ブサイクハーレムに一週間閉じ込められた結果
「いいか誠、女は顔じゃない、心だ。顔で判断すると父さんみたいに捨てられるぞ」
「うん!お父さんみたいに捨てられないよう、性格のいい人と結婚する!」
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おはようございます。小さい頃の夢から覚めてなんだか気持ちはブルーです。
突然ですが、僕は今辺り一面真っ白い部屋に閉じ込められています。
あれは確か、日課のランニングのため早朝に家を出た時でした。
少し走っていると、ワゴン車が僕の目の前で停まり中から黒ずくめの男たちが出てきて、手際よく僕を車に押し込んだ、というところまでは覚えています。
今日からゴールデンウィークだったというのにこの仕打ちを受けた僕はテンションだだ下がりです。
僕が目を覚ましたことに気付いたのでしょうか、何処からか声が聞こえてきました。
『ようやくお目覚めだね、藍川誠くん。突然で申し訳ないが君には今日から一週間、ブサイクハーレムで過ごしてもらう』
男なのか女なのかいまいちわからない声が部屋に響き、簡潔に用件を伝えてきます。
正直、急に意味の分からない事を言われ困惑はしましたが、この手の相手には何を言っても意味がないというのは僕の漫画を読んできた経験から何となく予想できます。
なので、必要な事だけ聞くことにしました。
「ブサイクハーレムとは何ですか?それと、急に一週間いなくなると父が心配すると思うんですが、そこら辺の対処はどうするんですか?」
『ブサイクハーレムとは、その名の通りブサイクのハーレムです。今からあなたには一週間、3人のブサイクな女の子と暮らしてもらいます。右手にあります扉の奥に入ると、あなた達が一週間過ごす居住スペースがあります。お父様に関しましてはすでに対処しておりますのでご安心を』
「...なんで敬語になったんですか?」
『...最初から敬語でしたが』
僕が起きた時は確かに偉そうな口調だったのに、質問に答えるときは敬語になった謎の人物を不思議に思いましたが、さして重要でもないのでこれ以上追及するのはやめておきましょう。
それにしても、誤魔化すの下手過ぎません?
「それじゃあ最後に、何で僕なんですか?」
『そこにあなたがいたからです』
登山家のような理由で誘拐されて納得する人がいるとでも思っているのでしょうか?
しかし、相手がどんな存在かもわからないので突っ込まずに黙っていると、謎の人物が声をかけてきました。
『これ以上質問が無いようでしたら居住スペースへと移動してください。それでは私はこれにて失礼いたします。...ふぅ終わった~。それにしても、目的を聞いてこなかった子初めてだなぁ。...って、やば!スイッチ入ったままじゃん!___ブチッ』
「ちょっと待って!今すごく気になること言いませんでした?!」
終わり際に物凄く気になることを言った謎の人物に向けて、僕は何度も声を掛けましたが結局反応はありませんでした。
目的を聞いてこなかった子は初めて、と言っていたからには、ブサイクハーレムは初めて開かれたものではない事がうかがえます。
目的を聞かなかった理由は、聞いたところで教えてくれないか、納得のいく答えはもらえないだろうと思い聞きませんでしたが、こんな大きな疑問が残るくらいなのであれば聞いておけばよかったです。
いくら呼びかけても謎の人物は返答してくれないだろうと諦め、言われたように扉の方までいきます。
扉の目の前まで辿り着くと、勝手に扉があきました。
その先の光景は、まるで一軒家の玄関のようです。
「3人いるって言ってたけど、もういるのかな?」
玄関には僕以外の靴が3つありますが、その子達の靴でしょうか?
