竹槍航空隊~日出独立飛行隊の初陣~
未来知識を基に、いろんな要素をパクってでっちあげた「重迎撃機」A10。
コイツの初陣を書いてみました。
「本当の本当にやんのか!大丈夫なんか?」
飛行帽のレシーバーに羽間一飛曹の声が響く。うん。構内有線電話の調子は上々な様だ。
「敵爆撃機、位置、対馬北方。高度1万で徐々に降下中。機数おおよそ30!」
国東半島の両子山に設置されている試作対空電探からの情報が、これまた明瞭に飛び込んでくる。
幸か不幸か(俺は後者だと思う)、本日はA10の「射出訓練」を行うため、通常では装備しない「門松」(別製噴進補助装置一型が正式名称。「二型」があるため、間違いを避けるため愛称で呼ばれている)やら、奮進弾などを胴体に装備しており、発進もいつもの大分飛行場からではなく、日出の別府造船所大神工廠構内から行うことになっていた。
「ぶっつけ本番じゃないかよ!爆発はごめんだぞ!」
羽間のいうことも十分理解できる。数日前にやっと本格稼働が始まった日出特殊飛行部隊の練度はそれほど高くはない。
そもそも(俺も含めて)、この場には戦闘機パイロット経験者は、一級とは言いがたい陸軍搭乗員の俺と下士官1名しかいない。残りは海軍の水上偵察機乗りを集めて急造された飛行部隊なのだ。
隊全体でも戦闘機搭乗経験者は、戦隊長と副長の併せて4名という有様だ。
おまけに飛行部隊には作戦可能機が11機しかない。
書類上では2個飛行中隊24機のはずなのだが、機体は11機、搭乗員は9名しかいない。
その11機の機体も民間の自称「重迎撃機」のA10だ。民間というだけでも怪しさ満点だが、この機体そものが怪しさの極みだ。
まず、「重迎撃機」と言う分類。そもそも帝国陸海軍航空部隊にそのような機体分類は存在しない。
A10は、無理をすれば、陸軍の「乙戦」。海軍の「局戦」に分類しようとすれば分類される、攻撃力を重視した機体である。が、これらとも全く違った…というか「イカモノ」「キワモノ」と形容するのが正しい機体だ。
「重戦闘機」というと、脳裏に陸軍の二式戦や、海軍で開発中の局戦など、爆撃機用の発動機を使った大口径の機関砲を装備した重厚な機体を想像してしまうが、A10はそんなに生やさしいものではない。
機体は、海軍組に言わせると「(水雷艦搭載の)魚雷の方がまだ大きい」「陸攻に吊り下げらられるんじゃないか?」という小ささである。(初めてA10を見たとき「操縦者付きの飛行爆弾か?」と思ったのは内緒だ)この小さな機体が二式戦よりも優速であると聞いたとき、タチの悪い冗談だと思ったものだ。
このA10。何よりも、まず、
「やかましい」
この一言に尽きる。
「五月蠅い」という言葉は「もう少し慎み深い、静かな」状態を指す。そのくらいやかましい。「死人も飛び起きるやかましさ」だ。
騒音の原因は発動機だ。A10は「パルスジェット」という噴式のエンジンを採用しており、これが元凶になっている。この「やかましい」エンジンを2基も搭載しているのだ。
2基で1800馬力を超える出力(憤式発動機は「推力」という単位で性能を表すそうで、推力を馬力に換算するとこの程度になるそうだ)を捻り出すので文句は言えないのだが、エンジン始動後の外部との会話は基本的に無理。整備員との会話は、機体に接続された有線電話で行うことになっている。
また、足(航続距離)が極端に短い。性能諸元が正しければ「全力飛行1時間」だ。航続距離でなく飛行可能時間で計算しなければならないほど足が短い。これを使う俺達の苦労を察して欲しい。
最高速度は時速600km以上と優速ではあるが、飛行可能時間が1時間と言うことは、作戦半径は最大でも300km未満だ。これでは局地も局地!海軍の分類だと「超局地戦闘機」になるのではないかと思う。
飛行中も常に燃料計にお伺いを立てながら操縦することが求められる。航続距離が短いと酷評されていた二式戦でもこれほどではなかった。足の長い水偵乗りだった海軍組は「燃料残が気になって余裕を持って操縦に集中できない」とこぼしていた。
また、航続距離じゃない方の足(着陸脚)も短い。
大きな爆弾(海軍組に言わせると小さな魚雷)に申し訳程度の主翼を高翼形式で取り付けているため、主翼から脚を出すことができず、胴体引き込み形式になっている。そのため、背が低い。搭乗は楽なのだが離着陸が難しいのだ。
翼面積が極端に少ないため、離陸には長い滑走距離を必要とし、重心が高いため横風にはめっぽう弱い。吹き流しがはためく日の離着陸は恐怖以外の何者でもない。
加えて、着陸は胴体を摺らないよう注意しなければならないし、着陸速度は翼面積もあって異様に速い。
一番の問題は、その離着陸の場所だ。信じられないことだが、大神の飛行部隊基地には滑走路がない!
