屋を頼みたいのだが。」
『はい、承知しました。
料金は1泊2食付きで5000ギルとなりますがよろしいでしょうか。』
「ああ、構わん。
後どこか旨い飯屋があれば教えて欲しいのだが。」
『そうですね。
3軒ほど左隣に若い女の子に人気のお店がありますよ。』
「そうか、ありがとう。行ってみよう。」
『いえいえ、こちらが部屋の鍵になります。階段を登って右奥の部屋です。
ごゆっくりどうぞ。』
鍵を受け取りまずは部屋に向かう。
荷物を置いたらすぐ店に向かう方がいいだろう。
セリア様のお腹がさっきから可愛らしい音を鳴らしている。
部屋は落ち着いた雰囲気で清潔感もある。
ここの店主も嫌な感じはしなかった。
簡易的な保安魔法を掛けておけば大丈夫だろう。
「セリア様昼食を食べに出かけ・・・ぐるきゅぅー。
・・・・・。」
『ふふっ。私も先程からお腹が鳴ってますから。』
「行きましょうか・・・。」
『はいっ!』
まさか自分のお腹が鳴るとは・・・不覚。
その後店に入り、注文した品が出てくるまでの間
私とセリア様のお腹は何度か鳴いた・・・。
店内が良い匂いで充満しており、二人の空腹に追い打ちをかけたのだ。
まぁ大きな音ではなかったのが救いではあったが・・・。
しばらくすると料理は運ばれてきた。
セリア様がラザニア、私はサンドウィッチ。
数日ぶりに食べたパンは旨かった。
セリア様も美味しそうに食べているが、また口の中でハフハフしている・・・。
少し冷ます事が出来ないほどお腹がすいていたのだろうか?
いや数日ぶりのマトモな食事が嬉しいのかもしれないな。
宿の店主が言ったようにこの店は若い女の子に人気があるようで
目当ては皆デザートだろう。
カスタードパイが凄く旨いのだ・・・。
セリア様は2つも食べていて驚いてしまった。
『つい・・・美味しかったもので。』
恥ずかしそうに笑っていた。
明日村を出る前にもう一度カスタードパイを食べに来るべきだろうか。
他のデザートも気になるしな。
セリア様に提案してみれば、ものすごく嬉しそうに頷いていた。
宿に帰る前に他の店も覗いてみたかったのだが
生憎雨が降り始めてしまったので諦めた。
明日晴れていたら見て回ろう。
今日はこのまま部屋でのんびりだな。
「セリア様 夕飯の時間まで部屋でのんびりとしましょうか。」
『そうですね。ちょっと食べ過ぎて眠たくなってしまいました。』
疲れもたまっているだろうしな。
それにしても、まさかこうなるとは思っておらず
携帯食と塩しか所持していなかったのは失敗だった。
明日は日持ちするパンも買っておくべきかな。
確か今は女性向な携帯食もあったはずだよな。
ふむ・・・これは少し自分の携帯食も見直すべきかもしれない。
などと考え込んでいたらセリア様はスヤスヤとお昼寝をしていた。
ここからラウラ領までなら乗合馬車が出ている。
夕飯時にでも乗合馬車の時間を聞いてみればいいだろう。
時間に余裕があれば店を回って
セリア様の好きな揚げ菓子も買っておくか。
明日にはラウラ領に入れるだろうから、やっとセリア様も落ち着けるだろうな。
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そう言えば お姉様が作ってくれた林檎のパイは絶品だったわ。
パイだけじゃなくてお姉様が作るお菓子はどれも美味しくて。
私がすっかりお菓子のとりこになったのはお姉様のせいだわっ。
口遊む歌もついお菓子の名前が出てしまうし。
あら?今日もだったような・・・。
もしかしてメイファにお菓子ばかり食べてる子供だと思われたかしら。
ち、違うわよ?
ずっと王宮では食べさせて貰えなかったから・・・
ちょっと浮かれてしまったのよ・・・。
あぁどうしよう、恥ずかしい・・・。
明日はちゃんと落ち着かないとだわ。
読んで下さりありがとうございます。