僕も玄関から上がり、リビングらしき部屋に入りました。
「...ッ?!えっと、今日から来ると聞いていた藍川誠くんでしょうか?」
僕がリビングに入ると、台所からエプロン姿の女の子が出てきました。
その子は黒く長い髪をポニーテールにしており、大きな胸が特徴的な女の子でした。
しかし、その子の顔はニキビでぶつぶつ、変につった目に、極太眉毛、大きく開いた鼻の穴に、主張の激しいたらこ唇。
世間一般でいう、ブサイクに分類される容姿をした女の子でした。
「はい、一応そうなんですが。...えっと、僕いまいち状況を掴めてないんですけど貴方は何かご存じですか?」
僕がそう質問すると、彼女は驚いた様子を見せました。
「どうしたんですか?」
「...い、いえ、ごめんなさい。その、私の容姿を見ても特に気にした素振りがなかったので驚いてしまいまして。...状況ですよね。えっと、まずは自己紹介をしますね。私は大橋春香です。ここは、名家の生まれでも容姿が原因で結婚相手が見つからない私たちの結婚相手を見つけるための場所です。藍川くんには申し訳なく思いますが、1週間耐えれば何もされないので耐えてもらうしか...。嫌ですよね、こんな見た目の人間と一緒に暮らすのなんて...」
そう言って大橋さんは悲しそうな表情をしました。
恐らく、彼女は自分の見た目でたくさんつらい思いをしてきたのでしょう。
ただ、容姿が優れないというだけで...。
「嫌なんかじゃないですよ。人間、見た目より中身だと僕は思います。ほんの少ししか話してないですけど、大橋さんが悪い人じゃないのは伝わってきました。そして、自分の容姿で悩んでいることも。この1週間で大橋さんが少しでも自分に自信が持てるように協力しますよ」
僕が大橋さんを励ますように声をかけると、僕の後ろから声がしました。
「ハッ、どうせそんなこと言って心の中ではブサイクだって馬鹿にしてんでしょ!」
僕は声がした方向に顔を向けると、そこには黒髪ツインテールで少し控えめな胸の女の子が立っていました。
その子は、大きな顔に不釣り合いな小さい目、濃いそばかすの女の子でした。
「なんでそう思うんですか?」
「簡単よ、これまでの奴らも最初は良い顔する奴はいたけど、最後には私たちを無視するなり、ブスと罵るなりしてきたもの。あんたもどうせそうに決まっているわ」
彼女の話はとても悲しい内容でした。
そして、彼女がこのように拒絶するのも過去の傷が原因なんでしょう。
信じたくても、過去の経験から裏切られることを恐れ信じれなくなってしまった。
僕はそのことに気付くと、どうにかして彼女を、また他人を信じてあげられるようにしてあげたいと思いました。
そうしていると、また一人女の子がリビングに入ってきました。
彼女は金色の髪を腰まで伸ばした、ハーフのような見た目をしていました。
しかし、彼女の顔右半分は焼けただれており、とても痛々しいものでした。
「こんにちは藍川誠さん。私は財部エレナと申します。そしてこちらの子は安達凛子です。これから1週間よろしくお願いします」
財部さんは恭しくお辞儀をし、無表情で自己紹介をしました。
ずっと無表情で淡々と挨拶をする彼女の姿は、とても見ていてつらいものでした。
恐らく財部さんも、安達さんと違った角度で容姿に関した嫌な思い出があるのでしょう。
大橋さんに、安達さん、財部さんの3人を見て僕は一つ決心しました。
この3人は自分の容姿のせいで自信が持てていない状況です。
なので僕が、人間見た目じゃない、ということを教え、自信を持てるようにしてあげようと。
小さなころに父が性格の悪い母に捨てられてしまった僕にしか出来ないことだと思うので...。
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3日目
3人に自信を持たせようと決意したはいいものの、そもそも3人の性格がいいかを判断しなければ僕としても好意的に接することが出来ません。
なので、初日と2日目は3人の観察を主にして動きました。
その結果分かったことは、3人ともとても魅力的な人だということでした。
まず大橋さんは、とても気が利く女性でした。
僕と安達さんたちのぎくしゃくした空気に、どちらも不快にならない程度の範囲で仲を取り持ってくれました。
そのおかげで、安達さんもあからさまに敵意をむき出しで話してこなくなり、財部さんは薄っすらとではありますが笑顔を見せてくれるようになりました。
また、家事を分担して行っているのですが、大橋さんの作る料理はお店で出してもかなりの値段をとれるほどの美味しさでした。
よく気が利いて、家庭的な女性。というのがこの2日での大橋さんの印象です。
続いては安達さんですが、彼女はとても努力家な人だということが分かりました。
安達さんは医者になることが夢なのだそうで、そのための勉強をしている姿を朝夜関係なく何度も目にしました。