別府造船所内の隅に間借りしているためだ。飛行訓練は海軍大分練兵場の滑走路を整備して使用する有様だ。
「飛べない飛行機じゃ意味がない。滑走路のある場所が必要だ。飛行部隊の大分への移転を強く希望する」
と戦隊長と、副長が懇願したらしいが、飛行部隊の実質上の出資者。別府造船社長の意味不明の一言。
「滑走路?あんなの飾りです。偉い人にはそれが分からんのですよ」
という意味不明の反論を受け、であえなく却下されたらしい。
代わりに新規離着陸手段が提示されたのだが、これがA10以上のキワモノで、このキワモノの説明を受けた俺達は我が身の運命を激しく呪うことになった。
気乗りのしないまま、開発に関わった「帝大の先生」に運用教育を受け、今日から(まったく気乗りしないまま)訓練に入ろうかというその時の空襲警報発令だ。
俺の戦意は何度目かになる最低を更新していた。
造船所の工員がぞろぞろと防空施設に待避する中、日出特殊飛行部隊に出撃命令が下され、飛行中隊全員が乗り込んだ7機のA10(戦隊長は出張中。副長は地上で指揮だ)が「発射台」ごと造船所の牽引車で造船所内の資材ヤードに引き出された。
周囲にはクレーンがあり、構内のドックには「発射台」より遙かに大きい船が鎮座しているため、発射台付きのA10が多数展開されても全く目立たない。せいぜい、緑色に塗装された機体付加の装備群が違和感を感じさせるだけだ。
超高空の重爆撃機を獲物とするためだけに設計されている機体の気密性は意外に高い。エンジン停止状態でも風防を閉じると機内と機外の意思疎通が難しくなる程だ。
羽間曹長の怒鳴り声(後で聞くと「悲鳴」だと思われていたらしい)に応じてやる必要があるかもしれない。
「班長。羽間はああ言ってるがどうなんだ?」
機外で点検を行っている整備班長は、整備確認伝票に何かを書き付けると、首筋に器用に挟み込んでいた受話器を持ち直して答えた。
「問題ありません!どっちかというと搭乗員の方が心配です。振動と気圧変化に注意してください。一気に上昇するから気圧変化で気絶するかもしれません。上は寒いそうです。電熱服の電源と酸素マスクを忘れずに!ご武運を!」
それだけ叫んで敬礼すると、機体から電話の差し込み式端子を引っこ抜いて素早く発射台から飛び降りた。と、有線電話が超短波を用いた隊内無線に切り替わり、飛行指揮所(造船所の屋根の上にでっち上げられたトタン葺きの小屋だ)から副長の指示がレシーバーに飛び込んで来る。
腕のよい整備士が整備したものであっても「何となく」調子が悪いのが帝国陸軍の無線電話装置(海軍はもっとひどいらしい)なのだが、A10装置品の個体が良品なのか、それとも足繁くやってくる別府造船の「研究員」と名乗る連中の手によるものなのか分からないが、出撃体制に入っている第二飛行中隊と本部との意思疎通は音声に限れば全く問題ない。
「最終確認!敵は高度8000mで侵入中。9500mまで上がれ。酸素マスクは必ず着用!地上は猛暑だが電熱服の電源を入れ忘れるな!兵装への着氷に注意!発射準備確認報告!」
「1番から7番。最終確認完了!いつでもいけます!」
「エンジン始動!」
発進指揮を執る志賀副長は、発射台の位置確定完了を確認すると、無線と場内拡声器(別府造船から借用)のマイクにエンジン始動を告げる。
背中にエンジンにアセチレン(ガス)が注入されるわずかな振動が伝わり、次の瞬間、くぐもった爆発音とともにパルスジェットエンジン(PA-1号。「ぱ・1号」と読むらしい)が始動し始めた。
不機嫌な爆発音が、徐々にパラパラという乾いた衝撃音も変わりはじめると、白煙が双発のエンジンから盛大に吐き出され始めた。
発射台からエンジン始動成功の白色旗が楯の上に掲げられると、整備員達はアセチレンボンベを引っ張りながら防爆対策の土嚢陣地に向かって待避を始める。
発射台からの発進はそれほど危険だということだ。では、その危険に言葉通り乗っかっている俺はどうなのだろうか?
