表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/124

99.

「ちょっと待って!わ、私達…料理なんて作らない…」


拒否しようとするが、子供達から期待に満ちた瞳で見つめられて言葉が詰まる。


「ほらほら、お姉ちゃん達が困ってるわ」


シスターが助け舟を出す。


「まずは名前を教えてくれる?」


シスターから笑顔を向けられると子供達もワクワクと待っている…


「私は…ターニャ」


一番大きかった女の子が仕方なさそうに名前を言う。


「ターニャお姉ちゃん!」


「ターニャお姉ちゃんよろしく~」


院の子達はターニャの戸惑いも気にせずに抱きついた。


「ターニャお姉ちゃん!こっち来て!私の宝物見せてあげる!」


「お姉ちゃん達はなんて名前なの?」


「わ、私は…スジー」


「ルビーです」


「お姉ちゃん達も早く早く!シスター!部屋は私達と一緒でいい?」


「ずるい!お姉ちゃん達は私たちと寝るの!」


どの部屋で寝るか取り合いになって、ケンカになってしまった。


「ま、待って。わかった今日はあなた達と…明日はそっちでいいから…」


ターニャが仕方ないと提案する。


「「やった~!!」」


子供達は布団を用意すると張り切って部屋を飛び出して行った…


「なんなの…」


凄まじい勢いに圧倒されているところにリナは近づいた。


「みんないい子達でしょ」


「あの子達は…嫌な目に会ったことないから…」


「ここは修道院だよ、普通の子が来るとでも?さっきの子は親に捨てられてここに来たの。私も似たような感じよ。さっきケンカしてた子も親の暴力から逃げ出して来たのよ」


「えっ…」


「でもあんなに笑って元気に暮らしてるわ。あなた達も…ゆっくりとここで心を休めて笑えるようになるといいね」


リナの言葉に、ターニャ達は楽しそうに遊ぶ子供達を驚いた顔で見つめた。


「さっき…」


ターニャは聞きにくそうにリナをチラチラ見てくる。


「なあに?」


リナは笑って声をかけた。


「さっき…外に一緒にいた人って…」


「えっ!?まさかさっきの…見てた?」


こくり…


ターニャ達が頷いた。


「あの…あの人はあなたの傷の事…」


言いにくそうに背中を見つめる。


「ああ、ルーカスさんは傷の事知ってるよ…知ってて私を好きだって言ってくれた…大切な人なの」


「男は…みんな…叩くよ」


ターニャが悲しそうに呟いた。


「ターニャが会った男の人はそうなんだね…でもね、この世界には素敵な男の人も沢山いるの。その中にターニャ一人だけを愛してくれる人もきっといるよ」


「何もしない男なんて…」


ターニャは特に男の人が嫌いな様子だった。


「本当は騙してるから言いたくなかったんだけど…」


リナはコソッとターニャの耳元に近づいた。


「さっきあなた達を送ってくれた馬車の女の人いたでしょ?あれは騎士様達なんだよ」


「嘘…!?」


「本当に、あなた達を怯えさせないように女の人の格好をしてくれたの…決してしたくてしたんじゃないよ!みんなの為ならって…」


「全然気が付かなかった…」


「でも優しかったでしょ?」


二人が馬車に乗る時に手を貸してくれた事を思い出した…男なら絶対に手なんか取らないが女の人だと思い込んでいた。


「男の人だって信じられる人はいる。でもそれは少しずつ自分で見て、感じて信じていけばいいと思うよ」


「その…騎士ってなんて人?」


「綺麗な背の高い人がシモンさん、可愛い年下の人がラキさんていうの。これからたまにここにも来ると思うよ」


「シモンさんにラキさん…」


ターニャが二人の名前を聞いたことに、そんなに嫌な気持ちになっていないことを感じてリナは安堵した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 可愛い年下の人…(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