僕も同じく医者を目指しているので、もう少し仲良くなれたら一緒に勉強なんかもしたいと思っています。
また安達さんは意外と面倒見がよく、自分の勉強があるというのにも関わらずみんな(僕を除く)の勉強も見てあげていました。
気は強いけど努力家で、面倒見のいい女性。というのがこの2日での安達さんの印象です。
最後に財部さんは、思いやりのある女性だとわかりました。
初日の夜、僕のことについて大橋さんと安達さんが口喧嘩をしてしまいました。
その時、財部さんは真っ先に二人の仲裁に動き、その後の二人の空気も良好なものに戻りました。
喧嘩した理由が、安達さんの僕に対する態度があまりにも悪かったことへの忠言から派生したこともあり、僕へのケアまでしてくれました。
また、3人とも名家の生まれなので行動の端々に上品さが伺えるのですが、中でも財部さんは特に礼儀正しい女性でした。
礼儀正しく上品で、思いやりのある女性。というのがこの2日での財部さんの印象です。
この2日で3人とそれぞれ話す機会がありましたが、容姿に関する話になると揃って悲しげな表情を見せました。
僕はその度に、心が痛くなりました。
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5日目
ブサイクハーレムも後半に入り、僕と3人の関係はかなり良好になりました。
まずは大橋さん。
大橋さんとは、一緒に料理を作るなどで仲を深めました。
父子家庭だったこともあり僕も料理の腕には自信がありましたが、大橋さんは僕よりも手際が良く、かつ美味しく作っていたため、少し料理の自信がなくなってしまいました。
そんな僕の様子に気付いたのか大橋さんは僕に料理のコツなどを教えてくれて、僕の料理の腕もたったの2日でかなり上がりました。
また、二人で話す機会もあり、その時した会話はとても楽しいと感じたのを今でも覚えています。
続いて安達さん。
安達さんとは、かなり打ち解けたように思います。
観察の際に考えていた、医者になるための勉強を一緒に出来ればいいな、というものも出来るようになりました。
しかも、なんと目指している部門も一緒で、僕も安達さんも小児科志望でした。
僕と同じだと安達さんが知った時に見せた、同じ夢を持つ同志を見つけ喜んだような顔は、とてもかわいらしく僕の目には映りました。
最後に財部さん。
財部さんは、最初のころとは違い、かなり表情豊かに接してくれるようになりました。
そして、財部さんはよく見てみると美人さんだったことに気付きました。
僕が顔を重視していないことと、財部さんが火傷痕を見られるのはあまりいい気はしないだろうということであまりしっかりと顔は見ていなかったのですが、目鼻立ちはしっかりとしており、火傷痕がなければ相当な美人さんだったことでしょう。
だからこそ、彼女は火傷痕があることを深く気にしているのでしょう。
また、財部さんは意外とお茶目な面もあることがわかり、その度に少しドキッとしてしまいました。
5日間ともに生活をして、彼女たちが容姿を加味しても魅力ある女性であると思わされました。
彼女たちも僕に心を開き始めてくれており、僕の目標である彼女たちの女性としての自信をつけさせるというのも出来そうです。
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7日目最終日
今僕は、大橋さんと二人でいます。
「最終日になっちゃったね。これまで何回かこんな風に同年代の男の子と過ごすことがあったけど、ずっと優しく接してくれたのは藍川くんが初めてだよ。それが例え同情とかが理由だとしても」
「僕が大橋さんたちに優しくするのは、同情とか哀れみなんて言う上から目線な理由じゃないですよ。この1週間みんなと過ごして、女性は顔じゃないっていうのが更に分かりました。確かに大橋さんたちは世間一般で言われるブサイクなのかもしれない。でもね、僕にとってはみんなとっても魅力的な女性なんです。大橋さんは自分の容姿から女性のとしての自信を失ってしまってるのかもしれないけど、僕が保証します。大橋さんは顔がいいだけの女性よりも魅力的な女性です。...って、僕なんかに保証されても意味無いか、アハハ」
我ながら臭いセリフを言ってしまったと思い、照れ隠しで笑い飛ばす。
黙ったままの大橋さんの方を見ると、大橋さんは涙を流していました。
僕は泣いている理由がわからず、慌てて大橋さんを慰めようとすると、大橋さんは笑いました。
「フフッ、別に悲しかったり、辛くて泣いたわけじゃないよ。ただ、嬉しくて。これまでみんな、私のこと見た目でしか判断してくれなくて。中身を見てくれた藍川くんにそう言って貰えたのが嬉しかったの。ありがとう、藍川くんのおかげで少し自信が持てたよ」
そう言って見せた大橋さんの笑顔は、僕の知っている大橋さんの顔とは全く違い、とても可愛い美少女に映りました。