「全機始動成功!」
「よーし!発射台、方向、仰角合わせ」
「方向よーし」
「仰角よろし」
両子山からの諸元を基に、最短で会敵するようA10を載せた発射台が鎌首を持ち上げ始めた。が、高い仰角にパイロット達から悲鳴のような声が無線電話を通じて飛行指揮所に飛んで行く。俺も心配になって指揮所に陣取っている志賀少佐ではなく、「先生」に対して怒鳴った。
「先生!本当にこの角度なのか?大丈夫なのか!」
しばらく無線が沈黙すると、志賀副長に代わって「先生」の声が丁寧な回答を告げた。
「大丈夫です。角度は「たったの」15度です。垂直まであと75度もあります。角度は浅い方ですので問題ないです。それに、この角度じゃないと会敵できません。「本物」は垂直発射ですし、高度も「本物」の1/10くらいです。この程度の角度なんて誤差の範囲内です。うん。大丈夫!たぶん。上昇角13から18度を必ず維持してください。ご武運を!」
「先生」の声が無情にレシーバーに響き、再び微妙な間があいた後、申し訳なさそうな志賀少佐の声がレシーバーに飛び込んできた。「先生」!「本物」って一体なんだよ!
「ということだ!覚悟決めろ!
「整備員待避!確認した」
「上昇角に留意!竹の子点火!逝ってこい!」
「点火ぁ!」
「くそったれぇぇぇぇうぁぁぁぁぁl」
パルスジェットと「竹の子」と呼ばれる発射台に取り付けられた発射補助装置の乾いた轟音とともに俺たちは57メートルの発射台を一瞬で走りきり、約15mの高さから空に放り出された。
A10は、一瞬、機首を下げたものの、次の瞬間に点火されたブースター「門松」によりさらに轟音を高くして上昇を開始し、次々と国東半島の山々を掠めて行く。
「おぁぁぁぁ…」
高速回転する高度計と、通常の飛行機では見慣れない加速度計、これまた通常の飛行ではまず見ることのできない勢いで増速を続ける速度計を目の前に、俺は気圧変化に対応するための「歯を食いしばるな」の助言どおり酸素マスクの中で口を開いて、機体の姿勢、特に指示された上昇角を維持していた。
そうなるとうめき声に近い叫び声しか出てこない。大気を強引に突き破るA10は機体全体が猛烈に振動している。俺は急激に変化する気圧と振動に耐えながら、必死で操縦桿を上昇角15度を維持しようと奮闘していた。
発射台から放り出されてきっかり300秒。燃焼を終えた「門松」を切り離した後も上昇を続けるA10は高度8000メートル付近を飛行する敵爆撃機編隊を翼下に収めることに成功していた。
「…本当に9000(メートル)まで5分で上がりやがった…位置もどんぴしゃりだ…」
無線から第二分隊の相川中尉の声が聞こえてきた。同意する。9000まで5分などというふざけた機体は見たことがない。
零下数十度にもなる超高空なのだが、敵機を眼下に捉えたことによる高揚感と、真夏の地上では試着すら遠慮したかった電熱服。何よりもここまであっという間に到達したおかげで、寒さはさほど感じない。周囲を見渡すと同じように打ち上げられたA10が集結しつつあった。
ここは中隊長として気の利いた格好のいい言葉を吐かなければならない。機上電話の性能は極めていい。編隊内の会話も地上に筒抜けになるだろう。そう思っていると、相川中尉の声が届いてきた。
「金持ち※の道楽にしては上出来だ!今、よーくわかった!中隊長!攻撃指示を!敵は新型らしい。あの機体は初めて見る」
さすが、年期が違う。おまけにこっちを立ててくれるのもありがたい!うん。そのうち中隊長交代を戦隊長に直訴しよう!
