優しすぎる魔王様。
「え……、今なんて?」
魔王が私に聞き返す。
「え? あ……。」
やべぇ、早速やらかしたー……。これは流石に…、私たちの馬鹿っ! これじゃ魔王に顔向けられないって……。
「えっとぉー……、それは………。」
「初めて言われましたよ。そんな誉め言葉。私には勿体無いくらいです。毎日綺麗にお掃除をしていた甲斐がありましたよ……。」
「………んん?」
何っ……?
人間の顔して、山羊っぽい少し渦の巻いた角を生やして、ガタイも大きくて、悪魔みたいな尻尾生えてて、声も人間にしてはちょっと低い、めっっちゃ怖そうな魔王がなにいってんの!?(怒涛)
「び、美術館がですか……?」
「ええ、そうですよ?」
……ちょっと何言ってるのかよく分かんない。
「で、お嬢さんは一体……、この見た目と中身が裏腹なお城に何の御用ですか? ……あ、それとも迷子ですか?」
あ、外と中が裏腹なのは自覚してるのね……。
「私を魔王様の秘書にして下さい!」
もう私はこの謎すぎる雰囲気に身を任せてダメ元で言う。
「ふむ………。いいでしょう。」
「はぁ、やっぱダメですよね……。では私を食うなりなんなり……って、ん?」
「よし、では今日から宜しくお願いしますね。」
え、いいの?
私はすっとぼけた顔をしてしまった。(そりゃ快諾されたら当然よ……。)
「えっ、あ……。よっ、よろしくお願いします!」
勢い良く、私は礼をした。
「そういえば、秘書さんのお名前は?」
「わ、私の名前てすか?」
普通に水上翔子です! とでも答えればいいのか? でもこの世界じゃ多分伝わらないだろうな……。
「えっとー、私は、ショウって言います!」
これで大丈夫かっ……!?
「ほう、ショウ……ですか。可愛い名前ですね。」
魔王の口から可愛いなんて言葉出るんだ。しかもずっと口調がですます調だし……。
つか、名前通じた……。あーよかった。
「私の名前はメルフィオと言います。」
「……いや、魔王様の方がお名前可愛いじゃないですか。」
「そ、そうですか? それは……、いやぁ照れますね。」
やだ、魔王が照れてる。ダンディーな顔して。なにこれもう色々超えて可愛いんだけど。もしかしてちょろい? と思ったので私はもう思い切って聞く。
「魔王様って全然怖くないですね?」
「え、やはり……、私って怖くないですか?」
メルフィオ様が少し俯く。あれ、もしかしてコンプレックスだったやつか? いや、もしかして怒られる……!?
「そんなこと、初めて言われましたよ……。優しいなんて、今までで人生最高の誉め言葉です。魔界では優しい顔つきなんて、馬鹿にされるだけでしたからね……。ありがとうございます、ショウさん。」
「マジですかぁ……。」
んー、これ魔王で合ってるのよね……?