「さっ、次は凛子ちゃんのとこだね。いってらっしゃい藍川くん」
僕が呆然としていると、大橋さんがそう言いました。
そう言った大橋さんの顔は、僕の見知ったものに戻っており、見間違いだったようです。
そして、次は安達さんと二人で話をします。
「まずあんたに謝んなきゃいけないことがあるの。最初の日、ひどいこと言ってごめんなさい」
僕がくるなり、安達さんはそう言って頭を下げてきました。
「いいですよ。それに、安達さんがあんな風になっちゃったのは仕方のない事だとも思うので。...大橋さんから聞きました、これまで何回か同じような生活をしてきたんですよね?その度に期待して、そして裏切られて。あんな風になるなっていう方が無理な話です。でも悲しいことですよね、物事の本質を見極めず、上辺だけで人を判断するなんて。安達さんはこんなにも素敵な人だっていうのに」
「ちょっ、あんた急に何言って...///」
「本当のことを言ったまでです。安達さんは、自分の夢に向かってひた向きに進んで行く努力家で。それなのに他の人の勉強も見てあげるような面倒見がいい一面も持っている素敵な女性です。だから僕は、安達さんに女性としての自信を持ってもらいたいんです。そこらにいる女性なんかよりも数倍は魅力のある女性なんだと」
僕は少し恥ずかしい思いでしたが、安達さんに自信をもって貰いたいと思い、恥ずかしさを押し殺しそう言いました。
「わ、分かったから。ちょっと静かにしなさい...///」
僕の言葉に照れていた安達さんの顔は、大橋さんの時のように、全く別人の美少女に映りました。
しかし、次の瞬間にはいつも通り、よく知る安達さんの顔に戻っていました。
「今めっちゃ恥ずかしいから、速くエレナのとこ行きなさいよ」
「う、うん。それじゃあね」
そう言って、僕は財部さんの所へ向かいました。
そして、財部さんと二人でお話をします。
「藍川さんと一緒のこの1週間、これまでで一番楽しい1週間でした。お別れになってしまう前に、一つお聞きしたいことがあります。藍川さんは、もし私に火傷痕がなかった場合、女性としてどう思ってくださいますか?」
「素敵な女性だと思いますよ。あぁ、でもこの答えはその質問に対する正確じゃない答えですね」
僕がそう言うと、財部さんは首を傾げました。
「よく分からないって顔ですね。じゃあ説明しますね。なんで正確じゃないって言ったのかというと、それは例え火傷痕があったとしても財部さんは十分すぎるほど素敵な人だからです。。僕が来た初日の夜に、大橋さんと安達さんが喧嘩したの覚えてますか?その時、二人の仲裁だけでなく喧嘩の原因となった僕の心理的負担にも配慮して、僕の心のケアまでしてくれました。そこまで考えられる人はなかなかいません。それこそ、人への思いやりがある優しい人でもない限り。...だから火傷痕があろうがなかろうが、僕は財部さんが素敵な女性だと思います」
「そうですか...、ありがとうございます」
僕の言葉を聞き終わり、嬉しそうにほほ笑む財部さんの顔には火傷痕がなく、僕が一度想像した、あったかもしれない財部さんの美しい顔が映りました。
まただ、そう思い僕が目をこすると、火傷痕のある財部さんの顔に戻っていた。
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翌日
僕がブサイクハーレムから出る日です。
3人は見送りに玄関まで来てくれていますが、ここに残るのでしょうか。
僕は少しでも彼女たちに自信をつけてあげられたのでしょうか。
いろいろと不安や疑問、後悔が浮かんできます。
すると、3人がそんな僕の様子を見て声をかけてきました。
「藍川くん、安心してください。私たちはあなたのおかげで自信を持てました」
「あんたがいたから、もう一回自分を信じようと思えたわ」
「少なくとも藍川さんは、私たちにとって大きな存在になりました。ですので」
「「「ありがとう」」」
3人が声をそろえて僕に感謝の言葉を言ってくれました。
3人が僕の不安を拭ってくれました。
気付いたら僕は涙を流していました。
どうやら僕は、3人のことが好きになっていたようです。
父に小さい頃から言われてきた「女は顔じゃない」という言葉を信じてきてよかったと思いました。
だって、こんなにも素敵な人を好きになれたのですから。
僕は別れを惜しみ、いつかまたどこかで会えることを期待して、
「では皆さん、またいつか」
そう言って玄関の扉をくぐりました。
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「ふぅ~、1週間終わり~っと」
いくつものモニターとブサイクスイッチと書かれたボタンのある部屋に、そのような声が響いた。
その声は、男なのか女なのかいまいちわからない声をしている。
いくつもあるモニターには、一軒家の部屋の中がモニタリングできるようになっている。