「各機機銃試射。後方に回り込み上から一気にたたみかける。第一分隊は右、第二分隊は左旋回で敵の後方に接近。竹槍をぶっ放してたあと、残りを撃破だ。機銃は全弾撃ち尽くせ。終わったら温泉だ!夏なのに、ここは涼しすぎる」
俺は各機の応答を待つと大きく右旋回をするべく操縦桿を倒す。三番機も戦闘機の搭乗経験はないとはいえ、飛行時間は十分以上のベテランだ。蒼空に14本の飛行機雲を引きながら独立飛行隊第二中隊は敵爆撃機を左右から包み込むように2つに割れた。
B-29の乗員達はパニック状態に陥っていた。通常であれば迎撃機は下方から接近してくるはずなのだが、ジャップの迎撃機は、はるか上で悠々と編隊を組み直しているのだ。どうやら双発機らしく、機体から複数の飛行機雲を盛大に吐き出している。
「小型だ!…な、プロペラがない!ジェットか?あいつらナチから手に入れてやがったのか!ヤバイ!各機、密集隊形!迎え撃て!対空戦闘!すぐにぶっ放せ!回線開け!平文でも音声でもかまわん!ステイツにジャップの新型機情報を伝えるんだ!」
「…敵さん密集しだしたぞ!馬鹿め!「竹槍」の絶好の餌食だ。行くぞ!奮進補助装置点火!射程距離で竹槍全弾発射!その後各自で銃撃だ!一機たりとも帰すな!」
「敵機、後方から接近!速い!なんだあの速度は!」
十数秒後、時速700kmを超える速度で接近した7機のA10の翼下から、対空ロケット弾(竹槍)210発が一斉発射された。さらにその数秒後、接近したA10から米国製37ミリ機関砲が掃射され、大日本帝国に「いつでも攻撃できる」というメッセージを物騒な荷物とともに大陸(後に重慶からと判明)から運んで来たB-29爆撃機32機は大打撃を受ける。
対空奮進弾の直撃を受けた機体は爆散し、自国製の37ミリ機関砲を受けた機体の主翼は吹き飛び、胴体は引きちぎられた。
A10の一撃でB-29爆撃隊は21機を喪失。かろうじて撃墜を免れた残りの機体は爆弾を廃棄し、大陸方面に逃走を図ったが、高度を大きく落とした爆撃機に、高度を落としたことでエンジンの出力が増したA10が高速で接近して37ミリを叩き込む。
この頃になると、必死で駆け上がってきた九州各地の陸海軍戦闘機部隊も合流し、B-29部隊はハイエナに攻撃される象の様相を呈してきた。
我々も最後まで迎撃をしたかったのだが、いかんせん、A10は足が短い。すでに20分近く飛行している。戻りの時間を考慮すると戦闘空域に留まるのはあと5分程度だろう。
「各員、残念だが燃料切れだ。大分飛行場に帰投する。各自損傷知らせ」
「一分隊2番。問題なし。すげぃ機体だ」
「一分隊3番。異常なし。撃墜1機確実!」
「二分隊1番。損傷なし。大勝利だな」
「二分隊2番。損傷なし。初撃墜です」
「二分隊3番。損傷なし。キワモノだと思ってた自分が馬鹿でした!」
「二分隊4番。損傷なし。この調子が続くとエースは確実です!」
「よかった。各機。帰投する」
「中隊長!格好良く編隊組んで帰還しましょうよ。大戦果ですから、少しは格好つけてもいいでしょう」
羽間が何か言ってきた。なるほど。まぁ、悪くはないな。
「横一列編隊で小倉を航過。そんなとこで済まそう。あんまり目立つべきじゃないからな。一分隊は俺の左に。二分隊は俺の右で。さぁ、凱旋だ!」
帰還途中、「先生」から根掘り葉掘りロケット作動状況を質問されながら、俺たちは大分飛行場に舞い戻った。
地上で俺たちを待っていたのは大分練兵場総出の歓迎だった。開設時の冷遇はどこへやらである。まぁ、これで冷ややかな視線が多少マシになればいいかな?
