表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

陛下奪還作戦

『断る事は出来ないの?』

『断るのは得策ではないかと・・・。

 陛下が尽力いただいたので今の和平が成り立っているのです。』

『なんとか会わせずにはいられないの?』

『難しいでしょうな。

 あちら側は顔を見るまで安心できぬと仰せです。

 拒否するのであれば

 合わせられない理由があると邪推する事になるとも言われました。』

『仕方がないわね・・・。』


急に陛下の見舞いに来るだなんて。

元々個人的にも友好関係だったらしいから

さすがに3年も音信不通はまずかったかしら。

なんでこうも私の邪魔が入るのかしらね。

もうすぐ・・・もうすぐ王太后になれるのに。

邪魔はさせないわ。

やっと私の夢がかなうのよ。

適当に歓待してさっさと追い返してしまおう。

そう思って居たのに・・・


『ようこそ魔国王弟殿下並びに王太子殿下。』

『此度は急な申し出にも関わらず快く受け入れて下さり感謝いたします。』


挨拶を交わしながら驚いた。

王弟がこんなに若くて美しいなんて聞いてないわよ!

王太子にしてもなんて見眼麗しいのかしら・・・。

しかもあの装飾品・・・

王国の物とは比べ物にならないほど繊細な細工で美しいわ。

欲しい・・・

あの装飾品も王弟も王太子もすべてが欲しい・・・

なんとかして手に入らないかしら・・・

ああ、陛下に使った媚薬がまだ残っていたはず。

あれを使おうかしら。


『早速で申し訳ないが陛下にお目にかかりたい。』


はっ、そうだったわ。まずはこの場を乗り切らないと。


『どうぞ。ご案内いたしますわ。』



‥…━━ *‥…━━ * ‥…━━ * ‥…━━ * ‥…━━ *


案内された現国王の私室。

なんだこの匂いは・・・。

病人臭を誤魔化すための香でも焚いているのか?

いや違うな・・・これは。

(大叔母様、お気づきになりましたか?)

(ええ、この香が国王を深く眠らせているのでしょう。)

(我々が気づかないとでも思ったのでしょうか。)

(人間であれば、気付かなかったでしょうね。)

(なるほど、こいつらはやはり魔人族の魔国の事を何もしらないのですね。)

(その方が好都合ですよ。)


『香の匂いがきつくて申し訳ありません。

 陛下に病人臭を纏わせたくないもので・・・。』

『さようですか。

 そのような気遣いが出来る方がいて陛下も果報者ですね。』

『愛しい陛下の為ですから。』


どの口が言うのかとも思ったが表情は変えずにいた。

王弟殿下(大叔母)は陛下の手を取り優しく語りかけていた。


『ご無沙汰しております陛下。

 随分とおやつれになって・・・。

 もっと早くに伺うべきでした。

 陛下の力強い眼差しを再び拝見できる日を心待ちにしておりますよ。』

『叔父上、陛下にご負担がかからぬ様今日はこの辺で。

 また明日伺う事にしましょう。』

『ああ、そうだな。

 陛下、また明日参ります。』


『お2人共お疲れでしょうから部屋に案内させますわね。

 滞在中はどうぞごゆっくりと過ごしてくださいませ。』

『『 感謝いたします。 』』


現国王の私室を出た後はそれぞれ宿泊用の貴賓室へと案内された。

私達の背中を見送る第三妃の目が・・・熱を帯びているのが解った。

第二王子の横に当然だと言わんばかりに立っていた偽聖女の目も同様だ。

そうなるのは想定内だが正直気持ち悪い。

あの2人があちらこちらで色目を使っているとの情報は得ていた。

だからこそ、あえて男性の姿で来ているのだ。

あの2人が色目を使う事に夢中になっている間に現国王の奪還をする。

転移を得意とする部下をすでに潜り込ませてある。

現国王を奪還してしまえば、後は適当にあばれてやればいい。


あてがわれた部屋に入り少し休憩を取る。

横にはしれっと執事に成りすました兄ランファが居る。

ご丁寧に顔まで変えて・・・と眺めていたら


『なんだ?侍女姿の方がよかったか?』

「やめてくれ・・・兄上の女装なんて。」

『照れなくてもいいだろう?』


ん?と顔をかしげて両手を広げる兄・・・。

そういうのは他でやってくれ・・・。


「で、第一王子の方は?」

『ああ、事情は説明してある。

 陛下も奪還すればすぐに状態はよくなると話したら喜んでいたよ。』

「そうか。それはよかった。」

『後は俺の正体を教えたら、もっと早く教えてくれと。』

「まあ様子見だったしな。」

『陛下と第一王子であれば、今後のこの国を任せても安心だろうよ。』

「兄上がそう言うのならそうなんだろうさ。」

『そうだメイファ。晩餐会には気をつけろよ。

 あの女 媚薬を使う気でいるぞ。』

「まあ私達には効かんから大丈夫だよ。」

『はははっ、確かにな。』


媚薬は同性には効かないからな。

執事(兄)と話した後お茶を飲んでいれば、偽聖女がやってきた。

が、当然ながら執事によって追い返される。

何やらわめいていたようだが。

アレはただの第二王子婚約者であって、まず身分が違う。

なのに謁見の申し立てもなく私室扱いになるこの部屋にやって来るとか馬鹿だろう。

ちゃんと教育を受けさせておいて貰いたいものだ。


そう言えば晩餐会に神官長と魔導士長まで来ると言っていたな。

この国はずいぶんと身分の扱いがゆるいようだ。


「そうだ兄上。おもしろい事を思いつきましたよ。」ニヤリ

『ほう?』

「神官長と魔導士長。さすがに女性経験もなく生涯を終えるのはかわいそうでは?」

『ブハッ。まさか?』

「ええ、そのまさかですね。

 私にもその程度の慈悲はありますよ?」

『それを慈悲と呼べるのか?』

「ええ、当然ですよ。」ふふふ

『意外と趣味悪いな、お前。』

「やだなぁ。慈悲ですよ慈悲。

 ああ、下準備は兄上お願いしますね。

 はいこれ。 神官長と魔導士長の部屋によろしく。」

『なんでお前こんなもんがスッと出てくるんだよ・・・。』

「何がどうなるか解りませんからね。常に準備は整えておくものですよ。」


兄は溜息を付きながらも部屋を後にした。

読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