その中の一つには、玄関とそこにいる3人の少女が映っている。
一人は黒く長い髪をポニーテールにしており、大きな胸が特徴的な女の子。
顔はニキビでぶつぶつ、変につった目に、極太眉毛、大きく開いた鼻の穴に、主張の激しいたらこ唇。
一人は黒髪ツインテールで少し控えめな胸の女の子。
その子は、大きな顔に不釣り合いな小さい目、濃いそばかす。
一人は金色の髪を腰まで伸ばした、ハーフのような見た目をしている。
しかし、彼女の顔右半分は焼けただれており、痛々しい。
「よし!藍川誠くんも出て行ったし、ブサイクスイッチOFF!」
声の人物がブサイクスイッチなるものを押すと、モニターに映っていた少女達に変化が起きる。
先程まで映っていたブサイクな少女達が一瞬にして美少女に変わったのだ。
そう大橋春香、安達凛子、財部エレナはブサイクスイッチの影響でブサイクハーレムにいる間は他人からはブサイクに見えるようになっていたのだ。
この技術は、大橋グループ、安達カンパニー、財部財閥のトップたちが娘にはいい相手を選んでほしいという理由から作られた。
大橋春香、安達凛子、財部エレナは美しすぎた。
そのため、他人は彼女たちの容姿か、彼女たちの家族の持つ権力にしか目を向けなかった。
よって、その技術を使い、ブサイクハーレム計画を実行した。
本当の彼女たちを見てもらうために。
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約2か月後
おはようございます。
突然ですが、僕は今辺り一面真っ白い部屋に閉じ込められています。
うん、久しぶりにこの光景です。
まさか2度もこんな経験をするとは思いもしませんでした。
今日から夏休みだっていうのに困ったものです。
『ようやくお目覚めだね、藍川誠くん。突然で申し訳ないが君には今日から一週間、美少女ハーレムで過ごしてもらう』
久しぶりに聞いた男なのか女なのかいまいちわからない声が部屋に響き、簡潔に用件を伝えてきます。
正直、前回と似ているようで全く違う事を言われ困惑はしましたが、この手の相手には何を言っても意味がないというのは僕の漫画を読んできた経験から何となく予想できます。
なので、必要な事だけ聞くことにしました。
「お久しぶりです謎の人。ところで美少女ハーレムとは何ですか?ブサイクハーレムの間違いじゃないんですか?それと、急に一週間いなくなると父が心配すると思うんですが、そこら辺の対処はどうするんですか?」
『お久しぶりです。美少女ハーレムとは、その名の通り美少女のハーレムです。それとブサイクハーレムなんて知りませんね。今からあなたには一週間、3人の美少女と暮らしてもらいます。右手にあります扉の奥に入ると、あなた達が一週間過ごす居住スペースがあります。お父様に関しましてはすでに対処しておりますのでご安心を。これ前回もいいましたよね?』
「...なんで敬語になったんですか?あと久しぶりって言葉に反応しちゃったらブサイクハーレムのこと認めてませんか?なんなら前回って言っちゃってましたよね?」
『...最初から敬語でしたが。それに久しぶりも前回なんて言葉も言ってませんが』
懐かしいやり取りと、相変わらず下手な誤魔化しに思わず笑ってしまいそうになります。
それにしても、相変わらず誤魔化すの下手過ぎません?
「それじゃあ最後に、何でまた僕なんですか?」
『そこにあなたがいたからです』
またしても登山家のような理由で誘拐されて納得する人がいるとでも思っているのでしょうか?
しかも今回に限っては2回目ですよ?
しかし、2回目でも相手がどんな存在かもわからないので突っ込まずに黙っていると、謎の人物が声をかけてきました。
『これ以上質問が無いようでしたら居住スペースへと移動してください。それでは私はこれにて失礼いたします。...ふぅ終わった~。それにしても、目的を聞いてこなかった子初めてだなぁ。...って、やば!スイッチ入ったままじゃん!___ブチッ』
「そこまで再現する必要あります?ていうか前回があるから初めてじゃないですよね?」
僕の呟きに反応はありません。
前回同様、扉まで行きます。
今回はブサイクハーレムではなく、美少女ハーレムということなので、あの3人には会えないのが少し残念です。
ブサイクだろうと、美少女だろうと僕が相手の中身を見て判断することには変わりありません。
扉の目の前まで着くと扉が勝手に開きました。
その先の光景は、前回同様まるで一軒家の玄関のようです。
しかし、前回とは少し違い玄関には3人の女の子がいました。
僕はその少女たちを見て目を見開きました。
その3人の少女の見た目は、7日目に一瞬だけ映った彼女たちと全く同じ見た目でした。
だから僕は3人にこう言います。
「おひさしぶりです」
ヒロインをブサイクのままにするのがいいのか、美少女にした方がいいのか悩みに悩みました。