飛行部隊には、陸海軍の両方から部隊感状が贈られることになったそうだ。
「鉄壁の守り」を喧伝していた陸海軍の戦闘機が何もできない中(実際は戦闘空域に急行していたのだが、まぁ、遅かりし由良之助というやつだ)、誰よりも先に戦闘空域に達し、一瞬で爆撃編隊を殲滅に追い込んだ(かなり誇張されている)我々は、陸海軍の国民に対するアピールに絶好の材料だったらしい。
感状は無論名誉ではあったが、我々が一番感激したのは大神の別府造船大食堂での祝勝会(大宴会)だった。
相変わらず、メシが美味い。戦争が終わったら別府造船で働こうかな?と思ったのは内緒である。
そして、俺たちは「日出の平和を守るため(俺が言ったのではない。来島社長の言葉だ)」今日も訓練にいそしんでいる。
「先生!なんで発射角度が65度なんですか!」
俺は更に凶悪度を増した「別製奮進補助装置二型(門松)改」と、「別製奮進補助装置三型」を取り付けられたA10の操縦席から無線で怒鳴っていた。既に背中のパルスジェットエンジンは全開状態で後方に煙をまき散らしていた。
A10の運用改善という美名の元、凶悪度を増した補助ロケット装置を機体に組み付けられたA10は既に電柱に止まった蝉の様相を呈している。性能試験ということで日出飛行隊の面々が駆り出されているのだが、よりによって俺の番にこのような最大級のイカモノが回ってきた。
技術の進歩に貢献するのは、帝国陸軍航空兵として当然のことであるが、はっきり言って、はっきり言って!この状況はいただけない。
「う~ん。新型爆撃機が音速で侵攻してくると、打ち上げ角は最低でもこの位になるんですよ」
「どんなバケモノですか!米軍の新型爆撃機は!音速出るんですか?」
「予想される性能の3割増しで想定してますからねぇ。できればもう少し高度を稼げるようにしたかったんですけど」
「性能盛り過ぎです!こんなんで打ち上げられたら死んでしまう!」
「大丈夫!中尉は頑強なんでしょ。んじゃ行きますよ。発射ぁ」
「わ、ちょ、うぁぁぁぁ」
「あ、飛行機雲だ」
「あれは、日出の空中戦車だ。爆撃機を一発で10機たたき落とすらしいぜ」
「いいなぁ。俺も乗ってみたいなぁ」
-少年。俺は乗らないことを強く勧めるぞ-
※来島は日本、いや世界でも有数の金持ちで、世界有数の吝嗇家だと言われているが、見た目は小者感溢れるオヤジである。
重迎撃機(笑)A10の諸元は
https://ncode.syosetu.com/n9615cr/83/
竹槍物語(3)を参照ください。
その他、怪しい装備は以下のとおり
別製対空噴進飛翔体一型(竹槍)
開発名称・愛称「竹槍」。連合軍には「Bamboo Rocket」の名前で知られる。正式名称は「別製対空噴進飛翔体一型」
渡邊鉄工所(後の九州飛行機)の重迎撃機「A10」の副兵装として開発されたが、その威力と汎用性から非制式ではあるが陸海軍の重戦闘機や攻撃機、陸海軍の武装輸送船にも搭載され使用された。また、陸軍歩兵の対戦車兵器としても少数が流用されている。
現代でいう対空ロケット(ミサイルではない)で、全長約1m、重量約6kgの固体燃料ロケットをランチャー(別製対空噴進弾発射筒一型)に15本搭載し、一斉発射する。(陸軍歩兵向けランチャーは4発装弾で、単発発射が可能)
弾体は筒状胴体に炸薬と個体推進薬を充填したもので、推進薬充填作業の危険性を無視すれば「尋常小学校の生徒でも作ることができる」とまで言われた程の簡易さであった。(実際、推進薬の充填は主婦が担当している)
