98.離れ難い
ルーカスさんに馬で送ってもらい、修道院に着くと…
「リナ、気をつけて…」
ルーカスさんに手を差し出されて馬から下ろして貰う。
手を強く握り、地面に下りてほっと息をすると…
「やはり馬は苦手か?」
心配そうに、握ったままの手を離さずに聞いてくる。
「いえそういう訳では…」
思わずルーカスさんから目を逸らすと…
「なんだ?何かあるなら言ってくれ!」
「い、いえ、大した事ではないので気にしないで下さい」
笑って誤魔化す。
しかしルーカスさんは引いてくれそうになかった…
「リナの事で気にしないなんて無理だ、馬が嫌なら今度から抱き上げて運ぼうか?」
「えぇ!?」
驚いて思わずルーカスさんを見るが、その顔は真剣そのものだった…これは、理由を言わないと本当にやりかねない…
私は本当の訳を話す事にした…
「そ、その…馬だとルーカスさんが…近くて…なんだか意識してしまい…恥ずかしくて」
「え?なんか落ち着かない理由って…まさか俺なのか?」
うぅ…だから言いたく無かったのに…
リナは顔を真っ赤にして頷いた。
「そうか…なら慣れればいいだけだな。帰りも馬で迎えに来る」
ルーカスさんは嬉しそうにニコニコと笑いながら颯爽と帰って行った…
ルーカスさんが嬉しそうだから…いいか…
彼を見送り修道院に入ろうとすると…
「え!?」
修道院の窓からみんながニヤニヤと笑いながら覗いていた…
「み、皆さん…いつから…」
「そりゃルーカスさんがリナちゃんを嬉しそうに馬から下ろすところからよ」
「はぁ…あんなところを見せられたら婚約を長引かせるわけに行きませんね…」
フレア様がセーラちゃんの目を塞ぎなら笑うと、エーデル様はアリスちゃんの目を塞いでいた。
「でもアレをしなくて良かったわ、アリスちゃん達に見せるわけにいきませんからね」
「ええ、ルーカスさんもちゃんとわかってるみたいで良かったわ」
二人は安心してセーラちゃん達の瞳を解放する。
私はルーカスさんに禁止を作っておいて良かったと心から安堵した。
部屋に入ると、最初に着いた子供達は他の子達とたどたどしくはあったが遊んでいた。
元からいた院の子達がおもちゃなどの遊び方を教えてくれているようだった。
「あっ!リナ~!」
「リナ姉久しぶり~!」
院の子達は私に気がつくと駆け寄ってくる!
「みんな元気だった?」
「元気だけどリナが出てったから料理とか大変だよー!」
「それはみんなで当番しようって約束でしょ!」
子供達の軽い言い合いが始まってしまった。
「みんなありがとうね、新しい子達の事も…これから少し賑やかになるから私もたまに手伝いに来るよ」
「本当に!?」
院の子達が顔を輝かせた。
そんなに喜んでくれるとは…なんだか嬉しくなる。
「でもね、今度くるお姉ちゃん達も料理できると思うよ~」
「それって…シスターとあとから来た人?」
「そうそう」
私が頷くと、子供達は驚いてシスターの部屋に駆け込んだ!
「シスター!!新しいお姉ちゃんが料理作れるって本当!?」
「きゃあ!」
「な、なに!?」
シスターと話をしていた女の子達が子供達に囲まれて戸惑っている…しかし興奮した子供達は構わずに女の子の手を掴んだり服を引っ張ったりしていた。
「ねえ!得意な料理はなに!?僕トマトは苦手なの」
「私は甘いパンが好き!お姉ちゃん作れる?」
「パンは難しいよ~あれは大人になってからだよ」
子供達は次々に話しだして女の子達に話す暇を与えなかった。
「ちょ…まっ…ど、どうしよう…」
オロオロとしだす女の子達が可愛くて、リナ達はその光景を笑ってみていた。