遠いんですが、魔王城。
出発してから、30分経過。
「結構歩いたと思うんだけどなぁ……。」
遠い、長い、暑い。
昨日の格好のままのおかげで、トレンチコートがとてつもなく邪魔。しかも仰向けになっていた私の隣にはご丁寧に、毎日履いてるヒールが置いてあった。それで歩いているせいか、それともコートのせいか、おかげで私は汗だく。しょうがなくトレンチコートを脱ぐことにした。
てか、一向に魔王城?へ近付いている気配がない。とりあえず、スマホを確認する。やはり未だに圏外。時間もついでに見る。
「12時半……、まだ会社では休憩時間か……。」
たしか、今日の予定は会社のお得意様へのお茶菓子を買いに行き、そのあと会議用の書類確認だった気が……。私はスマホで今日のスケジュールを確認する。
「社長。このあと私、お茶菓子買ってくるんで……。なーんて、呟いても無駄か………歩こ。」
何となく、声に出してしまった。
そう、私は秘書。まあまあ有名な会社の社長の秘書。有名って言っても、そんなに大きくないけど……。しかも、私は肩書きが欲しくて秘書という役職になった訳じゃない。
いつの間にか、なっていた。
それに、私の意志じゃなかった。
「ちょっといいかい、そこの嬢ちゃん。」
後ろから声が聞こえ、私はほぼ反射的に振り向く。そこには、薄汚れたローブを被ったおじいさんがいた。
「あそこの魔王城を目指してるのかい?」
やっぱり、あそこ魔王城なのか……。
「あ、はい……。」
すると、そのおじいさんはふぉっふぉっ、と笑って。
「歩いてるだけじゃあ、魔王城には着かんぞい。」
「えっ、マジですか……? だからいつまで経っても近くならないワケだ……。」
私はガッカリする。
「そんな落ち込まなくてもいいじゃろ。特別じゃ、わしが魔王城まで連れてってやるわい。わしはここら辺に詳しいからのぉ。」
「えっ、本当ですかっ!?」
という事で。ここはおじいさん甘えて、魔王城まで連れてってもらうことにした。