統制品であった軽金属の使用を極力減らすため、竹紙(竹製ボール紙)を使用して胴体が製作されている。胴体の製造は愛媛県川之江町、組み立ては同県宇和島市で行われていた。これは開発を行った別府造船の工場(日出)と海路による交通が容易であったためである。
開発当初は二種類の推進薬の燃焼速度調整、燃焼温度制御や組み立て精度の問題で、飛行距離が出なかったり、とんでもない方向に飛翔する状況だったが、陸軍と中島飛行機からの出向技師らの精力的な開発と、川之江町の製紙業者の高い加工能力により性能が向上。無誘導ではあるが一撃で重防御の爆撃機を撃破できるまでになった。
有効射程距離が700~800mと、20mm機銃の有効射程距離(おおよそ200~300m)よりも格段に長いため、対戦闘機空戦時には一撃目で竹槍を使用して相手の態勢が崩れたところを機銃で攻撃するという方法が編み出されている。
「A10」には2基搭載されたが、「A10」の運動性、飛行時間を無視した場合は4基まで搭載できた。
別製噴進補助装置一型(孟宗竹)
A10の離陸補助用ロケットブースター。
別製噴進補助装置のロケットモーターを流用して製作された。
離陸時に大量の燃料を消費するA10を「素早く」離陸させるために開発された。
通常はA10の翼下に落下タンクの代わりに装着される。
A10の構造では、ロケットポッドの装着位置に更に2基追加することもできるのだが、さすがに4基装着は行われなかった模様。
別製噴進補助装置二型(門松)
A10の離陸補助用ロケットブースター。
重迎撃機A10は、パルスジェット推進のため燃費が極めて悪く、迎撃対象にたどり着く前に大量の燃料を消費してしまう。そのため交戦時間が極端に短くなるという致命的な欠点がある。
設計者(と本人は強弁しているらしい)の来島社長によると、
「近い将来に超高空から重爆撃機が戦闘機並みの速度で飛来する」
可能性があるらしく、A10の開発はそれを見据えてのことらしい。
超高空からの侵入に対応するには、そこにたどり着くまでの時間短縮が必須なのだが、海軍の「雷電」、陸軍の「鍾馗」をもってしても、高度8000mにたどり着くには10分近くかかる。
迎撃戦において10分のタイムロスは致命的、単純計算しても70km近く味方制空圏に侵入されてしまう。
これを念頭に、燃料温存、高速での迎撃地点への移動のため、別製離陸補助噴進機一型(孟宗竹)のロケットモーターを機体直付けの超大型RATOに流用することを考えた。
発案はもちろん来島社長である。
別製噴進補助装置二型は、別製離陸補助噴進機一型の全長を延長し、それを3本束ねたもので、2基一組でA10の胴体に装着される。
噴進補助装置を装着したA10は着陸脚が使用できないため、トラス構造の専用発射台(全長57m。別府造船製で最大70度の仰角をつけることができる)から「発射」される。加えて、発射時の初速を確保するため発射台には専用の補助ブースター(別製噴進補助装置三型愛称「竹の子」)が装着されている。
ブースターは燃焼後パラシュートで地上に落下、部材は再度使用された。そのため、ブースターには発見時の引き渡し先、連絡先が緑の本体に白地で書き込まれており、シュールな外観となっている。
別製離陸補助噴進機一型(孟宗竹)を3本束ねたため、実戦部隊からは「門松」と呼称された。
別製噴進補助装置三型(竹の子)
別製噴進補助装置をA10の発射専用に流用したもの
研究中の噴進機が100kg以上あるのに対し、別製離陸補助噴進機一型は、他の「竹ファミリー」の補助で有効噴射時間も発射台をA10が滑走する時間のみでよく、推進時間は5秒程度であるため、推進薬は減らされている。