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アツアツ

『メイファ。私は何をすればよいのでしょうか?』


セリア様はオロオロしていた。

今まではフィールドでの討伐ばかりだったろうし

人族の騎士や戦士ばかりだったろうからレシア様も大活躍だったろう。

でもごめん。

冒険者だとパーディー組んでも回復職は居ないんだ。

常にポーションで回復するしかないんだ。

でもそのポーションもそれなりの値段だから、なるべく怪我はしないようにする。

上位ランクになれば当然回避も旨くなる。

だからレシア様の出番はあまりないかもしれない・・・。


「セリア様は常に自分にリフレクションフシールドを!」

『はい!』


道中で見つけたこのダンジョンはBランクだったので、私には楽勝だった。

ただ途中で眷属のヴァンパイアに出会った時は焦った。


『おや、メイ・・・ムゴンゴフゴッ』

「シィーー!正体をばらすな。頼むからそのまま姿くらましてくれ。」小声

『フグムグ・・・』


慌てて口をふさいだものだから、鼻までふさいでしまったらしい。

息が出来るようにちょっとだけ手をずらしてやった。

ヴァンパイアはものすごい勢いでコクコク頷くと

失礼します!と叫んで消えていった。

装備品も落として・・・。

きっとここでの戦利品だろう、すまんな。

だが正体がバレる訳にはいかんのだ・・・。

私はまだ冒険者ライフを楽しみたい。


『あの・・・今のヴァンパイアの方は?・・・』

「ああ、お気になさらず。道を譲っていただけましたよ?」

『そ・・・そうですか。なんだか申し訳ないですね。』

「大丈夫ですよ、それよりもセリア様にと靴を置いていってくれました。」

『まぁ。有難い事です。これで装備は全部揃ったという事でしょうか。』

「はい、そうなりますね。なので戻りましょうか。」


丁度一式揃ったので後で着替えて貰おう。

運よく杖も手に入ったし、なんちゃって魔法使いになれるだろう。

そう言えば、私の鑑定だと職業とLVしか見れないけど

レシア様は聖属性以外の魔法も使えるんだろうか?


「レシア様は・・・他の属性魔法も使えたりしますか?」

『はい、一応は・・・。弱いですけど。

 火属性がLv4で地属性がLV3、闇属性がLV5です。』

「なるほど、でしたら十分中級魔道使いでも通用しますね。

 町中に居る時は聖属性魔法は使わないようにしてください。」

『解りました、気を付けます。』


ダンジョンから出た後 レシア様には木陰で中級魔法使い装備に着替えて貰った。

うん、意外と似合うな。

これなら一見聖女だとは解らないだろう。

聖女の服は・・・一応素材はいい物だし取っておくか。

キュアの応用で汚れを落とした後アイテムバックに収納しておく。


「セリア様今日はこの先で寝る事になりますが

 明日は小さな村に到着できると思うのでそこでは宿を取りましょう。」

『はい。あ、でも私・・・お金を持っていません・・・。』

「大丈夫ですよ。私がお金を持っていますし

 冒険者ギルドでダンジョンアイテムや素材を売ってもよいですし。」

『そうですね、その手がありましたね。

 あ、でも冒険者ギルドだとギルドカードの提示が必要になるのでは?』

「大丈夫ですよ。冒険者以外でも売る事は可能です。

 まぁ多少の手数料を取られますが。」

『そうなのですね。』

「セリア様は心配なさらずともよいのですよ。任せておいてください。」

『はい・・・。すみません、ありがとうございます。』ぽっ


それから夕暮れまで歩き、少し開けた高台で昨夜と同じ様に蔦でハンモックを作った。

夕飯は途中で狩ったワイルドボアの肉だ。

手持ちに塩があったのはラッキーだった。

セリア様には物足りない味付けかもしれないが、今は我慢してもらうしかない。

一口大に切り分けて塩を振って串焼きにしたシンプルな物だがセリア様は美味しそうに食べていた。


『王宮では温かい物は食べさせて貰えなかったので・・・

 こうやってアツアツを食べるのは久しぶりです。』

「王宮では冷めていたのですか?」

『はい。毒見の方が3名ほどいらっしゃったので・・・

 私の元へ出される時にはぬるくなってしまっていて・・・。』

「なるほど。仕方がないとは言えなるべく温かい内に食べたいですよね。」

『はいっ!ですからこうやって焼きたてを食べれるだけで私にはご馳走なのですっ。』

「そうですか、そう言っていただけてよかったです。」


よほど嬉しかったのかセリア様は肉を頬張りすぎて

口の中でハフハフしながら涙目になっていた。

うん、あれは軽く火傷したな・・・。


「お肉は逃げませんよ。火傷しないように気を付けてゆっくり食べてくださいね。」

『は・・はひ。』


ちょっと恥ずかしそうになりながらもセリア様はまだハフハフしている。

猫舌なのだろうか?

そんなセリア様を見ながら私も肉を頬張る。

うん、旨いな。



      ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃



メイファはとても頼もしく優しい。

王宮から捨てられ暗殺者に命を狙われ

どうすればよいのかも解らなかった私の手を取り守ってくれた。

その優しい背中を見ていると幼い頃の思い出がよみがえる。


兄と喧嘩する私を背にかばってくれたあの優しい背中。

撒いていると優しく包み込んでくれた温かな腕。

私の大好きだったお姉様。

王宮に行ってからは会う事も叶わなかったお姉様。

そのお姉様と彼女はなんとなく似ている気がする。


家に戻ったら久しぶりにお姉様に手紙を書いてみようかしら。



読んで下さりありがとうございます。

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